- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784880083988
作品紹介・あらすじ
1945年5月、ベルリンが陥落。ついにヨーロッパの戦争は終わり、スウェーデンの港町、イェーテボリでも平和の訪れを人々は心から喜んでいた。だがウィーンへやってきたユダヤ人姉妹ステフィとネッリには、もはや帰る家はなく、父親の安否も知れない。異国の地で、養親や友人たちに支えられ、逆境を乗り越えて、大きく成長した二人。ステフィは町の高校を、ネッリは島の小学校を卒業。不安な思いを抱きつつ、新しい一歩を踏みだそうとする二人の本当の居場所は、どこにあるのだろうか?コルチャック賞受賞、「ステフィとネッリの物語」最終巻。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ウイーンで裕福な家に生まれ育った姉妹ステフィとネッリは、ナチスの迫害を逃れるためにスウェーデンの島の家に里子として引き取られていた。高校3年生になったステフィが卒業試験を控えていた春、ドイツが降伏し戦争が終わった。平和の訪れに沸き立つ街中で、彼女は初恋の人スヴェンと再会し、彼女の恋は再燃する。一方ネッリは、父が生きていた場合は養親との島での生活を失うかも知れないと恐れていたところ、養父母の会話から自分が小学校卒業後は孤児院へ預けられることを知る。そんな中、アメリカに亡命している叔母からステフィに、彼女たち姉妹をアメリカで引き取りたいという手紙が届き、スヴェンや養父母、友人たちと別れがたい彼女の心は揺れる。
父の安否、終戦に伴う自分たちの生活の変化、恋の行方……不確定なものに振り回されながら懸命に自己を保ち、前進する少女の姿を描く。
「ステフィとネッリの物語」4作目、最終巻。
*******ここからはネタバレ*******
前回作に比べて、物語の深みに欠ける気がする。
前作でかなり大人な対応をしていたステフィが、簡単にスヴェンとの恋に溺れてしまったところには、(特に女の子の母として)がっかり。ヴェーラの失敗(?)も間近に見ていたのに。
ネッリの絵を描いたカリータもあまりに残酷。ユダヤ人少女の幸福な姿とその正反対の姿とを描くことによって表現したいものがあったのだろうが、それをネッリ自身に見せる必要はなかっただろうに。子どもが、自分自身をみじめに描いた絵を見てどう思うか想像できなかったのだろうか。
作者はカリータを、ユダヤ人問題に鈍感な人々の代表として登場させたのだろうか?
内容自体は平易だが、恋愛描写があるため小学生には薦めない。 -
きのう読み始めて、先ほど読了。「ステフィとネッリの物語」最終巻。
ようやくネッリサイドが登場。でもやはり、これは「ステフィとネッリ」ではなく「ステフィの物語」だったな、という印象。都合の良い時期を見計らって挿入されるだけなのだったら、作品のネッリへの横暴さは、作中で批判されるカリータとさほど変わらないのじゃないかと思う。語る位置につかせるため、ステフィは苦悩を抱えながらも、最終的には突破口をつかまされる。その位置取りを作者が当然と思っているのが、最後まで好きになれなかった。
気になったのは、ドイツ語の単語のカタカナ表記。前巻もそうだったけれど、「アブゲライスト」は「アプゲライストabgereist」なのじゃないかしら。ウィーンなまりだとそうなる、のかな。 -
シリーズ最終作。
『睡蓮の池』とは違い、ステフィの恋は真剣なものになる。
シーギュルドが急に冷たくなってしまうのが腑に落ちないし、あれだけしっかりしていたユディスが狂気に陥ってしまうのもなんだか納得できない気もするが、4冊二日で読んじゃったってことは、面白かったわけだし、十分満足。
自分が年取ってきたせいか、アメリカで新しい人生に踏み出す姉妹より、自然の厳しい、さびしい島に残されたメルタ夫婦のことを思い、胸が痛む。いつも残された年寄りは悲しい。それを決して口にはしないけど。
アニカ・トールの翻訳された作品は全て読んだことになる。
とにかく、この人は、すべて映像が目に浮かぶ、飽きさせない、生々しいシーンも描くがえげつないことにはならないのが特徴。
本当に価値ある文学は映像化不可能の部分がかならずあるが、この人の作品は全て映像化可能。そういう意味では一流の文学者ではないと思う。
女の心理を描くのが非常に上手いが、男性はそうでもない。
そこらへんが変わってくれば、さらにいい作家になると思う。 -
4部作の最後にふさわしいラスト。
成長したステフィの、苦悩や喜び、わたしは主人公ステフィの親友になった気がしました。
それだけ心情がリアルに描かれています。
戦争が終わっても行方不明の父。
母の死。
友情や恋愛、里親との絆。
間違ったことをしてしまう友人や妹のネッリ。また恋人も。
一緒に喜び、苦しんで読みました。
4部作、とても読みがいがありました。 -
3巻までは、あまり触れられなかった、妹、ネッリの内面が描かれていました。アイデンティティをいかに作り上げていくかの問題なのですね。
-
ステフィとネッリの物語第四部、最終巻
高校卒業を迎えたステフィと小学校卒業を迎えたネッリ。
姉妹はそれぞれの暮らしをしながらこれからの自分がどうしたいか、どうなるかの局面を迎えている。
そんな中待ち望んだ終戦。
ステフィは初恋のスヴェンと再会し恋に落ちる。就職先も決まり、ユダヤ人の友人ユディスと家族の消息を辿る。
ネッリは、養親が養えないと話し合っているのを聞き大変な不安に襲われている。
アメリカにいる父の妹伯母より手紙が届き、二人を引き取りたいとの申し出がある。
悩む二人だったが、ネッリの養親が、父が見つからなければ養女として迎えたいと考えていると知り、スウェーデンに留まることに決める。
改めて生活を送り始めた二人に
父が生存している知らせが届く!
