モレルの発明 (叢書アンデスの風)

  • 水声社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891762322

感想・レビュー・書評

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  • ひとりの男の執着の行き過ぎた完成形。
    完璧に好き。

  • 本書を知ったきっかけについて、大学院生時代に、前衛的な作風で知られる演出家と学生とで即興劇を企画実演する授業に参加したことがあった。その劇の打ち上げを劇場近くの居酒屋でやった際、劇作家が、これから読んでみたい本の候補に本書をあげていたのだ。読んでないけど、たぶんこういうストーリーかも、と予想する作家の思考回路に驚かされた。装丁から、本のストーリーが完結した一幅の映像として流れ、それによって実際の本を手に取らず終わらす、ということはあったが、予想するとは驚きの世界。
    大学院の修了における送別会で、本書を本好きの指導教官に贈呈した。アヒル口で喜んでくださったのがとても印象的。

  • 全く恐ろしい本だ。本国にて極刑を受けた人間が得体の知れない病気の巣と呼ばれる島に逃亡する。1、2週間で体が腐って死んでしまうそうだ。植物も同じようなもの。人影から逃げまどいながら、遺書となる日記を付けるのだが、この中身は信憑性はない。注釈に事実が書かれていて、彼の解釈、記憶は間違っていると指摘が続く。さぞ難解でとりとめない、けしてそんなことはなく普通に面白い。
    モレルという人の作った発明が、この島の疫病を作り、それは事実なのだろうか。
    映像や写真に姿を録られると魂が奪われる。その恐怖を狂気が包み込む。

  •  1940年発表、アルゼンチンの作家、アドルフォ・ビオイ=カサーレス著。罪を犯して島に逃げた男は、やがて島の博物館に暮らす男女達の存在に気づく。彼はそのうちの一人の女に恋をするが、徹底的に無視され続ける。
     不思議で不気味な小説だった。大半の人と同様、私も映画「去年マリエンバートで」経由で知った口だが、博物館の雰囲気などにPCゲームのMYSTを思い浮かべてしまった。
     まず、結論を言ってしまえば、彼らはモレルという科学者の作った装置によって映し出された幻だったわけだが(同じ一週間を永劫回帰のごとく延々と繰り返している)、正直そんなことはさほど重要ではないと思う。ゆえに本小説をSFと呼ぶことには抵抗がある。
     むしろまず、読むべきは男の強迫観念的な行動や心理描写だろう(恋する彼の健気さは少し笑える)。彼は「どうして女が自分を無視するのか」、そして「もし彼らに見つかってしまえば罪人である自分はどうなってしまうのか」など、さんざんに悩みながら、この現象に対する仮説を考える。読んでいると、私もともに仮説の中で揺れ動き、不安定な心理を共有してしまうのである。
     そうしてSF的ネタばらしがあるわけだが、まだページは少し続く。そして迎える男の最後の行動は切なく、何だかいろいろ考えてしまう。何か割り切れない不気味さが残って、解釈が宙づりになっているのだ。
     私は何となく、男が狂っているのだと思っていた。本小説、註釈があるのだが、それが男による島の記述を「事実と異なる」と否定していたからだ(身を追われているという境遇も男を狂わすのにはうってつけだ。というより、この『追われている』ということ自体が男の妄想だとすら私は疑っていた)。男は自分で作り上げた幻想の人間達を見ている……だが最後にはその幻は装置が作っていたことが分かる。とすると、ある類似に気づく。延々と繰り返す日々を観測する男――それはまさに本を読む読者自身だろう。
     後書きを読むと、さらなる類似に気づかせてくれた。主人公とモレルの類似。なるほど。ではモレルの正体は主人公であり、その罪というのは……男が島にやってきた、というより戻ってきた理由は……。

  • 献辞にはボルヘスの名前があり、
    序文はそのボルヘスが書いている。
    完璧な小説とあるが、そのとおりである。

  • なんで南米文学って、何読んでもこんなに難しいの・・・。この作品もオヤジが若い女につきまとって無視され続ける。っていう話にしか見えなかった・・・。

  • ボルヘスの「完璧な小説」という前書きに期待して読んだけど、筋も分かりやすいし衒学的な記述を散りばめた佳作だった。

  • 1回読んだだけでは、ところどころに論理破綻のある普通のSFにしか思えない。ただ、論理破綻の部分を読みなおすと、文章化されていない部分に物語の骨格があるのではないか、いや、間違いなくそこに「モレルの発明とはなんだったのか」という謎本が書けるぐらいの作者の意図が感じられる。
    もう一度読みたい。

  • イマージュによって象られた「他者」。他者性の臨界点が露出する「愛」と「死」。

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