- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907986216
作品紹介・あらすじ
多和田葉子さん推薦!
国際的な作家であり翻訳家、そして世界文学のしたたかな読み手である著者が、本を読むことによって「ラングザマー(もっとゆっくり)」とした時間の回復を試みる、極上の世界文学ガイド/読書論。本書が著者の単行本としては本邦初訳。
いま、わたしたちを取り巻くこの世界から脱出し、本のなかを流れる時間に身を委ねて、まだ見ぬもうひとつの日常、もうひとつの風景へ——。
感想・レビュー・書評
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著者はスロヴェニア生まれのスイス国籍で、ドイツ語で創作するが母語はハンガリー語、フランス/ロシア文学者でもある作家。9篇のエッセイの中で、著者はまるで散歩でもするような自在さをもって、ブロツキーやプルースト、ハントケのテクストや、彼女自身の記憶の風景を自在にたどる。そして、急速に加速を続ける現代においても、人は読書によって自分の内的時間を豊かにし充足した生を生きることができる、と繰り返し説く。
効率とスピードが重視される社会では、「老い」は負の現象として、また避けるべきものとして扱われる。著者はそれに対して次のように応じている。
“自然な衰退が正当なものとなってゆく時間。眠気と不完全さ。年老いた身体のなかで美しい魂のことに心をくだく時間。その魂の経験と一回性。遺伝子技術がより優れた長い命を約束するとしても、根本的な責任は依然として一人ひとりのうちにある。この唯一の生をただ一つの仕方で作り上げてゆくという責任は。ドゥー・イット・ユア・ウェイ。”(p.109-110「六、タイムアウト(老い)」)
能動的に立ち止まること、本を読むとき自分の中に起こる変化に耳を傾けること、などを心に書き留めた。タイトルはドイツ語langsam(ゆっくり)の比較級形。(2012) -
文学