超訳 古事記

著者 :
  • ミシマ社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908151

感想・レビュー・書評

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  • スサノオノミコトが思っていたよりひどい。ということを、古事記を読むたびに思っている気がする。今回はオーディオブックで聞いたわけだけど。

    著者自身による朗読だけれど、プロ裸足のレベルの朗読だ。驚いた。

  • 古事記編纂1300年で賑わう出雲を旅をすることになり、改めて古事記神話を手軽に読むべく手にとった本書。古事記上巻の神話部分が、逐語訳という形式を取らず、現代文で、とてもわかり易く平易に語られている。難解な言葉遣いは一切無く、注釈が必要となるような部分も無いので、すんなりと日本の古代神話の世界に入り込んでいける。

    あとがきによると、本書は、著者が幼少の頃から慣れ親しんだ古事記を念頭に、二日間にわたって口述したものを、内田樹先生の出版物でお馴染み、ミシマ社の三島社長が筆記、編集したものらしい。まさしく、現代の稗田阿礼と太安万侶による、古事記決定版とも言える。

    本書に触れることで、断片的に記憶の片隅にあった古事記神話が一連の物語として容易にインプット出来た。

    八雲たなびく出雲の丘を実際に訪れる旅にはもちろんのこと、神話に秘められた意味や暗号を解読する知的冒険の旅に誘われるには、絶好のガイドブック。

  • お正月は初詣に行かれた方も多いと思いますが、日本の神々の系譜や宗教的儀式の意味については意外と知られていないもの。古事記や日本書紀の名前を知ってはいても、読んだことがある、という方は少ないのではないでしょうか。特に、戦後世代にとって、記紀神話は聖書以上に遠い存在かもしれません。かく言う井上自身、古事記には何度か挑戦しては挫折を繰り返してきた苦い過去があります。

    しかし、この鎌田訳古事記に出会って、古事記ってこんなに面白いものだったのかと、目を開かされる思いがしました。ギリシャ神話や聖書の物語にも匹敵する面白さですし、「日本昔ばなし」等で親しんできた民話の原型も散りばめられていて、日本人が語り継いできた物語の源流に出会えた気分になります。

    語られるのは、光と闇、生と死、破壊と再生、男と女、美と醜など、およそ世界中の神話が扱ってきた普遍的なテーマを巡ることばかりです。そして、これら一見対立するかのように見えるものが実は物事の裏表でしかない、ということを古事記は繰り返し伝えようとしているかのようにみえます。善か悪かというようなシンプルなものの見方をせずに、人間にも自然にも二面性があるのだということを認識し、それを語り伝えようとしてきた古代の人々は、私達よりも、人間や自然に対してずっと深い眼差しを持っていたのでしょう。

    このような古事記の世界観に触れる上で本書が何より素晴らしいのは、古事記が本来持っていた口承文学としての魅力を蘇らそうとしている点にあります。正確な翻訳を期すことよりも、稗田阿礼が語ったそのままの「語り」としての面白さを取り戻すことを目指しているため、音楽とも、詩の調べともつかない、瑞々しくもたおやかな、美しい響きとリズムを持つ言葉が本書の全編を貫いています。

    その言葉の響きとリズムに身を委ねていると、古代の神々や人々の息吹がとてもリアルなものに感じられてきます。歌を愛し、踊りを愛し、異性を愛し、動植物を愛した私達の祖先達は、歌の国、平和の国、清らかな生命と神々に満ちた国として日本を見ようとしていた。それは古代の人々が物語に託した祈りだったのだと思います。

    今生きるこの一瞬一瞬が古代から途切れることなく続いてきたもので、その底には、古代の人々の祈りがある。そう思うと、今、見ているもの、触れているものの一つ一つが、とても新鮮に思えてきます。心あらたまる新年にぴったしの一冊ですので、是非、読んでみてください。

    =====================================================

    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    まる さんかく しかく
    まる さんかく しかく
    天は円 地は四角 人は三角

    わたしたち青人間は 
    日々 その尊い 伊邪那美命の体から生まれ出た神々の 
    息吹と お陰をいただいて 暮らしている
    こうして 生きるということは 産霊の神々から始まる 
    神々の生成化育する体を わが身の個体に 取り入れる 
    ということなのである

    何も見えない 何もわからない 何もできない 何も生まれない
    息をするのも苦しい 未来がない 希望がない 
    いのちがうすくなる
    暗黒に閉ざされた世界に 様々な災いが 次から次へと起こった
    どうすればいいのか これから先 わたしたちは 光のない世界で
    どうやって生きていけばいいのだ

