愛の縫い目はここ

著者 :
  • リトル・モア
3.85
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本棚登録 : 795
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898154649

作品紹介・あらすじ

日本語から詩がこぼれてくる。
言葉にひそむ光、声を支える日々の足音、
最果てを抱えこんでいる私たち。——谷川俊太郎(帯コメントより)

第33回現代詩花椿賞受賞作『死んでしまう系のぼくらに』と、
映画化でも話題となった『夜空はいつでも最高密度の青色だ』に連なる
詩集三部作、完結!


最果タヒ自身が拓いた、詩の新時代を決定づける傑作。

「グッドモーニング」「ふれた永遠」「糸」
「光の匂い」「5年後、太陽系、みずいろ」
…ほか、書き下ろし含む全43篇収録。

この本から、また始まる。

感想・レビュー・書評

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  • この詩人の詩集を読むのは4冊目です。
    今までに読んだもののうちで、先に刊行されたものより、マイルド感が出てきて、鋭さは薄れたような気がしました。

    「あとがき」より
    あなたの痛みに、わかるよ、と言うことはできない。
    でも、誰にもわからなくても、あなたの痛みはそこにあるよ、と伝えたい。私などないまま、あなたの中に、あなたのものとなって、溶け込んでいく言葉を、書いていきたい、私にあるのはそれだけです。あなたの曖昧さを抱きしめる、その一瞬になりたかった。この詩集に出会ってくれて、本当にありがとう。

    この詩人が特別、孤独であったり、悩みがたくさんあるわけではなく、そこにいる見知らぬ誰かに向けて書いてくれているのだと思いました。
    この詩集の中でそれが一番わかりやすく表現されていると思う詩を1篇紹介します。


    「映画館」
    映画館で観られるものは全部、きみの隣に座る、一人
    で来ている女の子のために作られたものだ、としたら、
    その女の子のために花でも買ってあげればきみは世界
    一の映画監督になれる。かならず、だれかを幸せにで
    きる人になりますようにって幼いきみに、ママが願っ
    たから。だから、すれちがっただけだけれど、私はき
    みにであえて幸せだったとおもいこむことにした。


    ひとはひとを見てはいない。花と花瓶と人の肌を同列
    に見て、それでも死はかなしいものだと思うとき、そ
    れはすこしだけ願いに似ている。不安だから、その人
    が尊いのだということを死ぬまで、信じていたいから、
    すべての人の人生が、映画になっていてほしい。


    光の束をかきあつめるようにして映画を観る人。きみ
    の瞳から光が映写されて、だれかを照らしているとき、
    それこそがきみの映画なのだと、気づくまで、生きて。



    「ワンシーン」「ハイスピード」「赤色の詩」「ガラスの詩」「年末の詩」「白い花」もよかったです。
       

  • 長編選びがちなので、短編…いや、もっと短く詩を攻めてみようと思い手に取った本。

    単語に込められた意味とか、行間にどんな感情が隠れてるかとか、1文読むごとに、頭の中で解釈文が生成されて、小説より手こずりました笑

    顕微鏡で細胞の観察してたと思いきや次の瞬間、宇宙にふっ飛ばされて地球を眺めてる位の、視点の切り替わり?が激しく…解釈の処理が追いつかずです…
    吉野弘さんは読めたのですが、タヒさんはなかなか難しかった^^;

    そもそも理解しようとすること自体違うのかも?自分なりの解釈が広げられるような大人にはなってみたいと思いました

  • 初めて買った最果タヒさんの詩集。
    物事の感じ方、捉え方、言葉で表現する方法、どれを取っても斬新に感じた。
    私は詩を書くことに興味があるけど、最果さんの詩を読むと、自分の勉強不足がよく分かり、大人になってもまた学生の頃みたく勉強したいと思った。
    学生の頃みたく縛られないで、本当に学びたいことを図書館で好きなだけ調べたい、などと思わせてくれた。
    最果さんの詩からは、哲学を感じる。
    哲学の勉強はしたことないからよく分からないけど、文学の一歩上のような感じがする。
    文学と哲学を結びつけたような、形容しづらい文章、考え方だと思った。
    きっととても頭が良くて、いろいろなことを知っているんだろうな。
    私もいろいろな事を知って、詩を書くことが楽しめる人間になりたい。

