郵便配達夫シュヴァルの理想宮

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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878931734

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  • 映画「シュヴァルの理想宮」を観たのを機に、十年以上ぶりの再読。/映画との比較でいえば、前半生はわかってないことが多く、再婚した妻とのなれそめややりとりはおそらく想像、娘アリスのために理想宮をつくったというのは仮説のひとつ、と。建設の資金源については、妻の持参金や土地を充てたようだが、シュヴァル本人の弁によれば、そのことで責められたことはなく、建設にかまけて服に石をいれすぎてほつれることに大不満だった、とのこと。妻は、総じて、おおらかで細かいことを気にせず、保護者のように見守ってくれていたのでは、と。/また、図版は豊富だが欲をいえば、カラーだともっとうれしかった。

  • 自分の中のイメージに従って石を積み上げ、33年かけて宮殿をつくりあげた郵便配達のこと。
    「シュヴァルの理想宮」というとアウトサイダーアートの文脈で語られるけど、残された言葉から見ると普通の人だな。
    普通と言うと語弊があるけれど、大幅にズレてるだけで思考が理解できない感じじゃない。
    「お前から○○を取ったら何が残るんだ」を地で行くような人ではある。
    でもこれはシュヴァルについてじゃなくて、シュヴァルの理想宮についての本。
    わかる範囲に限定して書いているのは好ましい。

    風景を言葉で説明するのは難しい。どこに注目するかは人によって違うし、ましてそこから何を感じるかなんて千差万別だから。
    建築や絵画についても同じことが言える。
    この本の中にある説明はあくまで著者自身が感じた印象や著者の読み方。
    自分が実物をみてもこのようには読めないはずだから、他者の読み方を聞くのは楽しい。
    反面、本物を見たいとも思う。
    ただでさえゴチャゴチャしたものだから、白黒写真やデッサンではとても把握できない。


    装丁が醜くてダメかなと思った。(読み始めたら面白かった)
    表紙の写真も見返しの言葉のコラージュも、「ぼくがおもうサイコさん」に押し込めようとする安易さが嫌だ。
    パラパラ漫画は楽しい遊びだけど途中で途切れさせちゃ台無しだ。

    石に導かれて家を建てるということで「クレイジー・ジャック」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/490258414Xを連想した。
    あれはシュヴァルを意識していたのかも。

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著者プロフィール

岡谷公二(おかや・こうじ) 1929年生。東京大学文学部美学美術史学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授。著書に『ピエル・ロティの館』(作品社)、『貴族院書記官長柳田国男』、『柳田国男の青春』(筑摩書房)、『島の精神誌』(思索社)、『神の森 森の神』(東京書籍)、『島』(白水社)、『南海漂泊』(河出書房新社)、『殺された詩人』、『南の精神誌』(新潮社)、『絵画のなかの熱帯』『柳田国男の恋』(平凡社)、『南海漂蕩』(冨山房インターナショナル、和辻哲郎文化賞)、『原始の神社を求めて』『神社の起源と古代朝鮮』(平凡社新書)訳書に、レリス、ドランジュ『黒人アフリカの美術』(新潮社)、レリス『幻のアフリカ』(平凡社ライブラリー)、ルーセル『アフリカの印象』、同『ロクス・ソルス』(平凡社ライブラリー)など多数。

「2016年 『島/南の精神誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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