- Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
- / ISBN・EAN: 9784887471184
作品紹介・あらすじ
亡き最愛の夫、三浦安信さんに向けて生前に書きつづった詩を中心に、編者が新たに編み直した「混じり気なしの愛の詩集」。
「あなたのかたわらで眠ること、それがわたくしたちの成就です」―。
「死こそ幸せ」と茨木さんはひそかに見つけたのでした。
詩業を極め、公の詩人だった茨木のり子が「女」に還り、赤裸々に愛を告白します。
感想・レビュー・書評
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茨木のり子さんの詩集ですね。
亡くなって、七年後に編まれた詞華集との事です。
小さな、可愛らしい本です。
大親友の石垣りんさんの『レモンとねずみ』と同じ位の大きさ。
この詞華集には、茨木のり子さんのご主人への想いが込められています。
凛とした力強い印象の茨木さんですが、あとがきの谷川俊太郎さんがこう記されています。
「一途に愛する〈私〉を貫いたひとりの女性の生が、詩とい
うかたちによって〈公〉となった、
現代では稀な混じり気なしの愛の詩集です。」
茨木さんはご主人を亡くされてから、三十一年間一人暮らしを通されたそうです。
この詞華集を読んで、茨木さんは常に、ご主人と共にあられたのだと、感じられます。美しい愛の詩集ですね。
急がなくては
急がなくてはなりません
静かに
急がなくてはなりません
感情を整えて
あなたのもとへ
急がなくてはなりません
あなたのかたわらで眠ること
ふたたび目覚めない眠りを眠ること
それがわたしたちの成就です
辿る目的地のある ありがたさ
ゆっくりと
急いでいます
「挽歌というのかしら、万葉の頃なら相聞歌ね。
でも誰にも見せません。
わたしが死んだあとで見てください。」
と、茨木のり子さんがいわれた、その詩集「歳月」を中心に編まれた詞華集です。少女のような愛の形が美しいです。
大好きな茨木のり子さんの詩集は、とても心にしみました。
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初めて読む茨木のり子さんの詩集としては、正しい順番ではなかったのかもしれないと、谷川俊太郎さんのあとがきと、編集者の方の編集後記を読み思いましたが、率直な感想を記したいと思います。
愛する夫亡きあと、自らの人生を終え「あなた」のかたわらで眠ることを二人の愛の成就とした本作は、夫安信さんへのとてつもなく深い愛に溢れていて、死後のみに出版を許したことに納得できました。
安信さん亡き後もまるでそこにいるかのように夫を感じ、愛し続けた無防備で隙だらけの、まるで少女のような告白の数々に胸が締め付けられました。
人はこんなにも深く亡くなっても尚誰かを愛し続けることができるのかと。
切なく、艶めかしく、苦しく、親密で、だけど悲しくなのに何度も読みました。
こんなに愛し、抱き、抱かれ、愛され、そして成就した「わたくしたち」を心から羨ましく思います。 -
亡き最愛の夫に向けた愛の詩集を中心に
編集された茨木のり子さんの詩集
時に少女のように…
時に凛とした淑女のように…
時に艶っぽい一人の女として…
達観したような潔い言葉の中に、混じり気のない夫への愛の深さが感じられた。
「急がなくては」
「さくら」
「夢」
「占領」
「歳月」
特にこれらの詩がストレートに刺さった。
迷いなくブレることなく「自分の芯」を貫いた生き様がひたすらに格好よく感じるのは、現代ではその生き方が難しく感じられるからなのかもしれない。
その姿勢に崇高さすら感じ、何度も繰り返し読んだが、また数年後に必ず再読しようと思う。 -
夫の三浦さんへの愛に溢れていて、人はそれだけ人を深く愛することが出来るのだ、ということに感動をおぼえる。
私もこのようになれるかはわからないけれど、少しでも愛を積み重ねることが出来ればと思う。
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大好きな茨木のり子さんの愛の詩集。
これまで茨木のり子さんといえば、
“自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ”に
代表される男前なイメージばかりだったけれど、
こんなに女らしい一途な愛に生きた人だったんだと
新たな一面を垣間見て驚いた。
さらにさらに尊敬する女性となりました。 -
連れ添って25年で逝った夫への思慕。自身が亡くなるまでずっと、その思いを送り続けた、茨木のり子の私人としての姿が生々しくあらわれている。
あまりの愛の深さにくらくらして、烈しさと寂しさに涙した。 -
こんなに"愛おしい"が溢れた詩集があるだろうか。
読みながらうるうると目から涙がこぼれそうになる瞬間が何度もあった。
レインコートで、唐揚げとほうれん草のおひたしで、スウェーデンの椅子で、
夫への溢れる愛を綴る筆者の深い想いたるや。
あぁだめだ。また泣いてしまう。 -
急がなくては/さくら/部分/夜の庭
まっすぐにあちら側をまなざす作者が見えるよう。ビリビリと伝わりくる思慕の念が凄まじく、何度も中断しては共鳴するように泣いてしまった。手にとって本当によかった。 -
(存在)が好き。
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私小説かと思うほどの濃密感
わたしは相方との別れをこのように迎えるのだろうか
二人、死の国において、目覚めない眠りを共にする事が、愛の完成なのだろうか。
そんな思いの詩人に、わたしは嫉妬しているのだろうか
どの詩を読んでも、私のかわいた感情にドロドロと押し寄せてくるような詩集でした。