世界牛魔人ーグローバル・ミノタウロス: 米国、欧州、そして世界経済のゆくえ

  • 那須里山舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909515049

作品紹介・あらすじ

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』『黒い匣』などベストセラー本の書き手であり、世界的反緊縮経済運動のリーダーのヤニス・バルファキスの思想的原点、待望の翻訳完成。

ブレイディみかこさん推薦!

世界を覆う陰鬱な空にバルファキスが描いて見せた「キャピタリズム歴史絵巻」
この炯眼は無視できない このリーダビリティには逆らえない

「バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ」(本書付録)では「コロナパンデミック危機は、2008年リーマン金融危機と切り離して考えることはできないーー2008年危機の延長線上で考えるべき」と、バルファキスは主張する。

なぜか?

世界資本主義史において、アメリカという帝国が世界中の富を吸い上げ、また、それを世界中に循環させる中で肥え太るという過去に存在したことのない存在つくりあげた。この存在をギリシア神話に登場する半人反牛怪人のミノタウロスにたとえて鋭利に分析する。

そのミノタウロスシステムが崩壊した2008年以後も、金融緩和により金融部門と実体経済の乖離が進み、極端な一部の人々に金融資本主義の利益が集中することにより、超格差拡大社会となっている。コロナ危機は、その状況を加速させたといえる。
資本主義は、金融資本主義がさらに「テクノ(産業)【封建主義】」へ変質している。

著者のヤニス・バルファキス氏は、経済学者・政治家で、金融危機後のギリシャ急進左派連合政権(チプラス政権)で財務大臣を務める。本書は、そのギリシャ金融危機を招いた根本原因である2008年の米国リーマンショックの経済史および経済理論的分析を中心に、アメリカという国家が、第二次大戦後の戦後世界史においてはたしてきた役割と意味を再考し、今後の、世界経済の展望を考察するものとなっている。
 戦後の政治・経済は、アメリカという国が世界中の利益を集め、それをもって、アメリカ国内を潤し、その消費された利益を世界中に回しながら肥え太っていくという構造になっていることを、バルファキスは、経済理論のみならず、ギリシャ神話や文学・哲学・サブカルチャーにいたるはばひろい表現を用いて分析している。ミノタウロスとは、ギリシャ神話に登場する怪獣だが、世界中の富を集積しているアメリカという国家をこの怪獣の存在にたとえている。現在の世界の富の偏在と格差・貧困の遠因、そして、コロナ後の社会がどうなるかの基本的視座を提供してくれる一冊と言える。

感想・レビュー・書評

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  • 出版状況クロニクル167(2022年3月1日~3月31日) - 出版・読書メモランダム
    「12.ノーム・チョムスキー+ロバート・ポーリン、聞き手クロニス・J・ポリクロニュー、早川健治訳『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』を読了した」
    https://odamitsuo.hatenablog.com/entry/2022/04/01/000000

    世界牛魔人ーグローバル・ミノタウロス ヤニス ・バルファキス(著) - 那須里山舎 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909515049

    那須里山舎 - 栃木県大田原市の地域密着の出版社 - ローカルな場所からローカルな価値を
    https://nasu-satoyamasya.com/

  • 世界経済に対する知識が無かったので読み進めるのに時間がかかった。

    難解な世界経済に関する説明を、ギリシャ神話に登場するミノタウロスの比喩を用いて説明している点が読み物としても楽しめた。

    簡単な説明をすると、

    米国の膨大な二重赤字(貿易赤字と財政赤字)が、世界の商品と資本の循環を完結させ、世界経済を安定させてきた。これが本書のいう「世界牛魔神」である。

    ウォール街はこの権力を濫用、世界中から流れこむ資本をもとに金融化と言う名の民間通貨の発行を可能としたが、サブプライムローンを初めとする質の悪い金融商品を混ぜ込んだCDO(合成金融商品)の崩壊と共に、世界経済を立て直す力も無くなってしまったというのが、2008年に起きた世界経済の崩壊の主要な原因の一つだということがわかった。

