バイティング・ザ・サン

  • 産業編集センター
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  • Amazon.co.jp ・本 (553ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784916199584

感想・レビュー・書評

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  • 表紙に一目惚れして買った本。
    一度読んだだけではわからなかったけど、二度三度と読むとじわじわくる本。
    三度目で涙。

    主人公の名前が表記されてない。
    主人公は読者自身なのかも。

    アンドロイドたちが奉仕する完璧なる理想都市、フォー。
    そこで暮らす人間たちには、制限のない快楽や、苦痛も病もない人生が約束されており、人々は好きな外見や性別を選び、永久的に生き続けることができた。
    そんな魅力的な社会に歯向かい、太陽に噛み付く反逆者。

    自分がこの世界に存在した時、主人公が最終的に選んだ道を
    見つけられるだろうか?

    現代の便利さに取り込まれてしまわないように何度も読み返したい本。
    私にとってエンデの「モモ」のような位置づけ。

  • タニス・リー作品では珍しいSFだそうですが、私はこの作品がタニス・リーの入口だったので、タニス・リーと言えば真っ先に浮かんでしまう。
    ただ、同じテイストのものは、何年も前の『SFマガジン』に短編で乗っているものを見つけただけで、他の作品は耽美、童話、ゴシック、がキーになるお話がほとんど。
    恋愛が主軸ですけど、『銀色の恋人』がリーSFかな……かな?

    どこから書けば良いのかわからないほどに、大好きな本。
    どうやらリー好きの間でも、好き嫌いが分かれる作品。

    初めは、私の拙い想像力では追い付けない人物描写に、右往左往しました――「口髭? 羽根?」。
    その後は、色と香りと感情が、沢山の情報と共に文字から溢れてきます。
    SFだと思って手にしなかったので、また、SFを読む心積もりもなかったので、余計に混乱しました。ファンタジーのようなSF。でも、ジャンル分けしたのは、読み手側、市場なので、リー御本人にはファンタジーもSFも関係なかったのかも……。それぐらい、確立した世界観、科白選び、綺羅びやかな文です。

    主人公が堪らなく好き。不器用で不安定、泣き出しそうなくらい短気で、歌いだしそうなくらい真面目。不安定な思春期の少女像が描かれています。
    思春期特有の、世界に絶望したり、自分を特別と信じたりして右往左往。(中二病なんて病が無い時代に書かれていますが、現代に書かれたら、主人公をそう評される方もいらっしゃるかも)ただ、彼女が本物になれたのは、突き抜けて足掻いたから、かな?とか思っています。
    どの世界も、『続けたら勝ち』みたいな所があるじゃないですか、そんな感じ。
    『天才になりたければ、天才のフリをすればいい』ってダリでしたっけ? どうでもいいですね。

    色や食事の文字に敏感な人にもおすすめ。いつもとは違った食事ができますよ。たとえば、サボテンステーキとかサラダ・オン・アイスとか……。トーストされたエンジェル・フードでさえ、なんだか美味しそう。

    ペットをうまく想像できなかったけれど、ペットと彼女の掛け合いも好き。せっかく名前をつけたのに、後々にしれっと「ペット」呼びしているのも、彼女らしくて好き。それを締めに持ってくるリーの書き方ももちろん大好き。
    結局、彼女とずっと、トスキーになったり、ザラダンになったりして冒険し続けたのは、ペットだったのかも。ローランと結婚した(つもり)のもペットでしたし。

    主人公の呟きや目線に、どきりとする事ばかり。
    『炎の翼でひっぱたいてやりたい』の文句は、最高に痺れます。リーの書く文章は、好きな人には本当にたまらない御馳走ですね。
    あと、『自分がヒステリーな時に、他人のヒステリーに構ってられない』も好き。主人公、本当は凄く友人に気を使ってしまう子な気がする。

    書かれた年代にも驚き。でも小説ってそう言うものですね。『フラッシュ』と『分子ニードルナイフ』あたりは、もう世に出ているんじゃないかな。『ビー』はもう実用化しているお国もありそう。


    何年も前に、この本に対する素敵な感想を目にしました。
    その時、私の周りでこの本、結構評価が低くて……というか、酷評ばかり目立っていて、それを目にしたり聞くたび内心とても傷付いていました。けれど、その素敵な感想は、一言でカッコよく簡潔に、称賛していました。それになんだか救われた。あの時は『イイね』も『ハート』も押せなかったですが、いまなら連打したい。
    いま、あの時の素敵な感想をネットで探しているのですが、見当たらない。

    『なんていうかウーマ、素晴らしくデリサンだわ』
    の感想に、こんな遠くから、時を経てコメントさせて頂きます。
    『ウーマ・カズマ、あなたって本当にインスマットグロッシングね』――ナズ同様、人を当惑させる性分なんです。

  • 最初は、こういうあり得ない設定のヤツではみ出し者がめちゃくちゃする系、読んだことあるなぁと少しウンザリしていた。ページをめくる手も止まりがちで、やめようかと思ったりもした。
    けど、中盤から面白くなり始めて、止まらなくなった。
    人って結局、不便が好きなんだ。どんなに便利な世界に生きてても、完全に満足できない人は存在する。両方があって、どちらかを選択することが出来る方が、多くの人を満足させられる。
    ないものを魅力的に感じる欲求を取り除けない以上、どちらか一方に偏ったものだけを供給し続けることは押しつけになってしまって不自由に替わる。ある程度の締めつけを残した上で自由を与えた方が、コントロールしやすいのかも。

  • 同じ頃に買った『鏡の森』は何度か読み返しているのにこちらは初めて。

    人間に無価値でいることを強いる世界と、それに抗う魂のお話。世界観がというのか、社会の仕組みや街並、「ジャング」と呼ばれる若者の文化風習娯楽等がもうビビッドに軽薄。率直に言って気味が悪いし、主人公はそんな意味不明なジャングのひとりなのに、その満たされなさは不思議とわかる気がしてしまって面白かった。
    「神」の言葉の発見からか、だんだん楽園追放のイメージが重なってくるあたりは、予定調和なのか月並みなのか感想に迷う。いやそれより、人間の生態そのものが根本的に変えられていたわけじゃないことにびっくりしたかも。楽園追放の結果として当然得るべきところではあるんだけど。

    ところで主人公の名前はなんだったんだろう。

  • タニス・リー作品としては珍しい(?)近未来SF。SF的なガジェットと世界を設定しても、随所にファンタジーっぽさが見える。
    基本的には王道のストーリーで楽しめた。
    共生関係を目指すというか、割とナアナアで完全に対立しない……というのは、SF小説としては珍しいラストかもしれないな〜。

  • なんでもある。
    なんでもかなう。
    でも、心にわく物足りなさを埋めることができるのは、ないんだろう。
    君の存在以外では。

  • 面白かったけど、かなりご都合主義・・・特に終盤。

  • 近未来SFなのに夢見がちな雰囲気が素敵でした。
    個人的には、とても好き。
    ストーリー展開は少女漫画的かもしれないけど
    いつの時代にも「女の子」はいるはず。

  • 表紙のイラストレーションが凄く好きで買いました。話しの設定もすごく好きなのと、文章のドライブ感も好きです。ただ、ラストのところがちょと、ひっかかりました。

  • 遠い未来。
    体を変えることにより、永遠の命を得た人類。
    故に虚しくなったりして、そんな時代に原始的に生きることを選んだ異端者の話。

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