「存在論的ひきこもり」論: わたしは「私」のために引きこもる

著者 :
  • 雲母書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784876722938

作品紹介・あらすじ

引きこもる人間に対する否定の重包囲網を、たった一冊の本が壊滅させた。今後、本書を読まずして「ひきこもり」は語れない。

感想・レビュー・書評

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  • 「ひきこもり」を病であるとか、マイナスのものとして捉えない反対の見方を提示している。何事も詳細な裏付けがあって始めて語れる・・という気がした1冊。

  • ひきこもり状態という言葉はあっても、ひきこもりという言葉は無い。

  • ひきこもりを外部からの評価でなく、その人が「ある」ための必然的プロセスとした、哲学的ひきこもり論。行政、医療にはおそらくなじまないでしょうね。当事者としては、こう考えてくれる人がいることは救いですが、自分がその域まで達するには、まだまだ時間がかかりそうです。支援の極みは「 ただ、そこにいること」。1万歩くらい、先を歩いている人の言葉を聞いたような印象です。フォトリ41

  • 「存在論的ひきこもり」が本質であり、「社会的ひきこもり」は現象でしかない。というのは説明としてはわかるんだが、あんまりこの点にこだわって斎藤環を叩くのもどうかな?って気はする。ひいきこもりは政治・経済的には解決すべき課題ではあるんだろうが、医療的には本人が苦しんでいるか否かによって治療対象か否かが決まるのではないだろうか。その苦しみというのが、本人ではなく社会(的圧力)に原因があるというのもわかるし、本当は社会を変えていかなければならないのだろうけど、まずは本人の精神的変化により苦痛を取り除けるのであれば、それはそれでよいのではないかと思う。
    存在論的アプローチのプロセス視点と、「ある自己(存在論的)」「する自己(社会的)」の二重性および自己間関係の調整いうのは大変興味深く、面白い考え。要するに「僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない」ではなく、「僕が僕であるために引きこもらなければならない」という事なのかと。
    「する自己」から解放されている、赤ん坊と老人。両者とひきこもりは「ある自己」だけで存在論的価値があるという点において同一であるという説明は明解であり、「する自己」本位に人間の意味と価値を見出そうとするのを否定している点もよくわかる。が、問題は(赤ん坊の)未来と(老人の)結果という時間軸をどう考えるかだろう。逆にひきこもりを病気にしてしまった方が「する自己」の解放になってしまうという変な話になってしまうが。また損傷した「ある自己」の再生に「環境と他者」が必要という事になると、「人はひとりではいきられない」って事にもなってしまうような。この辺の論理的ツメは甘いような気はする。
    本の構成として、書き下ろし部分と、新聞・雑誌記事の寄せ集め部分とにわかわれており、全体としてのまとまりがなく、ちょっとやっつけ仕事的な感じがしないでもない。

  • ひきこもりを否定性の連続としてみるのではなく、自己の二重性としてみるという新たな視点が刺激的でした。

  • この本で面白いなと感じたところは、
    引きこもるという行為を「存在論的ひきこもり」という言葉をつかって肯定的に捉えていること。
    自己の危機を乗り越えるために、必然的な状態であることを述べています。

    また、引きこもりを治療や支援の対象にすることに不信を感じていること。
    市場や産業が生まれ、当事者の視点を喪失してるという意見にも共感を覚えました。

    この本で私が知りたかったことは、引きこもりの実情ではなく、「ひとり」とは何かということです。
    最終章で引用されている「子どもはだれかと一緒のとき、一人になれる」
    この感覚は誰にでも思い当たる節があるのではないでしょうか。
    自分の中に、揺るがない他者が内在すること。それは子どもだけでなく大人にも必要不可欠な状態であるように思います。

    卒論に使える箇所があるので手に取りましたが分かりやすいし、引きこもりや子育てに関する知識も得ることができて読んで良かった。

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著者プロフィール

評論家。1942年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。著書に『家族という意志』(岩波書店)、『家族という絆が断たれるとき』『宿業の理想を超えて』『「孤独」から考える秋葉原無差別殺傷事件(共著)』(以上、批評社)、『ひきこもるという情熱』『〈宮崎勤〉を探して』『「存在論的ひきこもり」論』(以上、雲母書房)などがある。

「2013年 『子どものための親子論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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