- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909483430
感想・レビュー・書評
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原題はi hate the internet。アメリカのサンフランシスコを舞台にタイトルどおりインターネットに対する恨みつらみが炸裂していてオモシロかった。一応小説という形を取ってはいるもののモキュメンタリーっぽいニュアンスがあり、たとえば登場人物の1人に著者自身を投影していたり、いきなり著者自身の文章で「ここに当初25章がありました」という題で延々と説明が続いたり。これに代表されるように話がとにかく横滑りしていって、あとがきにも書かれていたとおり本を読んでいるのにネットサーフィンしているかのような感覚になる。「くたばれ」と言いつつ愛が見え隠れしているような気もする。なによりもテック業界を中心とした実在の人物をこき下ろしまくっていて、そこが一番オモシロい。ただ単純にこき下ろすだけなら誰でもできると思うけど、主人公のアデレーンがネット社会に突入していく過程を描いていくことで自分を含めた多くの人が既に中毒状態となっているインターネットについて改めて距離を置いた視座を提供してくれている。とくにネット上での議論の不毛さの話が好きだった。そもそもサービスの成り立ちからして意味がない、つまりすべては広告ベースであり金になることしか考えていない土台の上で何かを議論すること自体に意味なんてない、という強い理論。(このことをネットで主張すると、それも1つの議論を産んでしまいミイラ取りがミイラになってしまうので難しい)結局オンラインで何かを行うことはプラットフォームにタダ乗りできているように見えて巧妙に搾取されていることに多くの人に気づいて欲しい願いが伝わってくる。とはいえ今の時代はこの本が書かれた2016年よりもさらにネットと現実社会の結びつきは強くなっているのでネットのない世界やネットを活用せずに生きるのは実質不可能だと思う。なので使う際の自分の節度が重要だと気づくことができたのはよかった。
またサンフランシスコの街の歴史にまつわる小説でもある。テック業界の発展に伴ったジェントフィケーションの話や急激な家賃/物価の上昇の背景を知ることができて勉強になった。実際、2018年に訪れたとき物価が高すぎてお昼ご飯食べるのもヒイヒイ言っていた一方で、街中には明らかに危ない場所もあるという矛盾に驚いた記憶がある。小説内で描かれている場所をググってみると通った場所だったりしたので、そこも含めて思い入れのある小説になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1ページに3回のペースで目に飛び込んでくる怒涛のパンチラインでインターネット及びSNS中毒へと至った我々現代人をタコ殴りにしてくる名作だが、真に恐るべきことはこの小説がトランプ大統領/イーロン・マスクCEOの出現前に執筆されていることだ。トランプやイーロンが訪れるまでもなく、インターネットは既に地獄だったということを嫌というほど再認識させられる。自分たちがここで繰り広げられている地獄の、そのまたさらに底が抜けたところに暮らしている事実に耐えかねた今こそインターネットをやめる好機!お前もブルースカイやマストドンとか言ってないでインターネットをやめて草花を愛でよう!
「貴様たちは、貴様たち自身の敵の作り上げた土俵の上で、ただ言葉だけを垂れ流しているクソ虫でしかない。貴様らはあの白人野郎どものために金を稼いでいるだけだぞ。貴様らがタンブルに嬉々として投稿している、差別主義で性同一性障害など身をもって体験することもなく、ホモも女も憎悪しているような父権主義者たちへの批判の一切も、結局はただタンブルを儲けさせているだけだ。貴様らのやっていることのすべては、自分たちが立ち向かっている、この不公平な経済システムをまさに維持している個人や会社を宣伝しているだけのことなのだ。」
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現代版の「時計仕掛けのオレンジ」のような主張なのか。
ITツールや現代の価値観について、批判が多く、何が言いたいのかわからなかった。
現代は単純な暴力ではなく、ネット上の言葉の暴力ということかな。 -
没頭からわずかで断念してしまった
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インターネットに潜り込んだ気持ちになる。作者にしてやられた。