ことばの生まれる景色

  • ナナロク社
3.68
  • (7)
  • (9)
  • (5)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 235
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292853

作品紹介・あらすじ

東京・荻窪の本屋「Title」の店主、辻山良雄が選んだ大切な本。
画家nakabanは、その魂をすくいとるように絵を描きました。エッセイ集としても画集としても楽しめる、絵と文が並び立つ、オールカラーの贅沢な一冊! 
古びない魅力を持つ古典的作品を中心に、現代作家たちまで網羅したブックガイドとしても楽しめる本です。

まえがき 辻山良雄
『旅をする木』』 星野道夫
『ミラノ 霧の風景』 須賀敦子
『よいひかり』 三角みづ紀
『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース
『独り居の日記』 メイ・サートン
『苦海浄土』 石牟礼道子
『自選 谷川俊太郎詩集』 谷川俊太郎
『造形思考』 パウル・クレー
『夏の仕事』 永井宏
『尾崎放哉全句集』 柳田国男
『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス
「森の兄妹」『あひる』 今村夏子
『フラニーとゾーイ―』 J・D・サリンジャー
「犬を連れた奥さん」『かわいい女・犬を連れた奥さん』 チェーホフ
『城』 カフカ
『1973年のピンボール』 村上春樹
『山之口貘詩集』 山之口貘
『八月の光』 フォークナー
『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ
『色彩論』 ゲーテ
「なめとこ山の熊」『注文の多い料理店』 宮沢賢治
『楢山節考』 深沢七郎
『ジョルジョ・モランディの手紙』 ジョルジョ・モランディ
『おやすみなさい おつきさま』 マーガレット・ワイズ・ブラウン
『小さな家』 ル・コルビュジエ
『パタゴニア』 ブルース・チャトウィン
『さようなら、ギャングたち』 高橋源一郎
『方丈記』 鴨長明
『若き日の山』 串田孫一
『犬が星見た』 武田百合子
『夕べの雲』 庄野潤三
『ビニール傘』 岸政彦
『津軽』 太宰治
『門』 夏目漱石
『芝生の復讐』 リチャード・ブローティガン
『ホテル・ニューハンプシャー』 ジョン・アーヴィング
『細雪』 谷崎潤一郎
『声めぐり』『異なり記念日』 齋藤陽道
『モモ』 ミヒャエル・エンデ
あとがき nakaban

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 掲載されているのは”古典”がほとんど。著者の辻山さんは「長く読まれるものには時を経た落ち着きがあり、いつ読んでも何かを返してくれる懐の深さがある」と記す。懐の深さ…いい言葉だなぁ。

    私には難しくて多分理解できないであろう本も多くあった。でも、書評がどれも奥深くて心に響く。

    長年読もうと思っていて未読の須賀敦子、武田百合子、名前も初めて知った永井宏をまずは読んでみようと思う。マーガレット・ワイズ・ブラウン、ミヒャエル・エンデは再読して、改めて辻山さんの書評に立ち戻ってみたら更に深く味わえそう。

  • 大型書店でもセレクト書店でもない、Titleが歩む独自の道
    https://www.mirai-idea.jp/post/title

    『ことばの生まれる景色』文:辻山良雄 画:nakaban | ナナロク社の店
    https://nanarokusha.shop/items/5c5cf2aa787d842c57e28a72

  • 読書をたくさんする人たちの忘年会にて、本交換があるというので以前から気になっていたこれを交換用と自分用に一冊ずつ買いました。それぞれの本から抜き出した一節と、その本のイメージで描かれた絵が先に出てきて、そのあと本についての文章を読む形なんだけど、読んだことのある本でも一節と絵ではなかなか分からなくて、紹介されていた中で読んだことがあるのは10冊くらいあったんですが、一節を見て何の本か分かったのが『細雪』だけでした。
    ブックリストというか、おすすめ本を挙げていく本が大好きで本棚のいちコーナーがそういうジャンルで埋まるくらいなんですが、この本はどこか雰囲気が違うなあと思いながら読んでいました。一節を抜き出すにしても、絵を描くにしても、そこを抜き出すんだな、というのが意外で、面白くて、違うひとが違う目線で受け止めると、同じ本からでも新たな「ことばが生まれる」んだなあとしみじみ思ったり。でも自分とは違う目線でも決してちぐはぐな印象ではなく、ここに紹介されているような本たちは、そうしていろんな味わい方のある、ふくよかな魅力の本たちで、そういう本たちを手にとって売ってくれるのが素敵な本屋さんなんだなあ、と。

