- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784887596993
感想・レビュー・書評
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事実は理論より奇なり
クリーンエネルギーとして着目されてるコーンエタノールについて、「土地や森林をトウモロコシ畑に転用した場合、コーンエタノールはガソリンの約2倍の温室効果ガスを排出する」というデータがあるそうです。今話題の電気自動車にしても、現実に車が走っている時に排出される温室効果ガスは削減できるかもしれません。しかし、発電所から電気を供給する際に排出される温室効果ガスは考慮されていません。データは一方面から捉えるのではなく可能な限り俯瞰して見るべき、ということなのでしょう。
会社に入って数字の重要性を認識させられました。月ごとの出願件数や他社との件数比較、出願にかかる諸費用、出願毎の財産的価値(算出不可能だと思いますが)など、事あるごとに数字の提出が求められます。さらに、「どうしてその数字になったのか」、「その数字の背景にある事象は何なのか」、「その数字から導き出される推察は何か」など、その数字に意味を見出す能力も求められます
データは見る人によって印象が変わるように、完全なる客観性など存在しないと思っています。ユール=スルツキー効果(実際に周期性はなくともそう見える)を考慮するとなおさらかもしれません。ならば、組織においては、せめて決定権を持つ人間に対しては、データから導き出されるロジックが客観的であると思わせることが重要であると思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「わからない人の気持ち」がわかる人の説明は
たいていの場合、わかりやすい。
逆に、最初から全部わかっている人の説明は、
意外にわかりにくいことがある。
僕の親父は典型的な技術者タイプの人間であり、
一方で母は根っからの文系人間である。
母は自分がわからないことを父に質問するのだけど、
その説明は極めて正しいのだけど、わかりやすくはない。
僕は「通訳者」になって二人の間を取り持つことができる。
なぜなら、僕は高校2年の時に理系進路をあきらめた
落ちこぼれだからだ。
さて、本書の著者は理学博士で、
三度の飯より数字が好きな「データ分析オタク」だそうだ。
そんなエリートで数字オタクの著者が、
日本活性化の切り札として提唱するのが、
データ分析に基づく「統計思考力」である。
本書では、たとえば
・若者の読書離れはほんとうか?
・小泉改革は格差を拡大したのか?
・バイオエタノールが環境にやさしいのはなぜか?
といった「素朴な問い」を立て、
それらに対する「世間の一般的な見方=常識」を
「初期仮説」として、それらをデータをもとに検証していく。
ポイントは
①(解釈前の)「生データを見る」習慣をつける
②基本的な統計テクニックを使って「正しく分析する」
③上記①②によって、「未来を予測する」
ということ。
①や②に関しては、
数学が得意な人なら既知の範囲なのだろう。
また「ビジネス定量分析」を受講した人にとっては
よい「反復練習」になるかもしれない。
ただし、その上で③につなげていくには
さらなる訓練が必要になる。
著者は③を述べる中で「自力で考える」ことの重要性を
強調している。つまり、①と②を駆使することによって、
誰かからのお仕着せではない、自分自身の「結論」に
達するための訓練が必要ということだ。
さらにいえば、「未来を予測する」とはすなわち、
何らかの「意思決定」をすることでもある。
その意味で、本書は「だれかが書いたデータの解釈を
読まされて」思考停止になりやすい経営者にとっても
有意義である。
一方で、著者が本当に読んでほしい人たちにとって、
本書が「わかりやすい」内容かどうかは微妙だ。
著者の危機感と主張には賛同するのだけど、
僕のような人間が「統計思考力」を身に着けるには
まだまだ訓練が必要であることも、よくわかった。
・・・ということも含めて、読んでおいてよかったと思う。 -
未来を考えるうえで、データ分析力は必要不可欠。数式をほとんど使わずに、元データを見る必要性、データの正しい読み方、利用の仕方の基本がわかる本。
以下はおどろいたこと。
バイオエタノールはガソリンよりも温室効果ガスを放出する
「相関」というのは、あくまで「対応関係」を示したものであって、「因果関係」ではない
「データ分析力=数学力」ではない -
数式をほとんど使わずに、平均値や偏差値などの説明をしてくれる。
しかしそれでも、私にはそこらが難しくて、途中で理解を放棄してしまった……
「似た事件が続けて起こる」のは本当か?
地震が続けて起こるのは偶然ではない。
しかし飛行機事故が続くのは偶然である。
ポアソン分布「稀にしか起こらない互いにまったく無関係の事件(事象)が一定期間(この場合は1年)に何回起きるかを記録すると現れる分布」
で、説明していた。
事件に人は物語性を求めるから、連続して起きた事件に、社会情勢を当てはめたりするけれど、それは短絡的。
ただし、メディアによる報道が、別の犯罪を引き起こすことはある。
この本だったか、「人殺しの心理学」だったか、今、殺人事件の件数は減っている。
しかしその背景には、医療技術の発展があり、昔だったら死んでいたような怪我でも、死なずに済むようになったこともある、と、書かれていた。 -
卒業生寄贈推薦図書
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2回読んでしまった(2014.3.2)
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学生のとき、「確率・統計」はまったく分からなかったでのすが、この本ならある程度、理解できました。
多面的なものの見方ができないタイプの人間なので、とても参考になりました。 -
"事実は小説より奇なり" ではないが、実際のデータを見れば、日頃、感じている印象が大きく違ったりすることがある。そんな世の中の真実を知るスキルが "統計思考力" だ。
例えば、第一章の "アメリカ・ベンチャービジネスの幻想" によると、OECD 諸国で自営業比率が最も高いのはトルコの 30% で、アメリカは 7.2% しかないそうな。数多くのベンチャー企業が、激しい生き残り競争をしているイメージとはずいぶんと違う数字が登場する。それから、一人で行われる起業が 76% を占めることにも驚かされるし、ベンチャーキャピタルから起業資金を調達しているのは 0.03% 以下という数字にも驚愕した。Apple, Google, Facebook のようなサクセスストーリーは、例外中の例外って訳だ。
もっと身近な話題もある。若者の読書離れは本当か? 学力低下は本当か? などなど…について、実際のデータに基づいて考察している。
"データは真実を語る" とでも言おうか? 世の中の風聞とは少し違う "真実の姿" を知るために、"統計的思考力" は磨かれてはいかが?