株式会社化する日本 (詩想社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908170195

作品紹介・あらすじ

私たちはいつから、株式会社・日本の従業員になったのか!?
人々に蔓延する従業員マインドと急速に劣化する政治、
グローバル資本主義の末路、対米自立の幻想と蹉跌……
すべてが株式会社化する「平成」という特異な時代の
実像から日本の深層部を明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 20年間、地元の区民プールで泳いでいます。
    定点観測すると、ずいぶん変わったなと思います。

    施設は、割ときれいに保っています。
    管理会社が、区から契約を
    切られないために、
    サービスレベルをよくし
    、低賃金で、従業員を雇い、
    膨大な数のチェックリストを作り、業務を行っているからです。

    以前は、よくプール内で、知らぬ人と、世間話をしていましたが、
    今はなくなりました。
    一心不乱に、そう何かにとりつかれたように、
    ぐるぐると泳いでいる人が増えました。

    きっと「決められたメニュー」があるんだと思います。
    そうすると、「カラダに良い」のだと思います。
    ただ、以前は、「そのように、考える人」は、あまりいませんでした。
    プールの場に、社交が必ずありました。
    今、かつてあって、「最近、どうですか?」的な、たわいのない話しをする機会は、
    ありません。どうしちゃったんでしょうか。

    1985年の時と、2017年の人口動態を調べてみました。
    バブルから、最近までです。
    個人的に社会の変化と、人口動態というのは、どういう教育を施しているかとか、
    GDP・経済成長、鉱業生産指数うんぬんか同じぐらい質量、定量関わらず、
    重要な指標だと思っています。

    1985年時、15歳から39歳の人口は4476万(全人口の37%)
    2017年時だと、3260万(30.5%)です。たった30年で、
    全人口に占める若い人が6.5%減っています。

    なんだ、6.5%かと思うかもしれませんが、
    人数にしたら東京都と約同じ規模です。

    では、高齢者(65歳以上)はというと、
    1985年時で1247万(10.3%)、2017年時では3515万(27.7%)です。
    全人口に占める高齢者の割合は3倍になっています。
    人数にして約東京都2つ分の高齢者が生まれています(正確には、
    かつての生産人口が、高齢者人口へと移行しています)。

    そして、労働生産人口(15歳~64歳)は、この30年で657万人減っています。
    一年当たり20万人以上です。
    この数字は、現在から将来へは、毎年、倍以上、確実に増加します。

    たった30年で、ここまで人口構造が激変している国(高齢者と若い人の割合変化)は、
    。だって、高齢者が3倍になっていますから。この変化は、特筆すべきものがあります。

    2040年の人口推移をみると(仮に出生数を1.25とすると)、
    高齢者は3912万(36.2%)になります。
    労働生産人口を見ると、1985年時の7割になり、2400万減ります。
    100人の村に表すと、70人が働いていたのに、いつしか50人になったということです。
    どう考えても、社会に活力が失われます。
    毎年、毎年政令指定都市レベルの労働者数が、減っていっています。

    労働者が減っていき、高齢者が多くなると、社会は必然と保守的になります。
    イノベーションと呼ばれる考え方、技術も生まれにくくなります。
    また、それを受け入れる融通さが、社会になくなります。
    ためしにノーベル賞受賞者の受賞時の年齢ではなく、
    成果としての研究発表時の年齢を見ても、それは明らかです。

    株式会社化する日本とは、言ってみれば、こういった激変している日本社会の一つの兆候だと思います。
    一言でいえば、組織の存続を優先して、個人の自由、尊厳を犠牲にする社会への
    回帰です。回帰というのは、たぶん、徳川時代の藩体制の社会に戻るんじゃないかというのは、
    自分の予測です。主君のために全てをささげるじゃありませんが、
    組織のために、、、云々になります。また、それに属さない、属せない人は、
    ゴミとして扱われます(今も、その傾向は強い)。
    それは、高度経済成長時の、昭和と同じじゃない
    かといわれますが、決定的な違いは、
    その当時は、組織は、拡大していきました。
    今後は、拡大ではなく、維持と存続です。
    そのために、個人は、あらゆる犠牲を被るようになると思います。

