令嬢クリスティナ

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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878932182

感想・レビュー・書評

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  • 作品自体は過去、二度ほど読んだが、
    また読みたくなったので、こちらの古書を購入。
    ルーマニア出身で、
    母国語で小説を書いた宗教学者エリアーデの長編で、初出は1936年。
    ドラキュラやカーミラのような
    あからさまな吸血鬼は登場しないが、
    処女のまま命を落とし、現世の生身の恋愛に激しく心残りがして
    死に切れない令嬢の亡霊と、
    それを恐れつつ崇拝する身内の女性たち、
    そして、その没落貴族の館に滞在する男が誘惑される姿が描かれる、
    血の匂いが漂うエロティックな恐怖小説。

    1907年のルーマニア大農民一揆の折に射殺されたはずの
    令嬢クリスティナだったが、正式に埋葬されておらず、
    遺体の行方も知れないため、幽霊になったのではと囁かれる、
    そんな愛欲に飢えた不死者(アンデッド)が
    夜な夜な男を求めてさまよい、
    主人公の画家に目をつけた――という物語。
    亡き伯母の霊に支配されているかのような
    美少女シミナ(館の未亡人の次女)の、
    男たちを翻弄する大人びた言動がインモラルで蠱惑的で魅力たっぷり。

  • 貴族の令嬢と恋仲になった青年画家が城館に招かれ滞在するが、その家には若くして亡くなった美女の恐ろしい言い伝えがあった。彼は夜な夜な不気味な夢を見るようになり…と、絵に描いたようなゴシックロマン。
    作家の長篇としてはごく初期にあたり、表現や文体の洗練度の面では食い足りなさもある。とはいえ、殊に後半の牽引力はさすが。スミレの香りとともに亡霊が主人公に迫ってくる場面のむせ返るような官能美と薄気味悪さには圧倒される。亡霊に魅入られその手先となる少女シミナは9歳にしてぞっとするような艶めかしさで主人公を惑わすが、ありがちな役柄でありながらその描写にはやはり引き込まれる。
    幻想怪奇譚としてひときわ異彩を放つとも言い難く、エリアーデ独特の世界観はここではまだ花開いていない。それでもなお美しく妖しい魅力をもつ作品である。

  • 千葉のルーマニア語の小説家さんのおすすめ。とても読みやすくて、面白かった!

  • ルーマニアの怪奇小説。
    吸血鬼とかフランケンシュタインとか、それ系の悲しいホラー。

    一気に読んだから面白かったんだと思う。
    細かいところは不満いっぱいなんだけど。
    お母さんの食欲はなんなの?とかあの野郎クズすぎだろとか。
    あとがきではあの子が一番怖かったと書いてあったけれど、あれはわりと王道パターンじゃないか?とか。
    主人公?の迷惑な自負と情けなさのバランスが絶妙。
    どこまで人のせいにすれば気がすむんだ。
    でも面白かった。

    文章は誰視点だかよくわからない。
    そのわりには読みやすい。これはそういう文体なのかな?

    私はやっぱりおしまいの狂気が一番怖かった。
    個々の狂気はホラーとして読めるけれど、集団の狂気は現実を思い出させる。

  • 女というものは男にものにされるためにあるのだとか思っている若い男が貴族階級の彼女の家に滞在していると、彼の認識を補強するかのように都合よくも若い男に餓えた美女の幽霊が出現し、幽霊に魅入られた男が錯乱したり恐怖にかられたりするうち、ジャンルのお約束どおり破局が訪れる、といった内容。

  • 幻想小説でありホラー小説。農民一揆で殺された貴族の娘・クリスティナの幽霊にまつわる怪奇譚。
    クリスティナの存在をにおわせるモスク一家の奇妙な行動に始まり、徐々におどろおどろしい雰囲気が盛り上がっていく。特に姪のシミナは、9歳とは思えないほど恐ろしさを感じさせるキャラクターだ。段々おかしくなっていく客人二人の描写も上手く、非常に完成度の高い、怖い話になっていると思う。

  • 宗教学者の吸血鬼小説。

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著者プロフィール

1907年、ルーマニア、ブカレストに生まれる。1928年より3年間、インドに滞在し、ヨーガやタントラを学ぶ。帰国後は、ブカレスト大学で形而上学史などを教える一方で、小説『マイトレイ』を発表し、小説家としても高い評価を得る。第二次世界大戦中は、ロンドン、次いでリスボンでルーマニア公使館の文化担当官として勤務した。第二次世界大戦終結後はフランスに亡命。『宗教学概論』や『永遠回帰の神話』を発表することで、宗教学者として活躍した。1957年よりシカゴ大学に招聘され、翌年、宗教学教授に就任。1986年にシカゴで没。

「2015年 『エリアーデ=クリアーヌ往復書簡 1972-1986』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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