- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904816288
感想・レビュー・書評
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頭が痛いが文字が読みたいということで4年寝かせた本書に出てきてもらった。好きな作家の好きな文章を読み返そう、きっと見覚えのある随筆なんかが載っているんだろう、くらいの気持ちでいた。
本書には、庄野潤三の娘さん息子さんが父の想い出を寄せている。作家にかんして見方が変わるような新事実が明らかになるわけではないが、長女の今村夏子さんによると、やはりと言うべきか、要介護度5であってすら、作家は一家を率いていた。これは庄野潤三らしさなのか家族が庄野潤三の私小説を生きているのか、そこに選択の余地はあったのか。愛読者として、創作者の家族であることで彼らが選べない生き方を強いられていなかったことを祈る。ベクトルは違うけど、庄野潤三は島尾敏雄と親しかった人ではあるのだ。
「作家案内がついてるんだ便利だな!」とぼんやりしていたけれど、帯文に「作家案内」とあり、案内が主役だった。これから読んでいこうという人には便利。ひとしきり読んだあとでいろいろ忘れている自分にとっても、読み返す一冊を選ぶ参考になりそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭、庄野潤三が暮らした家の写真を眺めていると心休まる。緑のなかの家の静かなたたずまい。かつては賑やかだったのだろう。
文筆家や家族の書いた文章から作家のことが少しずつ見えてくる。庄野が描いた子どもたちのスケッチに和む。何かに熱中している様子などをよくとらえている。後ろの方に収録されている「年譜のかわりに」は、著作から数行を抜粋して構成されており、人となりや人生が感じられる。これは作家がまとめたものだろうか。
4人が分担して書いた全著作案内からは、気になる作品がいくつも見つかった。『うさぎのミミリー』を見つけたとき、ある記憶がよみがえった。何かの新刊案内を見ていて、そのときはへんなタイトルだなぁ、と思って素通りしたのだった。
単行本未収録作品「青葉の草」を最後に読んだ。人生の美しいもの、佳きものに焦点をあてて書き続けた作家の眼は、人間の暗い面も見つめていた。
幕の内弁当みたいに、いきとどいたガイドブック。 -
理想的暮らしの中での執筆と、同業者の関わり、家族の成長がとてもよく描かれていました。
お山のおうちにおじゃましたい気持ちです。
本によって、行けない場所に招いてくれるすばらしさをしみじみ感じた一冊です。 -
庄野潤三さんの本。山の上の家、家族との日々、作家について。人となりも文章も写真もスケッチも滲み出ているものがとても温かく心地いい。とても素敵な本だった。
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作家 庄野潤三を愛する夏葉社さんが作っただけあって、作品はもとより、創作の現場、生い立ち、晩年の様子まで、愛をもって紹介されている。
『プールサイド小景』『夕べの雲』など数冊は庄野作品を読んでからの方が、楽しめる。
全作品案内など、奥深い庄野作品の世界へのガイドとしても素晴らしい本。 -
庄野潤三熱が高まること間違いなし。