  • 詩歌づいている二冊目
    いただいた本

    詩は小説とは違う頭の使い方。同じようなこと考えていた、ような気になる、たぶん同世代だからか。
    花椿や他の雑誌に掲載された作品も載っていて、でもちゃんと覚えているわけじゃないので、「読んだことあるような気がするけどどこでどう読んだのか思い当たらない」という状態に時々なった

  • 著者の言葉で自分の心が引き延ばされ、世界がひっくり返り、自分が自分では無くなって輪郭が曖昧になり、生も死も光に包まれてぼんやりして、悪いものではないような気がしてきました。世界は残酷ではないのかもしれません。

    《傷ついていくことが、こわれていくことだと、だめになっていくことだと当たり前に信じてきたけど、でも、本当は、何かをそっと手作りしている途中なのかもしれないね。縫い目が増えていく。ぬいぐるみが、できあがっていく、毎日。》

    あとがきのこの言葉で泣きそうになりました。私にぴったりの言葉に出会えたと思いました。

  • あとがきがすき。
    わかるよ、めっちゃわかる、って言わないで欲しいと
    元恋人に言われて振られた民からすると
    ああそうだよな、と思う。

    安易にわかる、って言わないようになったの。
    でも、本当にわかってしまう時、共感できる時に
    なんていえばいいのかな、

  • 「私などないまま、あなたの中に、あなたのものとなって、溶け込んでいく言葉を、書いていきたい、私にあるのはそれだけです」という作者のあとがきがすごく好きでした。

    詩を読んだ人が何かを思い浮かべることや、誰かを思いやること、そういうことを全て含めて作者は愛と呼んでいるのかもしれないな、と思いながら読みました。

  • 再読。
    ある講義で使うために一つ詩を選んでいたんだけど、いいのがありすぎて迷った。最終的になにを選んだかは内緒。

    共有しなくていい感情に同意されるのがわたしは大嫌いで、痛みとか孤独とかに対して簡単に「わかる」って言われると本当に腹が立った。
    わからないよ。
    少なくともあなたがわかっているそれとはたぶん違う。
    あなたが同調した時点でそれは別のものだ。
    わかりあえない部分を尊ぶべきだと思うし、大切にしたいし、あるいはしてほしいと思っている。

    タヒさんの言葉はそういうものを簡単に理解せずに理解から離れた場所から突き放してくれるから好きだ。
    そして抱きしめてくれるから好きだ。
    言葉にした時点で自分が前以って持っていた意味とはかけ離れてしまうから。

    「千年後、ぼくは泣いている。孤独などなかったこの人生をどうか終わらせないでください。」

  • 「スクールゾーン」と「グーグルストリートビュー」と「赤色の詩」。
    それと、「ブラックホールは死にかけなのにね」が好きでした。

    最果さんの言葉がすとんと沁み込んでこないときは、まだ心がそんなにヤバくないんだなと思えるので、「精神のバロメーター」として御守りにしたい詩集です。
    ここに救いや落ち着きを感じ取り始めるときはかなり病んでいる、というのがわたしのこれまでなので。

    何も遺さず死んでいく事も赦してくれる感じがするのは最果さんだけだな。
    なんだかんだ言いつつ、「世界は美しいし君も美しい」なのも。否定や拒絶の強い言葉があっても「愛している」が透けてる。

  • 2021.11.12
    好きだろうと苦手だろうと関係があろうとなかろうと、全ての人に対して「あなたはあなたの世界でどうか幸せに生きてね」と思うし「私も私で勝手に幸せになるからね」と思うんだけど、それをより強く感じたなぁなぜか

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著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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