山伏と僕

著者 :
  • リトル・モア
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本棚登録 : 237
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898153376

感想・レビュー・書評

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  • ある日思い立って山伏になることにした著者の山伏修行体験記です。

    白装束を纏って山中を歩き、ホラ貝の合図で支度をして、瀧打ちや般若心経の唱えすぎでナチュラルハイになったりします。

    ところどころにある自然をあらわすのに、抽象的な、主観に凝った描写も見受けられますが、そもそも自然を書き記すための的確な言葉などないのかも知れません。

    羽黒の深い森のなかを分け入るシーンが印象的で、そのほか、著者の実体験による心の動きが、飾らない文章で書かれています。
    ハウツー本ではありませんので、山伏になりたい人は直接お山へどうぞ。

  • 山伏の修行の体験ルポ。
    出羽三山の山伏の修行にはもっとも原始的な自然信仰の姿が残っているとのこと。
    現代の社会では見えずらくなっている自然な人間の生き方。
    もっと本能に沿った生き方。そういったものに触れる旅だったようです。
    修行の描写のなまなましさは読んでいて息苦しくなるくらいライブ感があります。苦行の先に見えてくる恍惚の世界も追体験できます。
    本を読んでるだけなのに、「あ~苦しかったけど良い体験ができた」と思えます。
    一連の修行体験の通じて現れてくるのは原始日本で自然と共に躍動していた山伏の姿。
    コミュニティから離れて山に入り、山の知識と体験をコミュニティに還元しながら列島を旅する人たちの姿です。
    ある時は医者で、ある時は芸術家で、ある時は天文学者に。
    歌や舞踊は山伏の呪術から変化したそうです。
    山伏の姿を通して人間も自然の一部なんだなあということがじわじわと思いだされます。
    自分は無宗教だと思っていたけど、そうじゃなかった。
    日本には原始時代から自然信仰があって、それが染みついているんだなあ。
    そういえばヨーロッパにもキリスト教が広まる前にはケルト文化があって、日本と同じような自然信仰がありました。
    より洗練された宗教や考え方と融合することで人間が進歩してきたのかもしれないけど、自然と密着した原始人の心を忘れちゃいけないよなあとしみじみ思える良本でした。

  • いまどきの若者が入門した山伏の世界。謙虚に、素朴にその感動が綴られていて好感がもてる。最後の方は話がマニアックでついていけなくなっちやったけど、いつか自分も羽黒山を歩いてみたい。その時にまた読み返してみたい。

  • この本を知ったのはどこだったろうか。ビジネス雑誌の書評だったか。なんとなく頭の中で気になっていて、amazonで購入した。

    内容は自分が山伏という世界に、どういう風に入っていったかという体験談。そもそも、「山伏って何?」と思ってしまうが、なるほど、こういう体験談で語られるのはわかりやすい。山伏の世界を身近に感じさせてくれる意味で、不思議な体験談の本だ。

    著者の坂本さんが山伏体験をしたのは出羽三山。言わずと知れた東北の霊山。古来、東北には信仰があった。これらが神道や仏教と出会い、独特の世界を生み出していった。巻末の参考図書をみると、坂本さんがずいぶんと民俗学の本を読み込んでいることがわかる。折口信夫、中沢新一、などなど。ボクも間違いなく、東北で脈々と引き継がれている太古のイメージと結びついていると思う。

    そういえば、梅原猛が『日本の深層』でこう書いている。
    「私はかつて仏教を研究していたが、この修験道というものに大きな抵抗感を感じた。その教義もはっきりせず、その概念的な哲学もない、この修験道を一体、どう考えたらよいのか。私はいささか困惑した。しかし、私が仏教を超えて日本の原始宗教を研究するようになってから修験道ほど面白い宗教はないと思うようになった。(中略) 修験道ほどはっきり土着の宗教の現れたものはない。そして、まさに羽黒山こそ数ある修験道の中でも最も東北土着の宗教の匂いの強い修験道の根拠地なのである」。

    日本を語るとき、大和朝廷の視線とは異なる視線で語ることができるはずだ。ボクたちは、その日本に生まれ、そしている。その多様性こそが日本が育んできたものであり、文化のはずだと思う。

  • 坂本大三郎『山伏と僕』リトルモア、読了。イラストレーターの著者が六年に渡る羽黒山での修行の経験を綴った一冊。山に登り、滝に打たれ、ホラ貝を吹く……山伏の修行は決して楽ではない。しかし読むとその魅力に頷かされる自分に驚いた。何かに「打ち込むこと」、「豊かさとは何か」考えさせられる。

  • 羽黒三山の山伏になった青年のお話。かなり、かなりだよ。

  • 山伏に興味を持ったイラストレーターの修行の体験記。
    考え方や感じ方が素直に文章になっていて好感がもてた。
    昔から日本に根付いていた山伏の考え方は今、薄まっていってるんだろうな~

  • 途中までは、内容は興味深いがなんだか子供の作文みたいだな、と思って読んでた。けど途中から著者本人の内面的記載が増えたところで、自分と考え方が近いことに気づき、ちょっといいかもに変わった。

  • 山伏修行をしている筆者のエッセイ。山伏、言葉は聞いたことあれど、その実態を知る機会はなかなかない。
    自然と向き合うということがどういうことなのか、その片鱗に少しだけ触れられた気がした。
    読ませる文章で、面白い。

  • 山伏の世界を、あくまでも一般人に近い目線で体験記風に書いている。
    修行中の自然描写・体感描写が細かく、しかも嫌味なく綴られていて、こちらまで追体験している気になる。こういう部分を詳しく書いている本は少ないので、とても参考になった。感覚が鋭敏になって超常的なことを経験しても、淡々としているところもいい。
    素朴で味わいのあるイラストや版画も、メッセージ性があって好きだ。

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