    今、この社会から生きる力を失い脱落していっている人が、たくさん出現していっています。
    また、精神を病み、他人を蹴落とすしか、組織に残れないと思っている人が、多くなってきています。
    なぜなら、組織を維持するにも、組織を維持するための、利益が必要だからです。
    つまり、膨大なコストがかかるので、誰かが犠牲にならないといけません。
    株式会社というのは、半永久的に存続するには、利益を出し続けないと、死んでしまうものです。
    ただ、利益を出すのは、どんどん難しくなっています。
    こういった社会に誰がしたんだ!と嘆いても、始まりません。
    ただ、自分達自身が、株式会社のような思考をするようになってきています。
    生活の隅々まで、やれコスパや、メリット、デメリット、利益になるか、ならないか
    です。

    こういった思考法というのは、かなり独特です。
    百害あって一利なしです。
    それなのに、一番合理的だと思ってしまうなぜでしょう。
    不思議で仕方ありません。

  •  鳩山由紀夫を批判する連中が湧くと思うが実際本人と直に話してみればそう間違ったことはやってないんだろうと感じるようになってきた。

     それは現政権においても同じことであり右・左がともに共闘する時代が来なければ、グローバル社会というだけで日本にとっての成果はないに等しい物だろう。

     ここがおそらく理解できないのかもしれない。今の世界は自己中心派が増えすぎてしまいどうやるにも国家のためひいては国民のためというレベルにまでj引き上げられないでいる。

     それを打破するための力はおそらく未来永劫出てこないだろう。

  • 読了。面白かった。今は明るくないが、未来は明るくできる気になる。

  • 日本がアメリカの属国である、というのは内田樹氏だけじゃなく、映画『シン・ゴジラ』でも描かれるくらい言われるようになったなぁと思ったものだけど。日本を支配するというくらい大きな権力を握っているのはアメリカというより米軍。それを可能にしていいるのはその権力をかさに自分たちに利益を誘導する人たちがいるから。一方、アメリカはアメリカで軍事産業が国の指針に大きく影響を与えているという話も出ていた。支配の構造とは、簡単には解けない。そういう中で、一般庶民たる自分は、どう生きていったらいいのかねぇ。鳩山氏は評判悪かったけど、読んでみるとけっこう興味深い話を聞けたと思う。

  • 鳩山由紀夫さんの印象が全く違うものになった。

    複雑なことを丁寧に思考すると、その答えは案外シンプルになる。しかし逆にシンプルな答えのみからその思考過程を十全に理解することは不可能だと思う。つまり何が言いたいかと言うと、スピードや結論だけでは決して届かない領域があるということだ。結果に対して責任を持つためには相応の熟慮が必要なのだ。

    株式会社はその本質に結果やスピードがある。それはすべてに適応できる価値観ではないし、国はそうであってはならない。

  • 良質な議論が展開されている。鳩山内閣が「やろうとしたこと」はもっと評価されていいはず。

  • 今後の展望はともかくとして、現状分析にはなるほどと思うことが多かった。
    過度に費用対効果の考えを適応したことでおかしくなった分野は多いと思う。

    本書には直接関係ないけど、
    最近までいた大学院の株式化として考えると
    教授は大学院生の研究はほぼ把握しておらず、学会での評価ばかり気にしてひたすら雑用をこなしており、
    評価も学生の研究を内容ではなく外部評価(IF)の点数で評価するようになっている
    外部評価ばかりを気にするトップとそのトップによる規律順守という圧力がみるみる進行して、肝心の研究内容に一貫性が乏しく、結果が出そうなとこに飛びついていると感じる
    こうした変化が旧帝大ほど強いのがまた日本的であると思う

  • 19/03/18。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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