    「祭りをしよう! 
    岩戸の前で みんなの心をあわせ 力をあわせて祭りをしよう!
    そして心を込めて 祈り 祭り 踊るなかから 
    日の神 天照大御神を 呼び戻そう!」

    ああ 天が晴れてきて 光が射してくる
    その光が わたしたちの面にあたり 
    体も心もうきうきと浮き立って みなともに 一緒になって 
    踊りを踊る
    笹葉も草木も すべてのものが 一緒になって 踊りを踊り 
    ひとつになびく

    このようにして 暗黒の世界から 光が戻り 
    新しい光と希望の世となった

    須佐之男は その想いを歌にし 心の昂りを鎮めた
    これをもって わが国は 
    歌ぶりの栄える詩の国 歌の国となったのである

    災いをなす 恐ろしい怪物を退治して 新しい世界を切りひらき
    愛の言霊をかなでて 世界にうるわしい調べをもたらし 
    神々と人々を しあわせにするわざ を伝えたのである

    生太刀 生弓矢は 勇敢な大国主神の 力をあらわす呪具
    天の詔琴は 歌を歌い 神言を奏上し 神の心をほぐし 
    和らげ癒す 言霊の力を 引き出す呪具である
    知恵と力と歌によって 大国主神は 立派に 出雲の国を治めた

    「ああ これが 葦原中国 称えて言う 豊葦原の水穂の国なのか
    この地の水は 清らかに流れ 稲穂も たわわに実り 
    神々も人々も むつみ和み やさしく支えあって 
    生きてゆける国である この御国に幸いあれ!」

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    ●[2]編集後記

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    毎年、元日には家族三人で近所の神社に初詣に行きます。

    初詣というのも考えてみると不思議な習慣です。普段信心していなくても何となく行きたくなる、行かないと落ち着かない、という日本人は多いのではないでしょうか。行く先も神社とお寺の両方があるのですから、信仰をされている方には理解できない習慣でしょう。

    娘は神社に行くと神妙にしています。「神様」がいるところ、というのは、何となく理解しているようで、手を合わせることもします。しかし、4歳の子どもにとって、「神様」がどういう存在として認識されているのかは謎です。そういえば、今まできちんと神様についての話をしたことはありません。キリスト教系の幼稚園に行っている娘は、「神様」という言葉には親しんでいますが、それは「イエス様」なり「主」なりであって、神社の神様とは別物。きっと彼女にとっては、毎週、語り聞かされているキリスト教の神様のほう
    が身近なはずです。

    そう考えると、物語の力というものは馬鹿にできないのだなと思い至るのです。キリスト教には聖書の物語がありますから、幼い子どもでも小さい頃から神の概念に親しむことができます。古事記も本当は、そうやって語り聞かせるべきものなのでしょう。今回ご紹介した古事記は、読み聞かせにもってこいなので、今度、娘に読み聞かせてみようと思います。

  • 古事記は常々、読み直してみたいと思いつつも、なかなか読めていない。
    で、超訳という、とてもキャッチーなタイトルに惹かれ、読んでみた。
    5段階評価で、★6つくらいつけたい面白さ。
    原文で読んだ時に、中身は面白い気がしたけれど、リズムよく読めなかった印象があるけれど、この本はリズム感がとてもよくて、というよりも、稗田阿礼が目の前で詠んでくれたらこんな感じじゃないかな?って思った。
    なので、あとがきに口述筆記した、と書いてあり、興味深い。

    これは、古事記とセットで、所有したい1冊。

  • 古事記って名前だけは知ってたけど、こんな内容だったんだー。
    絵本読んでるみたいな感覚ですらすらと、アッという間。
    こんなに短いんなら、学校でも歴史の時間とかに読ませればいいのに。

  • 【ジャケ評】
    このジャケすごい。
    画像だと日の丸みたいだけど、実際は虹色に反射する銀色の円。
    書体がとても美しい。
    装丁は寄藤文平。

著者プロフィール

1951年、徳島県生まれ。國學院大学文学部哲学科卒。武蔵丘短期大学助教授。著書に『神界のフィールドワーク』『記号と言霊』(青弓社)、『翁童論』『老いと死のフォークロア』(新曜社)、『場所の記憶』(岩波書店)他。

「年 『記号と言霊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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