政宗の遺言

著者 :
  • エイチアンドアイ
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908110085

感想・レビュー・書評

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  • 政宗の生き方に心を打たれる。そして先祖代々黒脛巾組として活躍していた小姓鉄五郎の無知だった伊達家の内情を語り部から聞くことによって政宗の心情に寄り添いそして考えて行動していく成長する姿。現在と過去の同時進行で話は進んでいく。政宗の家を守るために病身を押して参府し、幕府にへりくだる。過去では考えられない行動に胸が痛む。そして幕府に伊達家を売った鉄五郎の父親。語り部の政宗の母親が政宗に毒を盛ったと伝えられているが本当はお家騒動を避けるために母子で謀ったのだとこの本では述べている

  • 伝承仕立ての裏話集みたいな感じ。
    新鮮でなかなか楽しめた。

  • 政宗は役者だった

  • 岩井三四二「政宗の遺言」 仙台市
    話されているのは伊達家の運命か、あるいは天下の一大事か。
    2022/9/10付日本経済新聞 夕刊
    「独眼竜」で知られる伊達政宗は人気が高い戦国武将の一人だ。戦いに明け暮れた若いころの活躍が有名だが、数え37歳で江戸幕府が成立したため、70歳で亡くなるまで人生の半分近くを徳川の世で生きている。本書は晩年の政宗を、そば近くに仕える小姓の目で描いた歴史小説だ。

    3月の地震で傾いた伊達政宗騎馬像は修復作業中。実寸大の写真が代わりに置かれ、発展する仙台の街を見つめる=小園雅之撮影
    3月の地震で傾いた伊達政宗騎馬像は修復作業中。実寸大の写真が代わりに置かれ、発展する仙台の街を見つめる=小園雅之撮影

    政宗が築いた仙台城(青葉城)の跡を訪ねた。本丸の標高が100メートルを超える山城だ。まず、山の麓の小道から断崖を見上げた。ここを登って本丸を攻めるのは無理だと一目でわかる。

    登城ルートに沿って山道を登る。「主城である青葉城は山城ゆえ上り下りがきつい」と小説に書かれているように、坂道の勾配は急で息切れする。晩年の政宗が郊外に若林城を築き、居所を移したことも納得した。


    本丸跡に着いた。有名な伊達政宗騎馬像は修復中で見られなかったが、ここから見渡す仙台市の景色は素晴らしい。高層ビルや海が見える。

    政宗は天守閣を造らなかった。城の象徴は豪壮華麗な大広間だ。畳敷き部分だけで約260畳もあった。大広間跡には建物の礎石が置かれ、広さを実感できる。近くの仙台城見聞館に入ると、政宗が座った上段の間の一部が再現されていた。鳳凰(ほうおう)が描かれた障壁画は美しく、政宗の桃山文化への憧れを感じた。

    小説で描かれる晩年の政宗は苦悩に満ちている。幕府への警戒心は消えず、病をおして江戸に最後の参勤の旅に出る。その途中で主人公の小姓、瀬尾鉄五郎は古老から政宗の若いころの活躍と野望を聞き、幕府と微妙な力関係にある仙台藩の危うさを知る。そして、政宗がスペイン・ローマなどに派遣した「慶長遣欧使節」に関する秘密を知る。

    実際の政宗と幕府との関係はどうだったのか。仙台市博物館学芸員の黒田風花さんは「仙台に構えた若林城という隠居屋敷に移りながら、死の間際まで江戸に参勤して藩主としての務めを果たそうとする政宗の行動は矛盾しているように見えるが、当時は現代と隠居の概念が異なる。戦国時代には、隠居後も子とともに政治活動を行うことは珍しくなかった」と説明する。慶長遣欧使節の目的も「幕府の使節派遣計画を継承する面があり、幕府公認の事業だった。ローマ教皇宛ての政宗の親書には、仙台藩への宣教師派遣と当時スペイン領だったメキシコとの通交を願う旨などが記されている」。

