- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784902943733
作品紹介・あらすじ
「わかる」ために生きてるわけじゃないが「わかろう」とするために生きている。制作、故郷、旅、音楽…初めて綴るアーティストの日々。
感想・レビュー・書評
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美術家・奈良美智のエッセイ…なのだけど、blogに書かれた日記を集めた本だから、わりとラフな雰囲気。
かしこまって“表現”についてを語っているのではなくて、日々の生活や創作活動のなかで感じたことが書かれていて、まったく飾り気はないのに鋭く心に残る言葉が(私にとっては)たくさんで、久々に付箋だらけの本になりました。
創作を生業にしている人間ではなくても、普段感じることはいろいろとあって、その中から得た思いを誰かとの会話で話すことってあると思う。
そして、その人的には何の気なしに話したことが、誰かにとっては何かを深く考えるきっかけになったり、生きる上でのヒントになったりする。
この本は、そういう感じ。
誰かのblogを覗き見して、自分にとっては大事な言葉を頂いて帰ってくるような。
「弱さを持ったまま強くならなければいけない」
「意味のない怒りを捨てよう。しかし、怒りの気持ちを忘れずにいよう」 etc…
最近ならば私は2012年の展覧会を観に行ってるんだけど、そのときにすごく強い力がアンテナに訴えかけてくるような感覚があって、思わず泣きそうになった。知識も何もないけれどそんな風に感じる、そういうことってきっと大事なことなんだと思う。
とある像の前で母(一緒に観に行ってた。母も美術の知識はまったくない)が一言「これ、怖い」って呟いて、タイトルを見たら「ホワイトゴースト」だったということもあって、そういう素人のインスピレーションって侮れないとも思った。
帰り道で「今まで奈良さんの作品が何で人気なのかいまいち分かってなかったけれど、今日何となく分かった」とも言ってて、表現されたものが持つ無言のエネルギーみたいなものを感じた記憶もある。
そして私や母がそんな風に感じた理由が、この本を読んで少し分かったような気がする。
弘前出身の方なので弘前についての記述も時々あって、あぁわかる…と思うことも。
一応“文化の街”って呼ばれてるけど、やはりメインストリームではなくて、でも何かひっかかるものがある感じとか。
この本は折にふれて開くことになるかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アーティストは言葉の使い方にも個性がある。自分の言葉で思いを表現することができる。その最大の表現が彼ら自身の作品であることに異論はないであろうが、彼らの語る言葉はそれと肩を並べるにふさわしいものである。なんてインスピレーションをもたらしてくれる一冊なのだろう。彼らが作品を作り上げることで、言葉だって鍛えられていくのかもしれない。その事実を知るにあまりある本書にただただ頭の下がる思いがした。このように思考されて出来上がる作品を、この言葉たちを知らずして分かった気になることがあるとしたら、あるいはそれは罪かもしれない。単純にもったいないのである。しかし本当に音楽に影響を受けている方なんですね。
書きたい、創りたい、やってみたい。何でもいいのだけれど、自分に何かしらの意欲を与えてくれるものが本物だと思う。自分にとって本書はそういう本だった。
(20130506) -
奈良さん世代のロックの話が多かった。
また私が知らない現代美術家の話も多かった。
なので私にはあまり内容はわかりませんでした❗ -
レコジャケ
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ゆるくて素敵
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奈良さんには長文は向かず、ブログをすることも微妙で、Twitterこそが性に合っている、ということのよう。人にはそれぞれ、向いている文章ボリュームというものがあると思う(内藤廣のツアーとはいまいちだが長文の語りは味があると言うように)。
すなわち、何か自分の思いをくどくどと説明するようなことには関心がない。だから、ただただそういうことを聴きだそうとするばかりというようなインタビューには辟易としている――だから時々心の叫びを叫びたくもなる。衝動(インスピ)を大事にして作品を作るということを大切にしている。そんなところのようだ。
あるいはTwitter的だからこそ、横浜での個展への不安さを書き綴ってみたり、あるいは好きな楽曲を並べてみたり、という自由さがあって、気持ち良いのだ。たとえば、
・当たり前だけど、展覧会のために!って描くのはいやだ。当たり前だけど、描きたいから手が動いて描く!ってのが良い。(p13)
・作品を見せたい!という欲望が、作りたい!という欲望を超えたらおしまいだ。(p51)
・喜びばかりがある日々なんてありやしない。そんなおめでたい日々が続いたら、みんな馬鹿になっちまう。(p53)
弘前を思わせるフレーズが出てきた。「格安・コスト安」が地元の中心市街地をさびしいものにした、とのくだり。豊かさってなんだろうと改めて考えさせられるページだった。
「友の死、父の死」というエッセイも印象的。友の「アフリカで生きた一年は、日本で生きた十年に匹敵する」と言ったという話は、海外に赴任しなきゃとも背中を押される。このエッセイの結びには「人は生まれたときたら死に向かって秒読みしている」とあるが、多分まさにそうで、最近とくに、結婚を決めてからは、「結婚とは死を共有すること」と感じるものだ。
本書を通じて思う。ああ、本当のアーティストなんだな、と。 -
僕はいつも赤面していたい、に同感です。文章もすてきとはしりませんでした。
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前作に比べ、日記的要素から、より多くの人に向けた情報発信的要素が強くなった気がする。もちろん当時に比べて知名度があがったせいもあろうが、その分、彼のアートビジネス的なものに対する考え(反感)が強く打ち出されていて、ギャラリストの小山さんの本と合わせて読むとより面白い。
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県芸にならさんが滞在されていた頃、ちょうど沿線の地下鉄を利用していたのでついったー覗くのが楽しみだった。
その後ならさんが県芸を去り、自分もその線を利用しなくなってからこれを読んだ。ら、2010年のあらしコンのことも書かれてあってびっくりした。自分が出かけるたび、あの場所でぼんやりと感じ取っている言葉にできないなにかと似たような質のことを、ならさんもあの時間の中で感じ取られていたのだなあとおもって印象に残った。
「月」ってタイトルの文章がとても好き。 -
10年ちょいくらい前、爆発的に村上隆と奈良美智が目立っていたのを覚えている。2人とも反対の事を言っているが、オーディエンスからすれば同じ肩書きを持つ。偏見って恐ろしい。