- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909394590
感想・レビュー・書評
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文七元結の話は、「利他」を語る上で男性にはいい例なんだろうなと思う。(時代もあろうが、娘を売り飛ばすって、本当に本当に、人間としてどうですかって話なんですが…。)そこを時代性もあるだろうということにして差し引いて読んだ。(よくある話なんだ…よね)
なぜ、ポンと50両渡してしまったのか。
文七元結の話は近代人の私たちから見ると、気持ち悪い話なのだ。どう考えても、50両渡すことの正当性が見つからないのだ。だから、立川談志は、探した。業なのか、「利他」なのか、「キップ」なのか?
(それは、「軽薄」でしょ、想像力の欠如でしょと私は言いたい。)
立川談志が、そうは言っても、娘が売り飛ばされるんだぞ、なんでだ?安易に結論出したくないぞと考え続けたのは落語家として誠意があると思う。
(目立ちたがり屋で偉そうなイメージしかなかったが、人気の理由が少しわかった。)
この本によれば、考えることもなく「利他」の心は突然降ってくるから仕方ないってこと。この偶然性が超越的な力を生む…。
興味深い例ではあるし、話としては面白かったが、「利他」をわかりづらくしているように思った。
与格構文と中動態の話は興味深かった。
「中動態」は「利他」と相性がいい。向こうから降りてくる感情は、まさしく「中動態」といえるだろう。
そういえぼ、古文の文法も、「る」「らる」は元々は自発の助動詞であった。それが、受身の意味を持つようになり、さらに可能、尊敬の意味を持つようになる。
「思はる」「知らる」と言うように、知覚は「自発」的にやってきて受け取るものである。「る」「らる」を用いると中動態的な与格構文となる。私たちはそうと知らずに毎日使っているのだな。
しかし、「利他とは何か」の感想でも書いたが、親鸞に傾倒している作者は、一貫して「利他」は「利己」的であってはならないと主張する。そういう意味で、ジャック・アタリの合理的利他主義を批判する。
相手への支配はもちろんするべきではないだろう。ありがた迷惑もあるだろう。そういう意味で「利己」と「利他」を分けるのはもちろん賛成なのだが。
作者がいう「利他」行為を誰もがやれるのか?
この行為は、自分のためなのか、そうでないのかを、問いながらでないと、行動できないなら、誰も一歩を踏み出せないのではないか。
「利他」的な行為ができるのは、崇高な精神を持った人だけに限られてしまう。
資本主義社会における企業はSDGsなんて、何の利益にもならないのなら配慮するわけない。日本人はそれでなくても、(多分宗教的背景がないから)人のために何かをしたいという意識が低いというのに。(本田由紀「日本とはどういう国か」)
人間誰しも、褒められない面をたくさん抱えている。でも、全てが悪人なのではない。
自分のためにやるのさ、と嘯く隙くらい与えてあげなくてはいけないのじゃないかな。
自分のためかもしれないけど、やろかなって思ってもいいじゃないかと思う。
それから始めればいいではないかと、やはり思う。
合理的利他主義もやってるうちに、ホンモノになる場合もあるだろう。
巡り巡って、一体誰のためかわからなくなる可能性もあるだろう。
格差に立ちすくんでいる現状を突破するには、ジャック・アタリの提言は必要だと思うのだが。
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正直、よく分からなかった。次のアクションには繋げづらいかな、、
目的
┗利他とは何かを言語化すること。また、相手に負担を与えないような施しをできるようにするため。
エッセンス
┗自分はどうしようも無いと認識することが利他人の始まり。未来のことは分からない。与え手の側は、それが利他的行為かどうか決定することは出来ない。
有限なる人間にはどうすることもできない次元が存在する。そのことを深く認識したとき、他力が働くのです。
アクションプラン
┗毎日を一生懸命に生きる。自分には限界があることを認識した上で、無理しすぎず諦めることも大切。 -
ヒンディー語の与格という考え方も初めて知った概念で大きな学びになったし、「自分の行為の結果は所有できない」という考えがものすごく腑に落ちた。
ギフトには贈り物の側面と負債感という毒の側面があるというのもすごく納得できる。
あと第三者だけど、若松先生と中島先生の邂逅にはものすごく心動かされるものがあった。 -
利他を落語の『文七元結』を始めとする多様な視点から見つめて、最後にまた落語にもどる。
生き方が少し楽になる、一冊。 -
私が私であることの偶然性。
その偶然の自覚が他者への共感や寛容へとつながる。 -
タイトルに内容が全て集約されている。利他は意識的にやるものではない。意識的にやろうとするとどこかに偽善があるのかもしれないなぁ、なんて思った。
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「一体、何の本を読んだのだろう?」
哲学であり、宗教であり、歴史であり、自己である、私から見た世界を温かく見つめる。
不思議な読後感を伴う、心を穏やかにしてくれる書籍。
『ミシマ社』さんは、すごい企画だらけですな。 -
読みやすく書かれています。
与格の構造についての話はとても興味深く感心しつつ読みました。
文七元結については煎じ詰めれば「袖振り合うも多生の縁」と"思いがけず"「お節介」が発動した挙げ句の行動で後先なんて考えていない点では同じですが、他力が働いたというよりは、時と場合によっては余計なお世話になりかねない「お節介」が働いたと考えた方がしっくりくるのです。
まあ、言ってることは一理あると思うのですが、サゲはイマイチかな。