    政宗は鷹狩(たかがり)を好み、和歌や漢詩も詠む文化人だった。徳川の世が続く中で、領国の繁栄と領民の幸福を願う大名へと成熟したのだろうと、広大な仙台城跡を歩きながら思った。

    (兼吉毅)


    いわい・みよじ(1958~) 岐阜県生まれ。一橋大卒。96年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年「簒奪(さんだつ)者」で歴史群像大賞、2003年「月ノ浦惣(そう)庄公事置書」で松本清張賞、04年「村を助くは誰ぞ」で歴史文学賞、08年「清佑、ただいま在庄」で中山義秀文学賞。

    「政宗の遺言」は18年刊行。伊達政宗の最後の江戸参勤と若いころの戦いの日々を重層的に描く。巻末に挙げた参考図書は10冊を超え、歴史資料を丹念に調べて執筆したことがわかる。弟小次郎の死因、母親との関係、慶長遣欧使節の真の目的といった政宗に関して度々話題になる謎についても、作者独特の歴史観で真相に迫る。(作品の引用はエイチアンドアイ刊)

  •  時は寛永13年。
     江戸に幕府が開かれて33年、大坂の陣を経て、戦乱が終焉を迎えてからも20年以上が経過した、太平の世。
     最後の雄と呼ばれた戦国武将、伊達政宗の最晩年を描いた歴史小説。
     若くして南奥州を傘下に収め、 豊臣秀吉・徳川家康ら天下人に下りながらも、知略を駆使して渡り合い、伊達家を存続させて生き延びた男の、戦と政治に明け暮れた生涯を、語り部の老人が新参の小姓に語る形でもって振り返る。
     病身を押して江戸へ赴き、最後の参勤を果たす政宗の真意を巡り、周囲は戸惑い、幕府側の思惑が跋扈する。
     天下へ挑み、能役者の如き『荒ぶる大名』の面(おもて)を果敢に演じ抜き、紙一重の大芝居を打った政宗の意地を、愛惜をもって慕う小姓の叙述は、おそらくは著者の心情であり、読者の共感をも呼ぶものだろう。
     終盤は、敵味方が入り乱れる家中にあって、臨終に瀕した「最後の戦国武将」の胸中に飛来した真情が、ミステリ風味に明かされる。
     謎解きについては、三代将軍・家光との密談、小姓仲間の死など、細部では明快な解が提示されないが、傍証として薄らと想像させる裁量にある。
     政宗から父・輝宗への本音、母・義姫への慕情、実弟・小次郎の生存説を絡めての怒涛の畳み掛けは、胸に迫るものがある。

  • それなりに面白いが作品内の昔話のくだりが少々飽きる。最後の結末もあっという事もない。

  • 伊達政宗の死期が迫る。  徳川家光に永の暇乞いをするために江戸へと向かう。  政宗と肉親、幕府との微妙な関係を様々なエピソードを絡めつつ物語は進む。 はたして、政宗の遺言とはなんだったのか? 全体的に小粒にまとまった物語。 伊達政宗好きには物足りないかもしれないです。

  • 政宗の物語をストーリーテラーに語らせる。
    昔語り。
    「そうだったかもしれない」と思わせる。

  • 年齢を重ね、死を間近にした伊達政宗。語り部から政宗の生涯を聞いていく小姓。最後に発した政宗の一言により、その英雄の真の姿を見る。

    面白い。弟の小次郎は実は生きていた、との話は、事実みたいですね。母は毒を盛り、政宗は弟を殺したわけでなく、小次郎を擁立した一派により、家中が混乱することを防止するためだったのですね。
    政宗の生き方、考えに感動しました。

  • 途中までは史実のなぞり返しかと思ったけど、終盤思いがけない展開に。
    推理小説のようなストーリーで楽しむことができた。

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著者プロフィール

1958年岐阜県生まれ。一橋大学卒業。1996年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年『簒奪者』で歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で松本清張賞、04年『村を助くは誰ぞ』で歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で中山義秀賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で本屋が選ぶ時代小説大賞2014をそれぞれ受賞。『太閤の巨いなる遺命』『天下を計る』『情け深くあれ』など著書多数。

「2017年 『絢爛たる奔流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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