読む年表 日本の歴史 (渡部昇一「日本の歴史」)

著者 :
  • ワック
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898311622

感想・レビュー・書評

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  • 経歴を見るに、著者は歴史の専門家ではありませんが、エッセイストクラブ受賞者ということで、読みやすい文章です。
    神話の時代からの日本の歴史を解説しており、規範の歴史書とは少し違う、雑学的な情報や、著者の考えが表れたものになっているため、これは頭に入りやすそうだと思いました。

    史実に則りながらも、王道とは違う側面から光を当ててみようという姿勢で、この本は書かれているようです。
    仏教伝来は、神道の中心である天皇が外国の宗教を信じ始めたと考えると大事件になるが、明治天皇が西洋の憲法を参考にしたという感覚と一緒だと考えるとすんなりいく、という指摘に、なるほどと思いました。
    古くから、神道と仏教の共存共栄を果たしてきた日本人。
    島国で単一民族国家ながらも、他文化に排他的ではなく、取り入れる柔軟さにたけているところは、不思議です。

    『万葉集』は、言霊が感じられるかどうか、いい歌かどうかで選ばれた歌集で、身分の差は関係なかったとのこと。
    近代欧米は「神」と「法」の前に平等だけれど、日本人は「歌」の前に平等だそうです。
    柿本人麻呂、山部赤人ともに、有名な歌人ながら身分は低く、柿本人麻呂は「貧窮問答歌」なども出しているほど。
    現在でも、天皇が勅題を出し、優秀作品は御所への招待を受ける「歌会始」という優美な風習が続いています。

    『源氏物語』は、自分たちこそ新しいライフスタイルを送っているとの自負の高いブルームズベリークラブのメンバーに衝撃を与えたとのこと。
    古典ながら勧善懲悪ではなく、紫式部は「小説によって人間性を描くことができるから価値がある」という考えを平安時代から持っていたそうです。
    今に通じる斬新さですね。

    隆盛を極めた藤原氏がなぜ天皇にならなかったかというと、神話時代から皇室に仕えるものという意識があったからだそうです。
    その節度があったからこそ、藤原氏は滅びずに現代まで続いているとのこと。
    確かに、自分が太政大臣から天皇になろうとした平清盛は、凋落してしまいました。

    武家政権は、鎌倉幕府から明治維新まで。
    わかっているようではっきり理解していませんでした。

    元寇を迎え撃った執権北条時宗は、なんと当時17歳の若さだったそうです。
    二度目の時には24歳。
    そして34歳で病死したという、怒涛のような短い人生だったと知りました。

    元軍が撤退したのは、神風のためだとされ、武士の必死の戦いはさほど評価されなかったという残念な結果となったようです。
    死に物狂いで戦った時宗も、位が一つ上がっただけだったとのこと。
    土地を奪ったわけではないので、朝廷は報酬に土地をくれず、やむをえずに北条氏がそれまで堅実に貯蓄していた私財を削って武士たちへの報酬にしたとのこと。
    その財政悪化が北条氏の衰退を招いたそうです。

    朝廷が報酬を与えないことはそれまでにもたびたびあり、八幡太郎義家も「後三年の役」の時には自腹で褒美を与えたとのこと。
    それで武士たちは、彼を慕い、賛同するようになり、源氏の興隆につながったそうなので、身銭を切ることの結果はどう転ぶかわかりませんね。

    平家は壇ノ浦で戦いの末に滅びましたが、源氏は暗殺などでうやむやのまま滅び、30年足らずで北条政権へ移ったとのこと。
    確かに、なんとなく北条氏にバトンタッチされ、終わりがなんだかはっきりしません。
    身内内でつぶし合ったドロドロの源氏よりも、平家の方が滅びの美があり、歴史文学にもなったわけです。
     
    これまで、南北朝の争いを招いた後醍醐天皇は、なんというお騒がせ人物だろうと思っていましたが、直接の元凶は彼ではなく、それ以前の御嵯峨天皇のえこひいきにより、天皇が持明院統と大覚寺統二派に分かれたことが混乱の原因だとも知りました。
    御嵯峨天皇が問題だったわけですか。

    後醍醐天皇のクーデターは、武士の協力で成功したものの、彼は武士を軽視、無視したとのことで、その後がうまくいかないのは明らかです。
    それでも最後まで後醍醐天皇に忠誠を誓った楠木正成。
    「いまはこれまで」という息子との桜井の別れは、戦前の人なら誰でも知っているエピソードだそうです。
    楠木正成の銅像は見慣れていても、その武勲は全く知らずにおりました。

    足利尊氏は、源氏の直系だそうですね。血統の良さでとりたてられてきたとのことで、血筋で室町幕府を開くまでに大躍進できたとは。

    その後、近代日本にも深く言及していき、初めて知る驚きの事実も多々ありましたが、途中から、著者はかなり日本寄りの考えを持っているのではないかと思うようになりました。
    この人の肩書は、文明批評家ですが、批評の矛先は一貫して海外の方に向けられているようです。
    目を背けたかった祖国の愚行の事情がわかり、そういうことならばと諸所で納得はしましたが、書かれていることは本当なのでしょうか?
    バイアスがかかっていないか、気になりだし、鵜呑みにせぬよう、慎重に構えねばと思いました。

    それを確認するには、さらに多くの歴史書を読んでいかなくてはいけないのでしょうけれど、歴史の本は、読めば読むほど真実がどれかわからなくなるばかり。
    今年の東日本大震災まで載っており、神代からまさに現代のことまで解説している一冊。
    がっちりとした歴史観でまとめられた内容自体は全編を通じておもしろく興味深く、考えさせられるものでした。

  • この1冊で歴史の見かたが変わる。国の歴史に自信がもてる。神代から東日本大震災に至る重要事項を豊富なカラー図版とともに。コンパクトな解説だから歴史の流れをつかむのにもってこい。

  • 著者視点の日本史。面白い。

  • 最後まで読めるか心配だったけど、面白くてすいすい読めた。

    著者の雑学や考え方なども織込まれて書かれていたからだと思う。

    教科書のような歴史本とは違って時代背景やその関連性なども分かった。

    日本のはじまり(古代の神話)から現代まですべて書かれていて日本の歴史が整理できた。

    歴史初心者むけ。
    あまり歴史の流れが分からない人がざっと流れを把握する用


    最後らへんは著者の現在政治の不満バクハツと言った感じw

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著者プロフィール

上智大学名誉教授。英語学、言語学専攻。1930年、山形県鶴岡市生まれ。1955年、上智大学大学院修士課程修了後、ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学へ留学。ミュンスター大学における学位論文「英文法史」で発生期の英文法に関する研究を発表。ミュンスター大学より、1958年に哲学博士号(Dr.Phil.)、1994年に名誉哲学博士号(Dr.Phil.h.c.)を授与される。文明、歴史批評の分野でも幅広い活動を行ない、ベストセラーとなった『知的生活の技術』をはじめ、『日本そして日本人』『日本史から見た日本人』『アメリカ史の真実(監修)』など多数の著作、監修がある。2017年4月、逝去。

「2022年 『60歳からの人生を楽しむ技術〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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