大人のための「性教育」 (おそい・はやい・ひくい・たかい No.112)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880496627

作品紹介・あらすじ

子どもに語る前に大人のための「性教育」
岡崎 勝(小学校教員)/宮台真司(社会学者)

■■1時間目 そもそも「性教育」って、なんですか?
●学校の「性教育」に期待できるか?
三つの柱は「身体の仕組み」「人権教育」「性愛」/親の関心が高いのは「性犯罪・性暴力」/「性愛」の経験値が低い、教員や親たち
●教員にも親にも「性教育」の資格はない。その理由は……?
一九八〇年代、「新住民化」で変わった生活環境/公園で焚き火ができた時代/昔の子どもたちが外遊びで学んだこと/「身体でつながる感覚」が生まれるとき/「性交」にも必要な「コール&レスポンス」の態勢/「セックスは作業」となった現在
●性的退却が進んだいま、失われているのは?
「性の過剰」さがあったころ/先輩や同級生、変なおじさんとの関係のなかで/親や教員は絶対に教えられないこと

「性教育」では得られないものは?
学校で「性」を学ぶことが退却につながる?/大切なのは「知識」よりも「動機づけ」/ポジティブな「動機づけ」が得られるかどうか

■■2時間目 「性」とは、なんだろう? 「愛」とは、なんだろう?
●「性愛」の劣化を防ぐことはできるのか?
親が「性」を教えようとすることの悪循環/親は「愛」を子どもに学ばせる存在/「社会」に適応すると「性愛」は劣化する/「性愛」「友愛」に必要な「贈与」の構え
●親もダメ、教員もダメ。子どもたちを導くことができるのは?
トラブルやリスクを避けたい大人たち/日本の親はもともと子育てのノウハウを知らない/「言葉・法・損得の外への開かれ」を促すには/「同じ世界を生きている」と思える条件/「コンテンツ教育」と「パントマイム教育」/体験を伝える「旅芸人方式」で/「性」と「愛」を伝えるときには/ワークショップの入口が「性」であるべき理由
●「性」に関して、法や条例は有効?
「性」問題に対する厳罰主義/援交ブームから起こった条例制定/かつて当たり前だった教員と生徒の交際/いまの民主制で解決できないのは/新住民が民主主義で地域を壊す/「友愛」と「性愛」を欠いた尊厳はない/五〇年間の長い「空っぽ」/「社会」の代わりをする「世間」が消えた/法律や条例を変えても日本はダメ/「友愛」と「性愛」の劣化を「性愛」から切り開く/「性愛」の能力と関係する「友愛」と「公共的関心」
●「危険」を子どもに、どう知らせる?
子どもに疑うことを教えるのが「性教育」?/「性愛」の経験は知識では補えない
●「性愛ワークショップ」本当に学ぶべき、その中身は?
セックスを通じて「絆をつくる」/「アメーバになる」ことで「愛」を育む/性交の「アフォーダンス」と日常の「ミメーシス」/「愛の意味論」を理解する/「損得を超える構え」の入口は損得/〈前半プロセス〉での勘違い/「社交術」の本質とはなにか/一喜一憂からの解放としての「社交術」/「歩留まり的な構え」との違い/〈前半プロセス〉を支えるオーネスティ/〈前半プロセス〉と〈後半プロセス〉のつながり/「性交」の中身に踏み込まずに語れること/相手の目を見る、相手の手を握る/田中泯の「場踊り」を導きの糸にする/「雰囲気」にのまれることとの区別/「育ちの悪い大学生」にどう働きかけるか/決まりを破るだけで入れる「同じ世界」
●「性の多様性」を、どう捉える?
学校では「認めよう」という流れはあるものの/性的な対象が絞り込まれていない思春期のころ/三人に一人がゲイ、背景を理解する/自分のなかにいろいろな人がいるという感覚

■■3時間目 「幸せ」な大人になるには、どうしたらいいですか?
●「リスク管理」は大事ではない?
枠の外に出てしまう怖さ/学校の外で得られるドキドキする体験/共犯関係から始まること/不幸や悲しみなしに「愛」は得られない
●「愛」を、どう伝えるか?
予定調和の「性愛」はありえない/体験教育に使える韓国ドラマ/「愛」は社会のカテゴリーを超える
●「責任」を、どう考えるか?
道徳教育に用いるべき一九六〇年代作品/「自己決定」できず、「自己責任」が推奨される日本/八〇年代以降当たり前になった「安心・安全」への要求
●大人が「覚悟」すべきことは?
失敗を恐れる子どもたち/教員・親に必要なのは罰せられてもいいという構え/子どもにとって有効なことをやりつづけるには/学校に期待しない、そこから始める