    経済に関する知識があったらもっと理解ができたのかなと思った。
    数年後、世界経済において2008年と同じような金融危機が懸念されるとなった場合(もうなっている??)に再読したい。

  • 【書誌情報】
    『世界牛魔人――グローバル・ミノタウロス 米国、欧州、そして世界経済のゆくえ』
    原書: The Global Minotaur America,Europe and the Future of the Global Economy (Zed Books, 3rd editon, 2015)
    著者:Γιάνης Βαρουφάκης (1961-)
    訳者:早川 健治(1989-)
    発行:栃木県;那須里山舎(2015年設立)
    四六判 縦188mm 横127mm 厚さ23mm
    重さ 400g
    400ページ 上製
    定価 2,400円+税
    978-4-909515-04-9

     世界的反緊縮経済運動のリーダー、ヤニス・バルファキスの思想的集大成、待望の翻訳完成。邦訳特典付録として、伝説の知識人ノーム・チョムスキーとの「ニューヨーク対談」、そして特別インタビュー「バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ」の二編を収録。ブレイディみかこさん推薦。
    [https://nasu-satoyamasya.com/]
    [https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909515049]

    【目次】
    目次
    序文       ポール・メイソン     
    改訂版への序文  ヤニス・バルファキス  
    謝辞                   
    推薦図書                 

    第一章 序論         
    第二章 未来の実験室     
    第三章 世界計画           
    第四章 世界牛魔人          
    第五章 魔獣の侍女たち        
    第六章 金融崩壊           
    第七章 侍女たちの逆襲        
    第八章 牛魔人の後世への遺産     
    第九章 牛魔人なき世界        
    後記                 
    原注
                     
    付録
    ニューヨーク対談――財政民主化への道 ヤニス・バルファキス×ノーム・チョムスキー 
    バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ ヤニス・バルファキス

    訳者から、読者のみなさまへ      
    『世界牛魔人』翻訳方針        
    索引                 

  • 序文 ポール・メイソン

    改訂版への序文 ヤニス・バルファキス

    グローバル・ミノタウロス
     第1章 序論
      覚醒の2008年
      なぜ悲劇は起きたのか 六通りの説明
       1 「制度全体が抱えるリスクへの理解が欠けていた。頭脳明晰な人々の想像力の欠如が主因だ」
       2 規制の虜
       3 抑制不能な欲望
       4 文化的起源
       5 有毒な理論
       6 制度的失敗
      視差的探究
      世界牛魔人の入場
       1・1 クレタ島の牛魔人

     第2章 未来の実験室
      二つの大躍進
      資本の時代におけるコンドルセの秘密
      成功の逆説と危機による贖罪
      賭け金の競上げ 崩壊、危機、そして金融の役割
      1929年金融崩壊
       2・1 1929年以前の危機
      ミダスが手捌きを失う 金本位制の崩壊
      二匹の子鬼 労働市場と通貨市場
       2・2 理性が期待に従うとき
      機械に宿る幽霊
      終幕 世界計画の培養

     第3章 世界計画
      千載一遇の好機
      ブレトン・ウッズ
      逸機
       3・1 黒字再循環装置 資本主義の必須条件
      零落国の蘇生
       3・2 世界計画の設計者
      マーシャル・プラン 欧州の米ドル化・ドイツの復興
      欧州連合と日本の奇跡
      世界計画の地政学的イデオロギー
      世界計画における米国国内政策
      結論 資本主義の黄金期

     第4章 世界牛魔人
      世界計画のアキレス腱
      綻ぶ世界計画
      空位期間 1970年代石油危機・スタグフレーション・金利上昇
      世界牛魔人
      世界牛魔人の四つの衆望
       1 準備通貨という地位
       2 エネルギー価格の上昇
       3 安価かつ生産的な労働
       4 地政学的権勢
      世にも不思議な世界黒字再循環装置(GSRM)
      結論 世界牛魔人の煌びやかな勝利

