肩をすくめるアトラス 第二部 二者択一

制作 : デザイン 中三川基 
  • アトランティス
4.22
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本棚登録 : 327
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (594ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908222023

感想・レビュー・書評

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  • 第2巻では、アイン・ランドの世界観がより鮮明に登場人物達によって語られます。
    「人間の絆は苦悩の交換では無く、良いものの交換だという認識」
    「征服による財産が亡くなり仕事による財産だけになり、最も高邁な種類の人間、Self made manが出現した」
    「世界を肩で支える巨人のアトラスが、努力すれば努力するほど世界が肩に重くのしかかってくるとしたら、肩をすくめろと言います」
    「街は人間の勇気、最初に鋲や発電機のひとつひとつを考えて、実際につくりあげたものたちの勇気の結晶だ」
    「アメリカは、通貨が人間のおのれの頭脳、労働、人生、幸福、自分自身への厭離の象徴である史上唯一の国です」
    成功と富は神の恩寵、というプロテスタントの信条と相通ずる思想を感じました。この本を読んでいると、ダグニー、ヘンリーやフランシスコといった主要登場人物たちは、孤高で屹立していて、彼らの心象風景に共感することは難しいと感じます。しかし正にそれこそランドの狙うところなのでしょうか。彼らはアトラス達なのですから。

  • 第1部に感想は記載したが、とにかく長いことと、思想的な部分は演説的で、ストーリーはあまり出来のよくない小説にすぎないことから、読書体験としてはイマイチであることは皆指摘の通り。ただこれ読むのはマストなんですよ、私の世界では。

  • アメリカでは聖書の次に読まれているというアインランドですが、なぜか日本での知名度は今ひとつ。私もつい最近知りました。さっそく読んでみようと思い書店に行き、書棚に見つけた本のなんと分厚いこと!! 弁当箱のような大きさに引いてしまい、興味はありつつも読み出せずにいました。そんな折、文庫での再出版。電車の中でも読めるようになったのを機に読み始めました。

    読みやすくなったとはいえ全三巻、それぞれ550ページ、594ページ、768ページという大著、文字のポイントも通常の文庫本より小さめで、読み切るには相当の時間が必要です。また、アインランドの哲学を主人公のセリフとして話させているため、文章も難解で理解するためには相当の集中力と忍耐力も必要です。特に、第三部の第七章は相当腰を据えて読む必要があります。私はすべて読み終わるのに三週間を要しました。

    読み切った感想ですが・・・この本は必読の書であり、まさに今こそ読むべき本であると思います。

    彼女の思想はいわゆるリバタリアンや新自由主義の精神的支柱になったと言われています。事実、そういう陣営の主要人物の多くが、アインランドからの影響を語っています。ただ、彼女は明確にリバタリアンを否定していますし、無政府主義も否定しています。彼女のメッセージはいわゆるレッセフェールではなく、『出る杭を打つな』であり、すぐれた才能を持った人物たちの創造性を最大限活かすことが人類全体の幸福につながるのだということを訴えているように私には思えます。それにしても、その度合いが極端すぎる印象を受けるのは、彼女の故郷であるロシアが共産主義化していく過程を見届けた影響もあるのではないでしょうか。

    ただ、この小説が書かれていた頃は、まだまだ世界全体が発展途上であり、能力や志を持っていた人たちの多くがその才能を発揮したのは、社会のインフラ整備など、社会全体が大きな恩恵を被る分野においてでした。たとえ、『実業家』や『産業資本家』が利己的にしか行動しなかったとしても、彼らの目的と社会全体の利益が一致する時代でした。

    さて、現代はどうでしょう。能力、才覚を持った人間たちの多くが向かうのはマネー資本主義。実物の紙幣や硬貨すら動かない、電脳空間のみでのやり取り。物質的なものは何も生み出さず、いわゆるトリクルダウンも生まない、勝者のみが潤う、まさに1%-99%の世界。この現状を見て、アインランドはどう思うのか、非常に興味があります。

    何にしても、賛否が大きく分かれる書籍であることは間違いありません。日本での知名度が低いのは、いわゆる『日本的』な感覚からは受け入れることが難しい思想なのでしょう。ですが、この機会にぜひ一読されることをおすすめします。

  • 金はいかなる破廉恥な行為、蛮行とも折り合いをつけることができない。折り合いがついているように見えるなら前提を疑うべし。

    株価が上がっているのに給料が増えないなら前提を疑うべし。

    経済学の原則が成立していないと思うなら前提を疑うべし。

    今の大企業を頂点とする日本型格差社会は不健全な格差社会と考える。アメリカ型格差社会の健全性を再認識した。

    昭和型ビジネスモデルの元で成功した大企業サラリーマンに富が偏在する今の状況は何としても打開しなければならない。それができないのなら大企業は門戸を広げるべきである。

    日本では大企業の正社員が派遣社員に奴隷労働をさせ、そのうえ派遣社員に無能の烙印を押している。(派遣社員の善意によって彼らの地位が保たれていることを無視して)

  • 壮大なテーマに挑んでいるがとにかく長くて冗長。第3巻に続く。

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著者プロフィール

アメリカの作家、思想家。サンクト・ペテルブルク生まれ。1926年アメリカに単身亡命。『われら生きるもの』(1936年)で小説家デビュー。個人主義と全体主義の対立を描く長編ロマンス『水源』(1943年)がベストセラーになり、名声を確立。資本主義の道徳性を示す長編SFミステリー『肩をすくめるアトラス』(1957年)は現在までに23カ国語に翻訳され、累計販売部数は880万に達する。オブジェクティビズム(客観主義)哲学を創出し、小説やエッセイを通じて表現して自らそれを実践し続けた。その独自の思想はアメリカを中心にして世界中に広まり、リバタリアニズムと呼ばれる自由至上主義運動にも多大な影響を及ぼしている(ただしアイン・ランド自身はリバタリアニズムを完全否定し、自らの思想と同一視されることを拒絶した)。

「2021年 『SELFISHNESS(セルフィッシュネス) ―― 自分の価値を実現する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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