鈴木いづみコレクション〈1〉 長編小説 ハートに火をつけて! だれが消す

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  • 文遊社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892570223

作品紹介・あらすじ

静謐な絶望のうちに激しく愛を求める魂を描いた自伝的長編小説。いづみ疾走の軌跡。 解説/戸川 純 

感想・レビュー・書評

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  • 2015年47冊目は鈴木いずみの自伝的長編。

    彼女の23歳からの約10年が断続的(続断的と言った方が正しい感もあるが)に綴られている。

    ルイジアナ(リーダーのボーカル&ベースは「よろしくッ!」と挨拶する)。グリーングラス(ベースのジョエルはハーフ、ギターのランディーは中国系のGS後期、横浜本牧出身グループ)。ブルースシンガーのアイ。そして、アルトサックスプレーヤーのジュン。この辺りは実名は伏せてあるが、容易にモデルはわかってしまう。

    この一冊、もぅ軽く5回以上は読み返しているだろう。しかし、何度読み返しても、彼女の言葉のチョイスは、直感、直情的でありながら、実にフレッシュだ。並の頭の回転速度では、追いつけはしない。

    今回は多数の引用を登録しました。しかし、この二つはレビュー用にしておきました。この一冊は『青春がいかにしておわったか、を語っている。(276p)』そして、『生きてみなければわからないことがある。わかってしまったあとでは、もうおそいのだ。(中略)この不条理を、とりあえずわたしは受けいれている。ジョエルもそうだ。受けいれられなかったジュンは、死んでしまった。彼は人生に、時間に、力いっぱいたてついたのだ。(276~277p)』と記した彼女もその数年後 ……。彼女のハートについた火はあまりに激しかった。そして、残った熾火でも生きるには困難な、のっぺりとした時代になってしまったんだろう。

    ただ今は、彼女の魂が安らかで、薬に頼ることなく、ぐっすりと眠れているコトを祈ります。

  • もぅ何度目だろう。読み返したの…。
    気付けば彼女の年齢を超えてしまっていた。
    会話中心の展開が好きだ。ネットも携帯もない時代。面と向かった相手とどんな感情、どんなシチュエーションで、どんな会話を交わすか。
    そして、今回も感じる。おそらく、今の自分でも、まだ彼女の「スピード」についていけないだろう…と…。
    そして、自分はコレを棺桶まで持って行くことだろう。

  • 松丸本舗で「僕はすずきいづみに恋してる」ってポップがあって、つい買っちゃった。
    扱ってる時代の雰囲気がわからないせいか、読み切って特別な感情は特にわいてこなかった。
    ジュンとの結婚、その後の展開がすごくいい。お互いの会話や描写がとてもリアルで、こういう会話するとこんな気持ちになるなーと共感する。
    こうやって、人やクスリに溺れて生きても、ちゃんと友達もいて結婚もできちゃって子供ができて。
    自分の中でタブーだと思ってたことが意外とそうでもないんだなーって思えるのがすごくいい。
    みんなシリアスにものを考えすぎる。自分は特に。もっと自堕落というか、生々しく生きたい。

  • ハートに火をつけて!誰が消す
    読み終わった。
やっぱり鈴木いづみ好きだなあ。
    60年代という時代は想像するしかないし、鈴木いづみという人物は未だに理解出来ない。でも文章に引き込まれる。
物事を完全に理解したとして、その先に面白さなんてあるのか?なんて考えなので、これでいいやと思う。
    私のジョエルはどこだ

  • ごくたまに出会う、「この人もしかして自分かな」と錯覚するような人だった。乾いてて投げやり、排他的だけど肯定的。

  • 鈴木いづみの自伝的小説。
    どこまでが本当でどこまで虚構かはわからないが、これを読むことで、鈴木いづみという人間に今までで一番深く触れた気がした。
    ヒリヒリする。もう最後の方なんて読み進めるのが辛くなってくる。でも目を離せない。
    こんな破滅的な人、ごく稀な存在であって、「もっと自分を大切にしなよ」なんて老婆心が湧いてきたりするんだけど、自分にはこんな生き方絶対できないからこそ、強く惹きつけられる。そういうファンは多いと思います、きっと。

    鈴木いづみは誰のマネをするのでもなく、何かのフリをするのでもなく、自分自身を真面目に生きていた。ただそれだけだった。その結果の、36年の生涯だったのだろう。

    ネットもメールも無い時代、若者は今よりもっともっと、たくさん会話を交わしていたんだろう。
    この小説の中でも、とにかく皆、語り合っている。
    いろんなものを見つめて、考えて、思って、話して。

    セックス中毒、薬物中毒の若者達って括ってしまえばそれまでだけど、なぜかそうさせない魅力が鈴木いづみにはある。
    自分の気持ちにすごく真摯で、可愛らしくて、(陳腐な言い回しだけど)いつも愛を求めていた鈴木いづみという人が、今とっても気になる。

  • ヒーロータイムに備えて加速

  • 過去に読んだ本。

    芸術家肌の男性を旦那にすると、本当に大変なんだなー。

    やっぱり、結婚ておっかないや。

    だからと言って結婚しないわけじゃないけど。

  • 36歳のとき、首吊り自殺にて死去した鈴木いづみが、最後に書いた長編小説。
    小説だけれども、ほぼ自伝に近い。
    結婚前の派手でかつ怠惰な生活。
    そして結婚後の狂気。
    狂気が去った後のつめたい静けさ。
    それが一冊の物語に詰まっている。

    正直に言うと、物語としては、決して面白いとは言えません。
    だけどこの小説は、面白さを求めて読むものではない。
    ともすれば、気持ちの悪さまで感じてしまう、静かな狂気や、人間の凄まじさが表されてる。
    特に、ジュン(実際は夫の阿部薫)との結婚生活の章は、本当にすごい。
    ジュンの異常なまでの愛情や、執着心を、主人公のいづみは愛してなんていなかった。
    だけどジュンが死んだあとも、ジュンに追いかけられているような気がする。愛していなかったのに。
    それほどまでに、ジュンの愛情や負の力が凄まじかったということだと思う。

    そして、いづみが本当に愛したと言える、ジョエル。彼も実在している人物のようです。
    彼らすべてを知る人が読んだら、また見方が違うのかも知れない。
    ジュンの激しさと、ジョエルの諦めにみちた雰囲気の対比。
    どちらに愛されるのが幸せなのかは、分からないけれど。

    物語というよりも、人間の激しい内面や、哲学にみちた文章を読む小説でした。

  • 2010/12/6購入
    2015/3/19読了

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著者プロフィール

ISS 及び日本コンベンションサービスの会議通訳者として稼働後、1978年に渡米。ミシガン州にて1984年、鈴木・マイヤーズ&アソシエーツ㈱を設立。1989年、アメリカ翻訳者協会(American Translators Association : ATA)に加入後、日英両方向の認定翻訳者となり、日本語部門長、理事、翻訳認定試験審査委員などを歴任。現在は認定委員会委員及び通訳方針諮問委員会委員(Interpreting Policy Advisory Committee)を務める。1991年に創立されたミシガン翻訳者通訳者ネットワーク(Michigan Translators/Interpreters Network:MiTiN)の発起人の一人で、長年会長を務めた後、現在は理事会アドバイザー。2003年、カリフォルニア州にて日英の認定法廷通訳人の資格取得。全国司法通訳者翻訳者協会(National Association of Judiciary Interpreters and Translators : NAJIT)会員。

「2016年 『裁判員裁判時代の法廷通訳人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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