鈴木いづみコレクション〈1〉 長編小説 ハートに火をつけて! だれが消す
- 文遊社 (1996年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784892570223
作品紹介・あらすじ
静謐な絶望のうちに激しく愛を求める魂を描いた自伝的長編小説。いづみ疾走の軌跡。 解説/戸川 純
感想・レビュー・書評
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2015年47冊目は鈴木いずみの自伝的長編。
彼女の23歳からの約10年が断続的(続断的と言った方が正しい感もあるが)に綴られている。
ルイジアナ(リーダーのボーカル&ベースは「よろしくッ!」と挨拶する)。グリーングラス(ベースのジョエルはハーフ、ギターのランディーは中国系のGS後期、横浜本牧出身グループ)。ブルースシンガーのアイ。そして、アルトサックスプレーヤーのジュン。この辺りは実名は伏せてあるが、容易にモデルはわかってしまう。
この一冊、もぅ軽く5回以上は読み返しているだろう。しかし、何度読み返しても、彼女の言葉のチョイスは、直感、直情的でありながら、実にフレッシュだ。並の頭の回転速度では、追いつけはしない。
今回は多数の引用を登録しました。しかし、この二つはレビュー用にしておきました。この一冊は『青春がいかにしておわったか、を語っている。(276p)』そして、『生きてみなければわからないことがある。わかってしまったあとでは、もうおそいのだ。(中略)この不条理を、とりあえずわたしは受けいれている。ジョエルもそうだ。受けいれられなかったジュンは、死んでしまった。彼は人生に、時間に、力いっぱいたてついたのだ。(276~277p)』と記した彼女もその数年後 ……。彼女のハートについた火はあまりに激しかった。そして、残った熾火でも生きるには困難な、のっぺりとした時代になってしまったんだろう。
ただ今は、彼女の魂が安らかで、薬に頼ることなく、ぐっすりと眠れているコトを祈ります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もぅ何度目だろう。読み返したの…。
気付けば彼女の年齢を超えてしまっていた。
会話中心の展開が好きだ。ネットも携帯もない時代。面と向かった相手とどんな感情、どんなシチュエーションで、どんな会話を交わすか。
そして、今回も感じる。おそらく、今の自分でも、まだ彼女の「スピード」についていけないだろう…と…。
そして、自分はコレを棺桶まで持って行くことだろう。 -
松丸本舗で「僕はすずきいづみに恋してる」ってポップがあって、つい買っちゃった。
扱ってる時代の雰囲気がわからないせいか、読み切って特別な感情は特にわいてこなかった。
ジュンとの結婚、その後の展開がすごくいい。お互いの会話や描写がとてもリアルで、こういう会話するとこんな気持ちになるなーと共感する。
こうやって、人やクスリに溺れて生きても、ちゃんと友達もいて結婚もできちゃって子供ができて。
自分の中でタブーだと思ってたことが意外とそうでもないんだなーって思えるのがすごくいい。
みんなシリアスにものを考えすぎる。自分は特に。もっと自堕落というか、生々しく生きたい。 -
ハートに火をつけて!誰が消す
読み終わった。 やっぱり鈴木いづみ好きだなあ。
60年代という時代は想像するしかないし、鈴木いづみという人物は未だに理解出来ない。でも文章に引き込まれる。 物事を完全に理解したとして、その先に面白さなんてあるのか?なんて考えなので、これでいいやと思う。
私のジョエルはどこだ -
ごくたまに出会う、「この人もしかして自分かな」と錯覚するような人だった。乾いてて投げやり、排他的だけど肯定的。
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ヒーロータイムに備えて加速
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過去に読んだ本。
芸術家肌の男性を旦那にすると、本当に大変なんだなー。
やっぱり、結婚ておっかないや。
だからと言って結婚しないわけじゃないけど。 -
36歳のとき、首吊り自殺にて死去した鈴木いづみが、最後に書いた長編小説。
小説だけれども、ほぼ自伝に近い。
結婚前の派手でかつ怠惰な生活。
そして結婚後の狂気。
狂気が去った後のつめたい静けさ。
それが一冊の物語に詰まっている。
正直に言うと、物語としては、決して面白いとは言えません。
だけどこの小説は、面白さを求めて読むものではない。
ともすれば、気持ちの悪さまで感じてしまう、静かな狂気や、人間の凄まじさが表されてる。
特に、ジュン(実際は夫の阿部薫)との結婚生活の章は、本当にすごい。
ジュンの異常なまでの愛情や、執着心を、主人公のいづみは愛してなんていなかった。
だけどジュンが死んだあとも、ジュンに追いかけられているような気がする。愛していなかったのに。
それほどまでに、ジュンの愛情や負の力が凄まじかったということだと思う。
そして、いづみが本当に愛したと言える、ジョエル。彼も実在している人物のようです。
彼らすべてを知る人が読んだら、また見方が違うのかも知れない。
ジュンの激しさと、ジョエルの諦めにみちた雰囲気の対比。
どちらに愛されるのが幸せなのかは、分からないけれど。
物語というよりも、人間の激しい内面や、哲学にみちた文章を読む小説でした。