団地のふたり

著者 :
  • U-NEXT
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910207322

作品紹介・あらすじ

話題書『じい散歩』の著者・藤野千夜の最新作。
五十歳を迎え、生家である団地に戻った幼馴染の二人、なっちゃん(桜井奈津子)とノエチ(太田野枝)。売れないイラストレーターのなっちゃんは今やフリマアプリでの売り上げが生計のメインで、ノエチは非常勤講師の仕事のストレスを日々友に吐き出す。保育園からの付き合いの二人がゆるく、のんびり毎日を過ごす。
友情をユーモアと温かさたっぷりに描いた傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 五十歳の、なっちゃんとノエチ。保育園からの付き合いで、紆余曲折あった後に生家の団地に戻り、毎日のように行き来する。
    団地は老朽化、住人は年寄りばかり。五十歳はまだまだ若い方で便利屋のような存在でもある。
    派手なことは起こらず、まったりした毎日だけど、二人の関係がとても羨ましい。
    「だいじょうぶ。ノエチのいいところも悪いところも、私、知ってるから」
    「同じ」

    そんな二人ももちろん喧嘩もするわけです。思いっきりバトルするわけではないけれど、2、3日顔を見せなくなるとか。でも、またフラっとやってきて、なんとなーくいつもと同じ会話をする。そして「これでたぶん今回の喧嘩は終了だ」と心の中で言ったりしてる。もう夫婦喧嘩じゃんwそれも長年連れ添ったw

    「あんた、ダメ人間か」
    「そうだよ、そんなの知ってるじゃん」
    理想の関係ですよね。

    なっちゃんはフリマアプリで品物を売っている。
    「世間でだれかひとりくらいは、興味を持って探しているかもしれない。ひとりだけいればいい。そのひとりに届けばいい。」
    人間関係も同じかもしれないですね。

  • 「だいじょうぶ。ノエチのいいところも悪いところも、私、知ってるから」
    奈津子とノエチ、共に50歳。幼い頃から同じ団地で育った幼馴染み。
    二人とも進学や就職、結婚などで一旦は別の道を歩むも、再び実家のある団地に戻り始終顔を合わせる仲に。

    気の合う女友だちと過ごす自由気ままな生活は、理想的で羨ましい。
    二人でちゃぶ台に向かい好きなご飯を分け合って食べたり、その日あった嫌なことも二人で一緒に嘆いたり、茶化して笑ったり。そんな風に全てをやり過ごしてお気楽に生きていく。
    時には喧嘩もするけれど、互いの距離のとり方も知り尽くしている仲良しの二人。
    日常をこんな風に気ままに過ごせて、何の気兼ねも要らず自然体で生きていける。理想の老後が約束されたも同然で、ほんと羨ましかった。

  • 実家の団地で暮らす幼なじみの2人。
    お互い50歳の独身で奈津子は、イラストレーターだが現在は、フリマアプリで生計を立てている。
    ノエチこと太田野枝は、非常勤講師である。

    奈津子の母が親戚の介護のため郷里に帰っていて、ほとんどひとり暮らしだが、週に3〜4はノエチが愚痴を吐き出しに来る。
    40年来の付き合いだからか、お互い言いたいことを言い、気取ったり、いい人ぶったりする必要もない。

    昭和の古い団地でいる2人は、近所のおばちゃんちの網戸を張り替えて、ピザをご馳走になり、ポチ袋に入った時給1000円を貰ってからその一件が、いつの間にか団地で広がり、女の人の単身世代ばかり三軒をちゃちゃっと直してしまった。
    凄いなこのネットワーク‼︎
    まぁ、古い団地だからこその付き合いと老人が多くなってきたことがあるのだろうが…。

    こういう何気ない出来事や奈津子のフリマアプリの売り上げ状況と本日のお買い物などを載せているゆる〜い感じがほっこりする。

    たまに険悪な雰囲気になってもちょっとしたきっかけで(子どもの頃亡くなった幼なじみの空ちゃんを思い出すこと)元に戻る。

    2人とも無理しない自然体なのが良いのかもしれない。

  • 装丁がぱっと見『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』にそっくりで、なんだか面白そうと思い手にした本。藤野千夜さんの本は初めて読んだ。東京の団地(烏山近くの設定)で育った幼馴染の奈津子とノエチが主人公。2人は紆余曲折ありながらも50歳の現在、団地に出戻っている。ノエチの両親は健在でノエチと同居、奈津子と同居する母親も元気で今は静岡の親類の家に介護応援に行っている。ノエチはしょっちゅう奈津子の家に上がり、だべったり、ご飯を食べたり、のんびり過ごすのだ。40年以上の付き合いで全く遠慮のない二人の間柄は、読んでいる読者をもリラックスさせてくれる。団地の人々ものんびりぎすぎすしていないのが良い。食事内容やスーパーで買ったもの、その日の収入、支出が詳細に書かれているのも、よりリアルな生活感を演出し、団地が舞台ということも相まって、非常にまったりした雰囲気を味わえる。2人の職業もフリーのイラストレーターと大学の非常勤講師と絶妙。「こうであるべき」といった堅苦しい価値観を完全に覆し、こんな風に歳を重ねていったって良いんだな〜と肩の力を抜いてくれるような小説だった。とても癒された。