■■課外授業 親の私たちに、教えて宮台さん!
●授業のあとで
「性愛」の「魅力・誘惑」を大切にすることで、人は一人前になる/岡崎 勝 小学校教員
「性教育」ならぬ「性愛教育」が不可欠な理由/宮台真司 社会学者

Oha通信
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感想・レビュー・書評

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  • フェミニズムを研究対象する際の必読書であると思った。
    性愛は言外・法外・損得外において体験されること、非選択の自動性、同じ世界で一つになる体験をすることだと述べられており、性愛への漠然としたイメージがはっきりとした。
    フェミニズムは社会における男女の立場に焦点を当てているため、性愛を社会における暴力・被暴力の関係で語られがちになる。本書で指摘されていたように不安教育を煽る可能性がある。
    性愛の性質を知ることでどれが贈与なのか、対価を求める行動なのか(例えば「待つわ」とストーカーの違い)が分かる。
    そういう性質を理解することが「本当の多様性」に繋がると思った。

  • 宮台真司氏の本は、何冊も読んでいると大枠としてはどの本も同じことを言ってるなぁと感じるようになる。
    さらにどの本も理屈はわかっても感覚的な部分が理解できないことが多かった。


    一方で本書はおそらく過去にワークで実践してきた内容や、具体的なパートナーとの関係の深め方が書かれている。
    そのためより感覚に近い部分で、宮台真司氏の普段言っていることが噛み砕いて説明されていた。
    自分自身宮台真司氏がいう「性的退却」が起こっている世代であり、正直わからない側の人間だ。
    どうしても現代の日常を生きていると損得勘定側に思考が寄って行きがちなので、自分をより戻す意味でも定期的に読み返したいと思える本だった。

  • 性愛とは何か、性教育とは何か…知識だけでは伝わらない『気持ち』があって良かった。
    現代社会の若者のデータから読み取った『セックス』への劣化も面白い。読んだ方がいい。

  • 同じ世界を生きる、同じゾーンに入る、同じフローに乗る営み(外遊びや決まりを破るなど)を体験することで、身体で繋がる感覚を獲得できる。これは性交でも同じ。しかし、新住民化(郊外化)によって、共同身体性の感覚が失われた。その結果、性交が主体によって判断されるものになり、加害と被害の関係で捉えられるようになった。

  • 本文の前に、、、、
    最後の数ページにあるOha通信という読み物がめっちゃ良かった。
    フリーライターの野田彩花さんの文は本当に好きで、電車で読んでいたのだけれど、鳥肌が立ったり、本当に心がじんわりと暖かくなったり、言葉に力があって心が突き動かされた。本当にいい
    本文もいいぞ
    日本での性愛がなぜ劣化の一途を辿っているのかわかりやすく、それでいて豊かな経験則と現場での力のある言葉で説明してくれていて、納得するところ4割、自分も劣化しているなと反省するところ5割、宮台そりゃぱねぇぜと思うところ1割だった笑

  • 学校で習う性教育は本当に役立っているのか、考えさせられました。
    「性」とは何か、ちゃんと教えていかなければいけないなと思った。

  • 性教育というと、親の関心は性犯罪、性暴力の回避に向きがち。でも、「性愛」についてはどうだろうか。ただ加害・被害という「防犯」的に考えて、遠ざけていいのだろうか。ゆえに、ミヤダイ先生の登場なのである。

    日本中の先生たちが読むべきだろうが、読まないだろうし、読んでも実践にはいたらないだろう。日本は、反公共的なヘタレか、反道徳的ヘタレばかりだから。自己防衛するしかない。

  • 絆をもとめるナンパって、ナンパとは呼ばないのではと思う。要は度胸試しと友達探し。今の人たちは積極性が少ないんだろうな。

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著者プロフィール

1952年愛知県名古屋市生まれ。小学校教員。フリースクール「アーレの樹」理事。〈お・は〉編集人。〈ち・お〉編集協力人。
著書に『仕事を辞めたい。職場で自分を守る最善の選択』(ジャパンマシニスト社)『学校再発見!――子どもの生活の場をつくる』(岩波書店)『センセイは見た! 「教育改革」の正体』(青土社)『子どもってワケわからん!』(批評社)ほか多数。

「2023年 『学校バトルを真面目に楽しむ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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