    ちょっと前に桜庭一樹さんの書評集の感想を書いていて、そこでも引用したあたりに、作者の手から離れて読者の読み手のものになるのが小説の良さだというようなことが書かれていたけど、小説に限らず、素敵な本たちは、書かれたときに一度、誰かに読まれてもう一度、他の誰かが読んでもう一度、と、何度も何度もことばが生まれるのかもしれないと思えた本でした。そんなことを考えて読み進めたら、あとがきで、絵を描かれたnakabanさんが引用のフレーズを使われていて、それだ、としっくりきました。

    たくさん本を読んで、素敵な鳥たちを窓辺に迎えるひとになりたいな、と思いました。titleにはまだ行けていないので、近いうちにぜひ行きたいです。

    • 地球っこさん
      misatoさん、こんにちは。
      本交換のある忘年会て、素敵ですね!
      私の周囲に読書好きさんがいるのか分からないので、そんな忘年会憧れます...
      misatoさん、こんにちは。
      本交換のある忘年会て、素敵ですね!
      私の周囲に読書好きさんがいるのか分からないので、そんな忘年会憧れます(*^^*)
      荻窪の本屋「Title」の店主、辻山良雄さんの本なんですね。
      うわぁ、これは読んでみたいです!
      2019/12/26
    • しづきさん
      コメントありがとうございます!「ALL REVIEWS」https://allreviews.jp/
      という書評サイトがあるのですが、そこ...
      コメントありがとうございます!「ALL REVIEWS」https://allreviews.jp/
      という書評サイトがあるのですが、そこの有料ファンクラブ(「友の会」と読んでいます)参加していて、忘年会や読書関係の企画などをやったりしているんです!わたしはまだそれほど積極的に活動できてはいないのですが、たくさんの読書仲間ができたり、活動ができたりしてとっても楽しいですよ〜✨
      こちらの本、素敵なのでぜひ読んでみてください!わたしはまだTitieにお邪魔したことがないので、近いうちにぜひ伺いたいなと思っています!
      2019/12/26
  • 読みたい本が増えて困る!
    nakabanさんの絵と引用の文章の選択が素敵♡



    東京・荻窪の本屋「Title」の店主、辻山良雄が選んだ大切な本。
    画家nakabanは、その魂をすくいとるように絵を描きました。エッセイ集としても画集としても楽しめる、絵と文が並び立つ、オールカラーの贅沢な一冊! 
    古びない魅力を持つ古典的作品を中心に、現代作家たちまで網羅したブックガイドとしても楽しめる本です。

    まえがき 辻山良雄
    『旅をする木』』 星野道夫
    『ミラノ 霧の風景』 須賀敦子
    『よいひかり』 三角みづ紀
    『悲しき熱帯』 レヴィ=ストロース
    『独り居の日記』 メイ・サートン
    『苦海浄土』 石牟礼道子
    『自選 谷川俊太郎詩集』 谷川俊太郎
    『造形思考』 パウル・クレー
    『夏の仕事』 永井宏
    『尾崎放哉全句集』 柳田国男
    『百年の孤独』 G・ガルシア=マルケス
    「森の兄妹」『あひる』 今村夏子
    『フラニーとゾーイ―』 J・D・サリンジャー
    「犬を連れた奥さん」『かわいい女・犬を連れた奥さん』 チェーホフ
    『城』 カフカ
    『1973年のピンボール』 村上春樹
    『山之口貘詩集』 山之口貘
    『八月の光』 フォークナー
    『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ
    『色彩論』 ゲーテ
    「なめとこ山の熊」『注文の多い料理店』 宮沢賢治
    『楢山節考』 深沢七郎
    『ジョルジョ・モランディの手紙』 ジョルジョ・モランディ
    『おやすみなさい おつきさま』 マーガレット・ワイズ・ブラウン
    『小さな家』 ル・コルビュジエ
    『パタゴニア』 ブルース・チャトウィン
    『さようなら、ギャングたち』 高橋源一郎
    『方丈記』 鴨長明
    『若き日の山』 串田孫一
    『犬が星見た』 武田百合子
    『夕べの雲』 庄野潤三
    『ビニール傘』 岸政彦
    『津軽』 太宰治
    『門』 夏目漱石
    『芝生の復讐』 リチャード・ブローティガン
    『ホテル・ニューハンプシャー』 ジョン・アーヴィング
    『細雪』 谷崎潤一郎
    『声めぐり』『異なり記念日』 齋藤陽道
    『モモ』 ミヒャエル・エンデ
    あとがき nakaban



    圧倒的な自然のなかに、一人の人間として自らの存在をさらすとき、人は謙虚にならざるをえない。そうして自分の小ささを正確に見つめるからこそ、その極限の状況で得たことばにはいのちが吹き込まれ、ときを超えて読むものの胸を打つのであるp14