  • 50歳の奈津子とノエチが団地で暮らす長くてゆる~い友情物語。2人は結婚したが諸事情で生まれ育った団地に戻ってきた。離婚ということだが、そこまでの経緯に触れずさらっと流してあるのは読者の好み次第。断捨離のためにフリマアプリなどの設定は最近では良く描かれていて二番煎じに思えたが、顔なじみお年寄りの網戸張替えを手伝うなどほのぼのとした日常が語られる。
    以前に刊行された『じい散歩』よりは良かった。

  • 50歳独身の幼馴染。仲の良い女性ふたりの気楽で何気ない日常。

    エッセイならばリアルで小説なら物足りない。そんな空気感がまた心地よい。ありそうであまりないジャンル。

    取り壊しの噂もある団地にともに住んでいるいうのもまた良い。無理に世の中の流れにのらない生き方もある意味現代らしいと言えるのかもしれない。

    じい散歩も気になるな…

  • 古い団地に50代の幼馴染のゆるい生活ぶりが、仕事で忙しかった週末にいい息抜きになった。仲のいい友人と美味しいものを食べて、好きな映画や音楽を観たり聞いたりしながら、遠慮なく話せるのは貴重。私までのんびりできて良かった。

  • 阿佐ヶ谷姉妹かと思った表紙に惹かれて図書館で借りてみた。
    ずっと幼馴染で長い付き合いのなっちゃんとノエチの日常。
    確かになっちゃんちょっと勝手すぎるかも。
    でも喧嘩してもそれなり言いたいこと言い合えるのは、子供の頃からの仲良しだからこそなんだろーな。

  • 昭和の団地に住む50歳の奈津子とノエチ。

    保育園の頃からの付き合いで、お互いにわかりきった関係。奈津子の部屋に、ノエチは仕事帰りに気まぐれに遊びに来て一緒にご飯を食べる。

    二人にはそれぞれ悩みやストレスももちろんある。
    お互いに自分が相手の都合に合わせてあげていると思いながらも、二人で気を使わずにまったり過ごす生活は、読んでいて心地よく、羨ましい。
    こういう関係、いいなと思う。

    団地に住むおばちゃんたちも個性豊かであり、ご近所関係も色々あるけれど、持ちつ持たれつの関係で読んでいて楽しかった。

    団地に住む佐久間のおばちゃんの『50歳は小娘。まだまだよ』のひと言が、これからの人生に元気をもらえた。

  • 築60年の団地に暮らす、アラフィフ幼なじみコンビの奈津子とノエチの日常。奈津子はイラストレーターの仕事の傍ら、ノエチの兄の80年代お宝ものや団地の住人の持ち込みをフリマアプリで売って暮らしている。コロナ禍の最中だけどのんびりとした彼女らの日々は、わかりやすい盛り上がりがない分退屈に感じられるかもしれないけど、漂うユルい空気感が心地よい。フリマアプリの売り上げがあったとき、ちょっと贅沢に美味しいものを買う。そのささやかさがリアルで、奈津子とノエチが自分と同世代ということもあり、あるあるだな~といちいち響く。藤野さんの小ネタが毎度作品を読むたび楽しいのだけど、今回ももれなく!で、「なめ猫」など80年代ネタや、「街の上で」など自分好みの単館映画ネタがあると身悶えするほど嬉しい。
    団地のおばちゃん達との交流エピソードもほのぼのするけど、築年数的にいつか取り壊すかもしれない団地のこれからを思うと、ちょっと寂しくなる。幼いときに別れた2人の幼なじみとのエピソードなど‥ゆるゆるした日常に、数滴落とされたような、ほんの少しの切なさ。その描写のさりげなさが藤野さんの上手さだなと毎回唸る。
    北澤平祐さんの装画も雰囲気にぴったりで可愛らしくて、大好きです。

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著者プロフィール

1962年福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。95年「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞、98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞。その他の著書に『ルート225』『中等部超能力戦争』『D菩薩峠漫研夏合宿』『編集ども集まれ!』などがある。家族をテーマにした直近刊『じい散歩』は各所で話題になった。

「2022年 『団地のふたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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