誰も語らなかった防衛産業 [増補版]

著者 :
  • 並木書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890632930

感想・レビュー・書評

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  • 知らなかった分野だし、面白いところに目をつけたな、と楽しみに読み進めたが、底の浅さがだんだん鼻についてきて、途中で時間の無駄かも、と思い出した。読みかけた時間がもったいないから頑張って読んだけれど。

    防衛技術を維持し、継承するためにもっと防衛費を使って、自衛隊が安定して兵器を購入すべき、武器の輸出も積極的に行うべき、というのが著者の意見らしい。それはまあ、良い。輸出するんなら「防衛産業」じゃなくて「兵器産業」じゃないの? という細かいツッコミはさておき。

    説得力がないのは、自説に都合のよい材料だけ書いているからだ。金が無尽蔵にあるなら防衛費にもどんどんつっこめばいい。でもそんなわけはなくて、その分教育や厚生や医療にかけられる金が減る。比較して、そういうものより防衛が大事でしょ? という根拠を示さなければならないはずだが、そういう話は出てこない。

    防衛産業の一端を担う町工場を取材して、みんな頑張ってるんだよ、と書く。働くひとたちの連帯感や仲間意識を賞賛する。そんなこと言われてもなあ、と思う。車の部品を作っている町工場は頑張っていないのだろうか。医療機器を作っている工場には連帯感はないのだろうか。頑張っているところに金を払うべき、と言うのなら、いろいろな工場の頑張り度を比べなくちゃならない。

    日本が武器を輸出すれば、いろいろとメリットがある。カネも儲かるし、研究も進む。強力な兵器を国産化できれば軍事的なリスクを減らせる。ではなぜ日本は武器輸出に消極的だったのか(少なくとも安倍政権以前は)。どんな問題があったのか。それは解決したのか。いまいちよくわからない。

    ぼくはよく知らない物事について知ろうとするとき、まずファクトを知り、客観的な分析を知り、その上で参考として、先行者の見解を聞きたい。本書はそういう役には立たなかった。

  • 防衛装備品の調達の不安定性や調達数の少なさなどの特性が、防衛産業に、人や技術、ラインなどの生産基盤維持のための多大な負担をかけている。それでも防衛産業に携わり続けるのは日本の平和と安全に寄与するのだという彼らの使命感からであり、日本の防衛産業が今日まで続いてきたのは自助努力によるところも大きいが、同時に、苦境に耐えかねて防衛産業から撤退する企業もある。

    昨今、防衛装備移転三原則が閣議決定され、防衛装備品の輸出も視野に入ってきたが、そもそも単価が高く、また日本の特性に合わせて作られたものと海外の需要がマッチするかといった問題や、いかに日本国内で名だたる大企業といっても世界をまたにかけるアメリカの大軍需産業に太刀打ちできるかということもある。防衛予算も少ない中、輸出に防衛産業の活路を見出すという考え方もあるが、その方法などについては慎重な検討が必要だと思った。

    防衛省では、装備品の標準化手法として、「制式化」という、最初のモデルを大きくは変えない方法がとられており、装備品の統一性を図ることができる一方で、技術の進展に対応できていないという問題があったため、改善が進められている。

    防衛装備品調達の現状と諸問題がまとめられていて、関心がある人には助かる内容。

    一般市民にとっては関心の薄い内容だが、平和は座して待つだけで訪れるものではなく、自ら求め努力することが必要であり、防衛装備の供給を万全にしておくこともその一環だという意識を持つことが私たちに求められている。

  • 『万物に神宿る』
    『最後はモノが教えてくれるんです』
    『開発力は最大の抑止力だと思ってます。平時に技術優位を保つことが大事なのです』

    おっしゃる通り。

    こういった感性を、普段の生活、仕事においても持ち、是としたいと思いますね。

    ちなみに、武器輸出は大賛成ですよ。
    それによって、更に技術力は高まりますからね。

    ただ、真の同盟国に限りますけどね。

  • 熱い!!

    今まで単に「わー格好いいーーー!(ノ*>∀<)ノ♡ฺ*.゚・:*」と思ってるだけだったけど、チラ見させていただいた背景の熱と志に頭が下がります。総火演、関係者の方にもぜひ行って欲しいなぁ。

  • 防衛省(主に陸)と防衛関連企業について装備品の開発、調達及びこれらに係る人材育成の観点で語られる書籍。防衛装備品の開発は期間を要する一方、国の方針によって官の予算が決まるため、急な縮小を強いられる民側の苦悩を感じると共に、それに伴う人材育成の遅延など様々な問題があると感じた。また、武器輸出3原則(緩和される予定だが)により国内(防衛省)に市場が閉じていることで量産が難しいという問題もある。また、ライセンス国産や輸入に頼りすぎると、①技術がブラックボックスである②価格をあげられる③内需を満たせない④国内技術が衰退するなど多くの問題が生じる。今後輸出が緩和されると、防衛産業の動向のめざましい変化が予想されるため、ますます目が離せない。

  • 自衛隊そのものではなく、彼らを支えている民間の防衛産業に焦点を当てた本。こんな所を!?と思わせるような零細企業から、こんな大会社が防衛産業を!?と思うことばかり。企業の方々の並々ならぬ努力によって、支えられているんだなぁと思いました。
    予算などのことも書かれているので、勉強になります。

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著者プロフィール

桜林美佐(さくらばやし みさ)防衛問題研究科
昭和45年生まれ。東京都出身、日本大学芸術学部卒。防衛・安全保障問題を研究・執筆。2013年防衛研究所特別課程修了。防衛省「防衛生産・技術基盤研究会」、内閣府「災害時多目的船に関する検討会」委員、防衛省「防衛問題を語る懇談会」メンバー等歴任。安全保障懇話会理事。国家基本問題研究所客員研究員。防衛整備基盤協会評議員。著書に『日本に自衛隊にいてよかった ─自衛隊の東日本大震災』(産経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸~星になった小さな自衛隊員~』(小社刊)、『自衛隊と防衛産業』(並木書房)、『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)など多数。趣味は朗読、歌。

「2022年 『陸・海・空 究極のブリーフィング - 宇露戦争、台湾、ウサデン、防衛費、安全保障の行方 -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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