永遠の仔 下

著者 :
  • 幻冬舎
4.02
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本棚登録 : 2192
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  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877282868

感想・レビュー・書評

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  • この手のテーマは話が暗くて苦手です。しかし面白い!

  • 再読。ちと暗いけれど、いい。

  • いやーおもしろかったよ

  • 上巻にて。

  • 人は救いを求めて罪を重ねる。連続殺人、放火、母の死…。無垢なる三つの魂に下された恐るべき審判は―。

    上下巻合わせてかなりの量ですが集中して読めました。
    自己を受け入れられないまま生きていく主人公たちの決して癒える事のない
    傷跡。大人になった彼らの生き方は辛過ぎすぎる

    嘘と真実が複雑に重なり合うように彼らの想いも複雑に重なり
    物語の奥へ奥へと引き込まれてしまった。
    自分の生き方を少し振り返ってみたくなった。

  • 大作。

    上巻を読んでいるあたりでは、これでは動機があまりにも抽象的で弱いのではないか、精神世界の問題に逃げ込むことなくどう全体として整合性を保つんだろうか…、と訝しんでいたのだが、まったくの杞憂に終わった。
    至極真っ当な剛力でもって、物語は見事に纏め上げられている。

    様々な登場人物たちの身を借り、異口同音に語られる著者の人生観。
    小説という形をとってはいるが、換言すれば、分かりやすい言葉に翻訳された哲学書、という一面もあるのかもしれない。

    病因を自己の外、社会や家族などに求めることはあまりに安易だが、その段階で留まってしまうことは絶対にありうべきことである、と私は読み取った。

  • <途方にくれて>
    レインという学者の、「狂気と家族」という本を読んだ時に、円朝の怪談話が頭の中に浮かんだ。何代か前の罪によって、罪のない子孫が代々にわたって祟られていく。読んだ当時は、結局、怪談というのは、解消されない無意識のトラウマという因果が何代にもわたって、無意識を経由して、祟るプロセスを記述したものなのだと、分析できたことを無邪気に喜んでいた。しかし無意識の遺伝ということの怖さをはじめて認識したのも事実だ。

    親になりきれない親に傷つけられた3人の子供の話だ。精神に傷を負った3人が出会う病院での子供時代と、それぞれに成長した3人が再び出会う2つの時代が交互に語られていく。そして、それぞれの精神の傷の謎と、おかした罪と罰が描かれていく。実の父親がトラウマの源であるヒロインは大人になって献身的な看護婦になっている。2人の男の子はそれぞれ母親を原因とした傷を負い、それぞれ孤独な弁護士、刑事に成長している。それぞれの人生は、重苦しく、出口がない。

    普通の親に普通の愛情を注がれるということが、いかに幸福なことなのか。作者が、綿密に描き出す闇は、圧倒的な力を持っており、自分をその場に置き換えたなら、まさにそこに展開すると同様な人生が反復されるに違いないと思わせるほどだ。

    家族というものをめぐる大きな物語が崩壊したあと、偶然にこういった物語を共有する人々だけが、確率的に普通の家族を享受できているのかもしれない。過去の経緯から親になりきれていない親によって育てられていくということの絶対的な恐怖。社会学者は家族というものについてこう語る。

    「たしかに母親は、多くの場合現実に子供を産んでいるわけだが、その事実によって母親であるのではない。人間は、ただ生まれただけでは、社会のメンバーになることができない。そのあと長い養育の期間を経て、ようやく一人前の人間となる。親であるとは、この養育の責任を引受けるという、社会的役割のことである。」(橋爪大三郎 言語派社会学の原理 洋泉社)

    子供を育てるという義務には世代的なねじれがある。自分を育てくれた親の愛というものには狭い意味での経済合理性はない。それは愛という形で語られる、類としての人間への個人の負債である。だからその義務をきっちり果たさない親に育てられた子供が親になった時、彼らには自分の負債を返済するための心理的なもとでがない。まわりは親としての義務を押し付けてくるが、自分の心理の中では、幼児期の親からの愛をもらい忘れたという想いによって、自分が親になることを拒絶するようになるのだろう。ある世代で、置き去りにされた負債は、こうやって何代にもわたって返済の失敗をまねくのだ。

    「ときどきこの世界って、親が大人とはかぎらないってことを、忘れるみたいね。子どものままでも、親になれるんだから。親ってだけで、子どものすべてをまかせるのは、子どもに子どもを押しつけている場合もあるのよ。子育ては競争じゃないって伝えるところが、どうしてないの。支える道も作らずに、未熟な親を責めるのは、間接的に子どもを叩いているのと同じかもしれないのに。」

    未熟な親を、以前はおせっかいな共同体が見張っていた。未熟な親が類に対する責任を果たすことができるようなシステムがそこにはあった。核家族の中で、未熟な親たちは途方にくれているのだ。子どもたちが、肩を寄せ合い、そこで癒される場であるクスの大木がある森の描写はとても美しい。森は、そういった親という暴力から逃れる唯一の場所なのだ。核家族の時代の、野生の場はどこなのだろうかと、少々絶望的な気分になった。

  • ≪内容覚書≫
    過去に起きた事件と、
    現在起きている事件の真相が、
    ついに明かされる。

    3人が本当に癒される日は来るのか。

    ≪感想≫
    父を押した手の正体には、
    ああ、あなただったのか、と、救われたような、
    さらに絶望を感じたような複雑な気持ちにさせられた。

    誰かが、どこかで、勇気を出して、
    真実を確かめていれば、向き合えていれば、
    もっと違う道があったはず。
    言いたいことを言って、分かりあえる関係は、
    しょせん理想でしかないのか。
    家族ってなんなのか。
    人間のことばはなんのためにあるんだろうか。
    そんなことを考えた。

    虐待の現実を知らないので、実際がどうなのかはしらない。
    が、そういう現実がどこかにあるかもしれない、と、いうことは、
    心に留めておくべきなんだろうと思う。

    とりあえず、ミステリに分類される作品ではない。

  • 大人の・親の虐待を受け育った子供たち。
    大人になってもその傷が完全に癒えることはない。
    傷を抱えたままそれでも人生を進めていっていた。
    子供のころの3人での秘密の時間から。その思い出を胸に秘めて。
    でも一旦壊れたものは元には戻らないのだと思った。
    完全に救われることはないのだと。
    だれもかれもが秘密を抱えていた。そして秘密を持つことで最悪の結果になった。
    本当の大人になれるのはどうしたらいいんだろう。

  • トラウマに葛藤、心理描写がすごく伝わります。感情移入し過ぎると、とてもつらくなりますが、心が鍛えられる感じがします。ストーリーも入り込ませる力を持っていて、オススメの物語

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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