  • さらに読みたい本が見つかってうれしい。

  • ベルリンで、北海道で……日常の慌ただしさを離れた旅のなかから生まれた詩篇は、確かにそこの場所と結びついている。しかしそれは同時に世界のどこにでも存在するような、ありふれてはいるが特別な瞬間として、読む人のいるところまでやってくる。(p.28)

    クレーはまた、我々がどれほどその絵を理解しようと努めたとしても、常に理解の外側に存在する。『造形思考』を読むあいだは「なるほど、そんなものか」と、絵の秘密を解いたかのように納得しても、改めて作品を眺めてみた時、その絵はいつの間にか遠ざかっており、逃げられてしまったかのようにも感じるのである。
    一方、作品を鑑賞する側にとっても、最も大切なのは、時間である。肉眼は時間を追うように作られている。目は作品の各部分を順次にじっと見ていく。(p.57)

    目のまえにある茶色の机、歩道のアスファルト、新緑のけやき並木……。Nakabanさんによれば、周りに存在するどんなものにも、多かれ少なかれ「青」が溶け込んでいるという。画家のヴィジョンに沿って世界を眺めると、目のまえの空間が青も濃淡でできたモノの速なりに見えてくる。(p.138)

    ゲーテは『色彩論』のなかで、単純な原色の組み合わせを「現実的満足に最も近いところにある」としながらも、「貧相」であると喝破した。確かに原色はわかりやすく合理的ではあるが、何かの心情を託すにはどこか子どもっぽい色でもある。複雑な人間の心情に訴えるのは、それが混ぜ合わされたものであれ、並列に置かれたものであれ、色彩の割り切れない組み合わせに秘密があるのだろう。(p.139)

    『さようなら、ギャングたち』にあるのは、俗にポップでポストモダンと評された軽いことばではなく、絶望から生まれて肉体を伴ったことば、もどかしさから生まれた不器用なことばだ。その断絶を超えた飛躍は、涙を誘う。(p.185)

     これまで数多くの人にインタビューし、そのライフヒストリーを聞きとってきた岸の小説には、無数の声ならぬ声がこだましている。『ビニール傘』は、それまで岸が聞きとった様々な人生に押されるようにして、この世界に生まれ落ちた小説にも思える。それぞれ交わることのない孤独な声が、プリズムのようにお互いを照らしている姿は、現代の社会に惹かれた見えない境界線を指し示すかのようでもある。(p.214)

     漱石は、人生の暗がりにいるときに、読むのがいい。調子がよいときには見えてこない人の世の情景があり、後ろ向きになりながらも前に進む遠まわりの諧謔がある。
     そのような漱石の小説のなかでも『門』は、「都会の片隅で、お互いだけを見つめながら、ひっそりと暮らす夫婦がいる」ことが、特に印象に残る作品である。(p.225)

     円形劇場の下に座っていたモモは、人の話を聞くだけで、特に自分から何かを語りかけるわけではなかった。しかしその存在自体が自然と相手に働きかけ、出会った人をゆっくりと、その人自身へ帰していった。
    本屋に入ってきた人もまた、店にある本を眺め、手に取るうちに、次第にその人自身へと帰っていく。話しながら店に入ってきた友人同士も、並んでいる本を前にすると、口をつぐみそれぞれ思い思いに好きな本を手に取りはじめる。そうした日常からは解き放たれた場所を整えておくことが、本屋の店主としての仕事でもある。「本屋にいるときくらい時間をひとりじめして、素のままの自分で過ごしてもよいではないか」。次第に真剣になっていく人の表情を眺めながら、いつものようにそう思った。(p.258)

  • 20190128 本を読んで景色を想像したことはなかったので、なかぼんさんの絵と内容の結びつきを理解するためいくつかは本を読んでみた。新しい本の読み方に会えた気がする。

  • 本の紹介と絵で構成される。
    本の紹介は幅広く、読まれ方も、感じたこと思い浮かべた事が素直に綴られているようで、読みやすい。
    挿入されている絵も印象的でずっと眺めいたくなる。
    読みたい本にいくつも出会った。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

辻山良雄(著)
1972年兵庫県生まれ。書店「リブロ」勤務を経て、2016年1月、東京・荻窪に本屋と
カフェとギャラリーの店「Title」をオープン。新聞や雑誌などでの書評、カフェや美術館の
ブックセレクションも手掛ける。
著書に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

「2019年 『ことばの生まれる景色』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻山良雄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
森見 登美彦
恩田 陸
朝井 リョウ
トーン・テレヘン
西 加奈子
三浦 しをん
阿久津隆
辻村 深月
佐藤 雅彦
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×