崩壊を加速させよ 「社会」が沈んで「世界」が浮上する

著者 :
  • 株式会社blueprint
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909852090

作品紹介・あらすじ

『リアルサウンド映画部』の人気連載『宮台真司の月刊映画時評』の書籍化第2弾(2010〜2020)。2018年に発売された前作『正義から享楽へー映画は近代の幻を暴くー』に続く本書では、連載のまとめに加え、書き下ろし原稿、黒沢清監督、ダースレイダーとの特別対談などを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 宮台真司さんの新刊。
    宮田節が全開の映画評論本。映画を扱った本としては3冊目。

    自分は宮台真司さんとジャーナリストの神保哲生さんが提供してる「マル激」を、もうかれこれ15年以上は見続けているので、宮台節には普段から慣れてる。宮台さん参加の様々なイベント動画も日常的に見てるし。

    慣れてない人にとっては、この本はかなり読みづらいだろうと思う。
    まぁ、映画評論だけでなく、宮台本はたいてい読みづらい。

    けど、それは気にせず読むべき。必ず得られるものがある。

    宮台さんは、このクソ社会の中で数少ない本物の「知識人(科学者)」だと思う。
    (ちなみに、相方の神保さんもマスゴミと呼ばれて久しい日本のジャーナリスト業界の中で、数少ない本物のジャーナリスト)

    宮台さんの「社会」を通して「世界」を観る視点は、普段接している人の中から感じることはない。宮台さんの社会評や政治評は自分の実感ともたいてい符号する。こんなに上手く言葉で表現できることに感嘆する。科学者とは本来こういう存在なのだろう。とは言え、この本でも過去の哲学者や社会学者の言葉が引用されるが、深い思考に根ざした言葉になるほどわかりづらくなる。宮台さんの言葉も大半はわかりづらい。

    だからこそ「映画」。
    言葉という「記号」を使ったわかりづらさを、映像や音という別の「記号」を使って「体感」させてくれるツール。

    私は昔から映画が大好きなので、この方法論は大変ありがたい。

    本を読んで宮台さんの思考はある程度追えたが、私の頭では理解不能な箇所も多々ある。その差分は、この本に挙げられたまだ観ていない映画を何度も観ることでゆっくり獲得していこうと思う。同時にまた本も再読しよう。

  • 現代人の「感情の劣化」=〈閉ざされ〉を問題とし、映画を真に体感することを通していかに「感情の回復」=〈開かれ〉を促すか。
    それを目的とした、2011年から2020年に公開された映画に関する宮田真司の批評を複数媒体から集めて構成した一冊。

    映画批評の本だとは知らずに手に取った私が読んだのは「まえがき」「あとがき」と「批評一本」のみ。
    それでも、宮台真司らしい表現と豊富な知識に基づいた批評は楽しめた。
    未読の方は目次に目を通して、鑑賞済みの映画があるかどうかで手に取るか決めるといいだろう。

    私が唯一読んだ批評はというと、目次の末尾に発見した「TENET テネット」だ。
    いつか観たいとリストしていた作品だったので、良い機会だと思い鑑賞することにした。
    これがなんとも難解な作品で自分だけでは消化しきれそうもなく、本書のおかげで更に楽しめたと感じている。

    ネット上のレビューもいくつか読んだが、謎解きに注目が集まっているきらいがあり特段の発見は無かった。
    その点、宮台真司は批評の冒頭で「学問を装った謎解きには意味はないことを断言します」としており、同じくクリストファー・ノーラン監督の作品「メメント」を引き合いに出し、世界観そのものに言及している。(核心のネタバレを含むので、メメントも鑑賞してからこの批評を読むことをオススメする。私は未鑑賞だったので現在記憶から遠ざけようと必死だ。)

    宮台真司によると「物語的思考」と「言語的理解」に傾斜した〈閉ざされ〉は、非日常的な映画体験による普段と違った感覚の〈開かれ〉を失わせている。
    私も映像作品はストーリーに重きをおいて鑑賞する質なので、知らず知らずのうちに〈閉ざされ〉ていたのかもしれない。
    思い返してみれば「エコール」や「グリーンマイル」など、強烈に印象に残っている作品はみな言外の魅力に溢れていた。
    私の中で映画鑑賞の魅力がより強くなるきっかけをくれた本書に感謝すると同時に、こう考えられるようになったことが〈開かれ〉への一歩かもしれない。
    たまたま手にした本書だが、面白い巡り合わせであった。

  • 先日、暴漢に襲われてしまった著者が去年出した映画評論本。宮台の映画評論は、持論を語るためのだしのようなもので、それはいいのですが、いままでの宮台節が更新されているかと言われれば返答に困ります。一貫しているといえば、そうなんですが。

    宮台真司も還暦を迎えたわけで、いまから新たな視点を披露するような年でもありません。暴漢に襲われたことを考えると、言ってることは変わらないけど世の中は変わってしまったのか、とも思います。

    彼の著書を久しぶりに読んだら宮台節が懐かく、そのへんも含めて良かったです。

  • 竹中平蔵が関わる広告会社スリードが提案した「B層狙い」、つまり低IQで騙し易い大衆層を狙った手法やオバマがスピーチに活用した「感情の押しボタン」等のマーケティング的詐術。ディープステイトやQアノン、地球平面説など、言語ゲーム的にも、自己体験不可能であり、仮説反証できぬ陰謀論。支配操作される文脈が蔓延する中で、宮台真司は、映画という表現手法に何を見出しているのか。

    正直言うと、誰かの創作物は、誰かの思考以上の物にはならないのであって、それを評論するならば、論述は既に評論家による別の創作となり、偶々それらが同じ感受性で一致する事はあっても、評論は常に勝手な思い込みに過ぎない。だから、論題のきっかけにはなるが、映画の評論はどこまでいっても、二次創作だ。

    二次創作においては、詐術を見抜いて本質を抉っているつもりで、その実、別の種類の詐術を撒き散らしている事になりはしないのか。詐術を抜きにした本質的表現とは。人心操作する為政者の腹の中を探る事と、映画の言いたい事を理解する事は同義に括れるだろうか。出発点の切れ味に対し、一つ一つの映画論評から得る事が難しい書であった。

  • つかみがまず最高だな

  • めちゃくちゃ面白い
    読み応えありすぎる

    ただ言いたいことはシンプルに見えたが、もっと深読み出来ていないだけかもしれない

    もう一度頭の体操のために読むか

  • 批評本。表現が心地よいものではありません。

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著者プロフィール

宮台真司:1959年宮城県生まれ。社会学者、映画評論家。東京都立大学教授。1993年からブルセラ、援助交際、オウム真理教などを論じる。著書に『まちづくりの哲学』(共著、2016年、ミネルヴァ書房)、『制服少女たちの選択』(1994年、講談社)、『終わりなき日常を生きろ』(1996年、筑摩書房)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(2014年、幻冬舎)など。インターネット放送局ビデオニュース・ドットコムでは、神保哲生とともに「マル激トーク・オン・ディマンド」のホストを務めている。

「2024年 『ルポ 日本異界地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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