今、姉妹は船に乗り父がまつイギリスへ向かい、アメリカでの新しい生活へ旅立つ!
姉妹を翻弄してきた戦争は終わり、彼女たちにまた変化をもたらす。
祖国を離れ、温かな家族を離れていかねばならなかった小さな姉妹は、辛く酷い経験を経てやっと光の元へ送り出された。
何度旅行カバンを詰 めて移動してきたのか、とステフィが思い返す場面が印象的だった。
この姉妹の成長を見守る気持ちで読んできた物語もこれでおしまいかあ、と残念に思う気持ちが正直あるけれど、
父親が生きていたとわかった時はほんとうに嬉しく思ったし、なにより物語がハッピーエンドでよかった!!
素晴らしい物語でした。 -
前作「海の深み」から2年後、シリーズ最終作。ステフィは高校を卒業。医者の夢に向け、一人立ちし、スヴェンとも再会する。ネッリは小学校を卒業。島の暮らしにすっかり馴染んでいる。そんな二人のもとにアメリカの親戚から一緒に暮らさないかという手紙が届く。自分たちの生き場所、未来に悩む姉妹。戦争は終わったけれど、お父さんの行方もわからぬまま。二人の生き場所は一体どこに…。毎作扉に書かれた作者の言葉(戦争と人種差別は人間を、とりわけ幼い子どもたちを襲い、傷つける、邪悪でおそろしいものです)が深く心に残ります。自分だけが「逃れた」と思い悩むユダヤ人のユディス…戦争は目に見えない苦しみを残しているということが様々な人を通して描かれています。最終巻では初めて妹ネッリの心情が丁寧に描かれています。今まで姉の気持ちにそって読んでいたので、どうしてこうも言うことを聞いてくれないのとステフィと一緒に悩んでいましたが、ネッリのどうしたらよいかわからない心の動きがよくわかりました。二人が本当の意味で分かりあえてよかった。史実、実話をもとに描かれているのでただのハッピーエンドではなく、厳しい部分も描かれています。子どもたちには厳しい現実かもしれませんが、高校生や大学生、大人でも読み応えのある物語だと思います。出会えてよかった物語です。
-
四部作の完結編。
ついに戦争はおわり、ステフィたちは新たに、今後の生活について考える局面にきた。
姉妹の成長、周囲とのきずな、
素晴らしい作品。もっと読まれるべき。
マイが太ったという描写があり、彼女の恋なども読みたかった。
マイや、ユディスやヴェーラ、タイプのちがう友人たちとの関係はとてもリアルだ。
四部作中、メルタやエヴェルトがよくでたのは一巻だけだったのに、かなりインパクトがあった。
二人とステフィの関係がとてもよいとおもった。
全体に、訳がとてもよくて読みやすかった!
映画化、希望。 -
読んで良かった。けど、フラストレーションがつのる展開で、少し疲れた。
-
世界の子どもたちに
発した「文学」として
どんなふうに
この魅力的な二人の姉妹を
引っ張っていくのだろう
と 思いながら
最終巻をひもといていった
あぁ こういう「希望」の置き方も
あるんだなぁ
最後まで
読者をいざなってくれた
その「力業」に感謝 -
ついに最終巻。この世界に浸りきりました。名残惜しい。少しあっさりしていましたが、納得できるラストでした。
みんないい人過ぎないところがいいです。アルマおばさんなんて人間らしい。ネッリのわがままさも分かります。
よいYAだと思うのですが、実際中高生の頃に読むのはつらい気がします。いろんな失敗が身につまされるというか。 -
手紙で知らされた母の死。父の行方は分からないまま、終戦を迎えお祝いムードの中、無事に飛び級して進学したステフィは高校を卒業し、働きながら大学進学の費用をためることにします。一方島の小学校の卒業を控えたネッリは、自分が孤児院へやられるらしいことを知りショックを受けます。そんな時アメリカへ渡った叔母からアメリカに来ないかとの手紙が届き姉妹は再び決断を迫られますが…。
前三作がステフィの視点で描かれていたのに対し、本作はネッリの視点からも描かれています。戦争が終わっても元の生活には決して戻れない二人は再び築き上げてきたものを残していかなくてはなりません。本当に酷いことだと思います。
当時中立国だったスウェーデンが戦前から戦後にかけてヨーロッパからの難民やユダヤ人を受け入れてきたことは賞賛に値するのではと思います。これが日本だったら?現在の日本における難民の受入状況をみれば想像がつきますが。 -
4冊とも、本当に読み応えがあって、久しぶりに充実したシリーズを読んだなぁという気持ち。 どんどん成長して大人になっていくステフィなのに、恋に関してはおバカさんなのが何とも甘酸っぱい。スヴェンの臆病者!と日記には書いておく。
-
訳者あとがきに、ステフィの養父母のことを「真の人格者」と書かれてあった。ストンと深く納得できた。終戦は決して彼らの「平和」にイコールではないということを、切なく思う。
-
結局、3日間で全4巻読み終わる。豊かな体験をさせてもらった。第4巻では、戦争が終わりユダヤ人の解放がはじまる。行方不明になった家族を捜す人びとに、当然ステフィと友人たちも含まれる。そこでわかってきたこととは…。最終巻は成長したネッリの心情にも触れられる。この全巻に対し、コルチャック賞授与とのこと。日本でももっと話題にのぼってしかるべき作品だと思うが、おそらく長く読み継がれ古典となっていくのであろう。
-
ただただ 読んでみてとしか言えないなぁ