     第5章 魔獣の侍女たち
      牛魔人羨望
       5・1 侍女たちの正体
      買収への熱狂 ウォール街による形而上学的価値の創造
       5・2 希望的観測 合併買収が架空の価値を生むまで
      ヘッジとレバレッジ
      ウォルマート効果 「安売りのイデオロギー」がひらく過剰の時代への航路
       5・3 牛魔人に恋したウォルマート
      腐敗した住宅と有毒な現金 ウォール街が自前の民間通貨を発行する
      有毒な理論 第一部 均霑政治と供給側経済
       5・4 根圧蒸散効果
      有毒な理論 第二部 経済モデルが織り成す百花繚乱の幻想世界
      終幕 不吉な予兆

     第6章 金融崩壊
      積み木で遊ぶ
      予想通りの金融崩壊の年代記 信用収縮・救済・万物の国有化
       6・1 クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
      内実
      終幕 「破産主義社会」への転落

     第7章 侍女たちの逆襲
      ガイトナー・サマーズ計画 友の力を借りて
       7・1 失敗の報酬
      欧州版ガイトナー・サマーズ計画
      救いの手に噛み付く侍女 醜悪と無恥の極み
      捕食統治の再来・空虚なる経済学・市場原理主義の奇妙な悲劇
      終幕 一挙両損

     第8章 牛魔人の後世への遺産 沈みゆく太陽・手負いの虎・酔狂のエウローパ・焦燥の竜
      沈みゆく太陽 日本の失われし十年
      手負いの虎 日本、米国、そして東南アジア危機
      ドイツの欧州
      裸のドイツマルク
       8・1 エウローパの渡海
      ドイツ再統一の世界旋風
      始めは史実、お次は茶番 欧州の銀行救済
      ギリシア国民が負債を背負う
      登山家集団の転落とユーロ危機
      簡捷な危機解決方法と欧州の躊躇という謎
      竜の飛翔と焦燥
       8・2 米国の銀行役たち
      終幕 西洋の破産主義社会と東洋の儚い国力の狭間で

     第9章 牛魔人なき世界
      世界牛魔人仮説の概要
      牛魔人は死んだ! 米国二重赤字万歳!
      牛魔人なき米国
      量的緩和 複雑怪奇な希望的観測
      牛魔人なき欧州
      牛魔人なき中国

     後記
      歴史の担い手
      成功の落とし穴と自制心
      牛魔人に活路はあるのか
      途方に暮れる世界経済
      鍵となる装置の不在
      次なる冒険 歴史の新たな担い手を探す旅
    Zed Books「The Global Minotaur: America, Europe and the Future of the Global Economy」3rd revised edition 2015年7月

    付録
    ニューヨーク対談 財政民主化への道
    ヤニス・バルファキス×ノーム・チョムスキー

    バルファキスが語る、パンデミック以後の世界経済のゆくえ
    ヤニス・バルファキス

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著者プロフィール

ヤニス・バルファキス(著) 1961年ギリシャ生まれ。経済学者、政治家、現ギリシャ国会議員。英国、オーストラリア、米国などの大学で教鞭をとった後、2015年1月に成立したギリシャ急進左派連合政権(シリザ)のチプラス政権時において財務大臣を務める。その際の国際債権団(トロイカ)との債務減免交渉の過程は、邦訳『黒い匣――密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』(明石書店)に詳しい。財務大臣職を辞した後は、2016年から欧州草の根政治運動のDiEM25(Democracy in Europe Movement)のリーダーを務め、2018年には米国上院議員バーニー・サンダースらと共にプログレッシブ・インターナショナル(Progressive International)を立ち上げた。『黒い匣』以外の邦訳書に『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話』(ダイヤモンド社)『わたしたちを救う経済学――破綻したからこそ見える世界の真実』(Pヴァイン)、また、論文に「ヨーロッパを救うひとつのニューディール」(『「反緊縮!」宣言』<亜紀書房>)がある。ウェブサイト:www.yanisvaroufakis.eu/
  

「2021年 『世界牛魔人ーグローバル・ミノタウロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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