町かどのジム (子どもの文学・青い海シリーズ 14)

  • 童話館出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887500242

感想・レビュー・書評

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  • 老水夫のジムは、いつも町角の木箱に腰掛けている。少年デリーは、ジムのお話を聞くのが大好きだ。ジムが話してくれるのは、子どもだった頃や船乗りの頃に体験した不思議な話。
    特に好きだったのは、子どもだったジムが、畑でカラスを追い払う話。お弁当は分厚く切ったベーコンをはさんだパン。おいしそうでおいしそうでどうしても食べたかった!

  • 私にとって「豊か」と言う表現が最もふさわしいファージョンの作品。
    大好きなアーディゾーニの挿絵と共に、今回もとことん楽しめた。お話は全10話。
    デリーという8歳の少年が、町角のみかん箱に座り続けるジムという80歳の老人から聞いた話で綴られる。
    最終章ではこのふたりの温かい友情も語られ、ここがまたすごく良いのよ。
    8歳と80歳の友情?といぶかしく思われる方は、先ず読んでみて。
    荒唐無稽と言えばそれまでのお話なので読み手をかなり選ぶけれど、底辺に流れる温かさや優しさ、ユーモアは感じ取ってもらえるはず。
    公教育を一切受けなかったというファージョンの想像力に驚いて欲しいなぁ。

    ジムの存在は、現代でいえばホームレスに相当するものなのだろう。
    それでも衣食に不自由しないのは、町の人たちがこぞって面倒をみているからだ。
    ジムもそれをじゅうぶん分かっていて、誰か通るたびに嬉しそうに顔をほころばせてお礼の言葉を口にする。
    そして、この通りになくてはならない人になっている。

    そう言えば子どもの頃近所にそういう大人がいた。
    毎朝神社の御手洗で裸になって身体を洗っていた。
    いつもニコニコ顔で、大きな声で民謡を歌っていたっけ。
    私はそのおじさんが大好きで、色々な話をしてもらったものだ。
    神様仏さまにそれは詳しい人だった。
    両親もいつも、そのひとをご飯に呼んでいた。
    町の名士と言われる家の跡取りだったが、少し知恵が足りないからと身内から追い出され、以来ホームレスだったと知ったのは、大人になってからのこと。
    町の人たちで弔って、小さなお墓まで建てた。今も郷里に帰ると手を合わせに行く。

    「みどり色の子ネコ」と「ありあまり島」「ペンギンのフリップ」が心に残る。
    他にも「こんな姿だから誰からも愛されない」と涙を流す大海ヘビの話には思わずほろり。そしてやはり最後の「ジムの誕生日」が出色。
    「心がほころぶ」という読書体験だった。

  • こういうのは本当は
    あとあとの資料としてじゃなく
    子供の頃に素直に読めたら良かった。

    いつも街角に座っている老人が
    ご近所の坊ちゃんにせがまれ
    船員生活をしていた頃のはなしを
    おもしろおかしく聞かせてあげるという
    短い話のつながった
    〝おやすみ前のおはなし〟みたいな感じ。
    だいぶ空想が入ってるから
    ちょっと映画『ビッグフイッシュ』を
    思い出してしまったよ。

  • 男の子の住む街にはジムがいる。若い時は船乗りだったジムは、いつもまちかどのみかん箱に座っている。街の人たちはみなジムに親切だか、いちばんの仲良しは子どもたち。今日もジムは男の子に船乗りだったときの不思議な冒険の話をするのだ…。
    自分も子どもになって、目の前でジムに語られているよう。7編のお話が収めされている。最後のエピソードに胸が熱くなる。
    ペンギンのフリックとの交流譚と、海へびを撫でる話が好き。

  • 中学年〜 豊かな話
    町かどにずっと座り続けるおじいさんジムはかつては船乗りだった。8歳の少年デリーはそんなジムからそのころの話を聞かせてもらう。
    こういうゆったりした話っていいなあ。
    読み聞かせてあげるとなおよさそう。
    アーディゾーニの挿絵がぴったり!

