- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903295107
作品紹介・あらすじ
日本社会に「貧困」が広がっている。雇用や福祉がズタズタにされるなかで、人間らしい生活を送ることができなくなるまでに追いつめられた人々が増えている。いつのまにか誰にとっても「貧困」はすぐそこにある時代に突入した。しかし、「貧困」は自己責任じゃない!「貧困」は政治的に、社会的に、解決されるのを待っている。
感想・レビュー・書評
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湯浅誠『貧困襲来』(山吹書店、2007年)は日本社会に広がる貧困問題を取り上げた書籍である。著者は貧困者を食い物にする「貧困ビジネス」を告発するなど反貧困の分野で精力的に活動している人物である。
『貧困襲来』から貧困問題が社会的・政治的に解決されなければならない問題であることが理解できる。貧困問題を抱える現代日本のガンはゼロゼロ物件などの貧困ビジネスである。貧困ビジネスは社会的な弱者を食いものにする。貧困ビジネスは貧困を拡大再生産することで利益を上げている。貧しい人から搾取する貧困ビジネスは格差を拡大する要因になっている。
貧困ビジネスの増殖は福祉政策の貧困が背景である。貧困ビジネスは福祉が機能していないところに生まれる。貧困ビジネスは行政が手を出さなくなった領域で収益を上げている。それ故にゼロゼロ物件などの住まいの貧困の解決策として公営住宅を拡充することは正論である(林田力「マンション建設反対と公営住宅」)。
貧困ビジネスを野放しにすれば貧困層は搾取され続ける。貧困ビジネスは規制しなければならない。現実に反貧困の市民運動の活動により、ゼロゼロ物件業者を宅建業法違反で業務停止処分に追い込んだ例がある(林田力「住宅政策の貧困を訴える住まいは人権デー市民集会=東京・渋谷」PJニュース2011年6月15日)。
http://www.hayariki.net/0/faqindex.htm
厄介なことに貧困ビジネスは公的なセーフティネットが機能不全になる中で立派な社会資源の一つとして認知されつつある。そのために目の前の現実論として貧困ビジネスがなくなると貧困層は益々困ることになるという類の議論すら生じる。
この種の欺瞞的な議論は労働者派遣法でもなされている。「年越し派遣村」に象徴される正規から非正規への置き換えは格差社会の要因であるが、労働者派遣を規制強化すると派遣労働者の働き口が減るとの議論である。ゼロゼロ物件などの住まいの貧困と非正規やワーキング・プアの問題は密接に関係している。
実際は住宅に困っている人々にゼロゼロ物件を紹介することは、金に困っている人にサラ金を紹介するようなものである。ゼロゼロ物件は悪であって、必要悪では決してない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
湯浅氏の強い怒りを感じる1冊。
これを読むと、今年5月に起きた、生活保護をめぐるお笑い芸人へのバッシングが、「満を持して」仕組まれたものであることがよくわかる。
貧困を社会保険などの公的な支援で支えるのではなく、家族・職場・地域に責任を押し付ける方向に持っていこうとしているのが明白だ。事態は「自己責任」から更にその先に進もうとしている。
この本の第5章「崖っぷちの生活保護」、特に「北九州市から全国が見える」は必読。
それにしても、私が学生だった頃には北九州市といえば、福祉のモデル都市だったのになぁ・・・
この本を読んで改めて感じたのは、「自己責任論」の壁の厚さだった。
湯浅氏もその壁を懸命に破ろうとされているが、そもそも、自己責任論を信奉し、貧困は個人の努力の問題と思っている人は、この本を読まないだろう。
この壁を打ち破る知恵や言葉はないものか・・・
最後に、自分の経験から一言。
私も以前の職場で、障害年金や生活保護の申請の業務を少しだけしたことがあるのだけど、年金や生保って、世間でイメージされているほど簡単にはもらえません。
特に生保は、窓口に相談に行った時点で「もっとがんばれ」と追い返され、申請すら容易ではなかった。
障害年金も審査が厳しくて、これには、「ちゃんと納めていたのに、いざ必要となったらもらえないっておかしくないか?」とずっと疑問に思っていた(今も思っている)。
恐らく、現在は私が携わっていた頃よりもっと厳しくなっているのだろう。
この国の社会保障は、本当にまずいところまで来ていると思う。 -
・貧困問題でまた一冊。NHKやNNNのドキュメントにも登場した湯浅誠氏の著書。
・貧困の原因となるのは「五重の排除」に「溜め」の不足と、いつもの切れ味。彼の言う事に説得力を感じるのは、やはり現場で活動をしている人の台詞だからだと思う。
・それにしても貧困を抹消していくこの手口は狡猾過ぎる。これ本当の話か?と簡単に鵜呑みにできないほど。
・うーん、自己責任論はやっぱ捨てなきゃダメかな、という考えに変わってきた。少なくとも貧困に陥ってしまった人には自己責任論は違うし、意味が無いのはわかった。ただ、五重の排除の状態にならないように生きていく責任は個人にもあるのではないか?違うかな。
(八王子市立図書館にて借る) -
いろいろな問題がわかりやすく書かれていた。貧困、に対する視野がかなり広がったように思える。解決策は、これから皆で考えていくものなんだろうか。
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私はこの本に出てくる「貧困」にはあてはまらない。
しかし、精神病を患っており、一瞬先は闇。
ゆえに、湯浅氏の指摘は、いちいちうなずけるものだった。
そう、私も「溜め」のない状態なのだ。
そもそも、今、この日本に暮らす大多数の人にあてはまるのではないか?
この国で、真の戦闘態勢に入るために、得ることの多い本である。 -
自己責任論による思考停止は、更なる停滞を生み出す。それが、重症化すれば、自己責任論にまたがり、思考停止している人にも、その魔の手がのしかかることになる。しかし、そういう人は、そういうことに気づかない。自分で自分の首を締めることになる悲劇の予感を、全く感じていないようだ。
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(「BOOK」データベースより)
日本社会に「貧困」が広がっている。雇用や福祉がズタズタにされるなかで、人間らしい生活を送ることができなくなるまでに追いつめられた人々が増えている。いつのまにか誰にとっても「貧困」はすぐそこにある時代に突入した。しかし、「貧困」は自己責任じゃない!「貧困」は政治的に、社会的に、解決されるのを待っている。 -
貧困の問題はえてして格差などによってごまかされがちである。
それは貧困という言葉にはあまりよくないイメージがあるため、政治家が使うのを回避してきた結果である。
この本は日本における貧困問題について真っ向から書いた本である。
貧困に対する問題認識をわかりやすくしてくれる一冊。
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自分の最低生活費計算しました。
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貧困、格差、生活保護、ホームレス。最近この手のキーワードの本読みすぎて、そろそろあきてきたかも・・・。