  • 「ねえ、話してよ、ジム。エビをとりに海の底にもぐったらナマズの女王につかまった話。なんでもありあまるほどある島の王様になった話。」
    (『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より紹介)

    ・少年は8歳。ジムが大好き。
    ・ジムの語るおはなしは10こ。海を舞台にした小さい冒険
    ・少年はジムの誕生日をサプライズで祝おうと計画する。素敵なラスト!
    ・ファージョンの短編集はほかに『年とったばあやのお話かご』『ムギと王さま』がおすすめ。

  • いつも町かどに座っている老人ジムが、船乗りだったころに体験したふしぎな話を少年デリーに語る。ペンギンに求婚された話や、タラに恩返しされる話など、「ほら話?」と思うような、ゆかいな話がたくさん入っている。ジムの話が始まる前の、ジムとデリーの会話も、ほのぼしていてとても好き。

    「ジムを心から愛していたのは、なんといっても子どもたちでした。じぶんたちが生まれるずっとまえに、ジムが船のりだったことは、子どもたちの心をひきつけずにはいませんでした。」P12

  • ■伊藤忠069
    #町かどのジム
    #1階本棚

    #小学中学年から
    #小学高学年から

    ■出版社からの内容紹介
    町かどの箱の上にいつも腰かけている80才のジムは、8才のデリーに、ゆり木馬号の船乗りだったころの話を語ってくれます。

    #172ページ
    #20×15cm
    #伊藤忠寄贈図書

  • 町かどのミカンばこにいつも座っている年寄りのジム。少年デリーは船乗りだったジムが話してくれるお話が大好き。霧の海を泳いで着いた「ありあまり島」、「ペンギンのフリップ」のお嫁さんになってフリップに助けられる話、土星に盗まれそうになった月の話「月をみはる星」、ジムとチンパンジーが入れ替わる「チンマパンジーとポリマロイ」など。10こ目のお話「ジムのたんじょう日」では、デリーから心のこもったプレゼントが…。通りに住む人々から愛されているジムの人柄のように、ジムが経験した奇想天外なお話には刺々しさがひとつもなくほっこり優しい気分に。どこまで本当でどこから作り話なんだろうなんて野暮なこと考えずに、デリーになった気分で自然とジムの話に引き込まれていきます。

  • 8歳の少年デリーの家のそばの町かどに、ポストがあります。
    その隣に木で作ったミカン箱を椅子代わりして、ジムはいつも座っていました。
    朝早くから、夜まで。

    デリーは、元船乗りだったジムにお話をねだります。
    ジムはミカン箱の横をちょっとあけて、デリーが座れるようにしてからお話を始めます。

    そのお話が、荒唐無稽なものばかり。
    有名なところではシンドバッドもそうですね。
    旅に出て、日常とは全くかけ離れた経験をする。
    船乗りってそういうもの。
    子どもにとっての船乗りのお話っていうのは、未知の世界への扉であり、無事に帰ってきている姿は、冒険の成功なのです。
    そりゃあ、楽しくないわけがない。

    今だったら、日がな一日何をするでもなく街角に座り続ける老人は、役立たずと思われるかもしれません。
    でまかせばかり話す、うそつき老人といわれるかもしれません。
    大人はそれを排除しようとするかもしれません。

    でもこの町の人たちは、ジムという存在を受け入れ、それとなく見守っていることもうかがわれます。
    デリーもそういう大人たちを見ているから、安心してジムにお話をねだれるのです。

    畠でカラスを追い払っているうちに眠ってしまい、気がついたら小さくなってカラスの畠から命からがら追われる話。
    緑色の子ネコの話。
    すべてのものが有り余っている島で王様になった話。
    ペンギンの奥さんになった話。
    タラの恩返しの話。
    月が土星に行こうとするのを阻止する話。
    大きな海ヘビを撫でてあげる話
    チンパンジーと入れ替わった話
    そして、ジムの80歳の誕生日。

    ジムの誕生日は8月10日。
    夏の盛りです。
    町の人たちは海や山や森や田舎に行ってしまって誰もいません。
    だけど…。

    ああ、こういう話、大好きだなあ。
    わくわくして、ドキドキして、ほっこりして、笑える。

    特に好きなのは、ジムがペンギンの奥さんになった話。
    奥さんになったって、ジムが卵を産んであげることはできない。
    だけど夫であるフリップは、妻であり船乗りであるジムを守り助け、自分の幸せもちゃんとつかむんですよ。
    格好いいぜ、フリップ。

    ああ、面白かった。

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