幕末太陽傳 [DVD]

監督 : 川島雄三 
出演 : フランキー堺  南田洋子  左幸子  石原裕次郎  芦川いづみ  小林旭 
  • 日活
4.02
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988103600456

感想・レビュー・書評

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  • 頃は幕末--ここ品川宿の遊女屋相模屋に登楼したのは佐平次(フランキー堺)の一行。さんざ遊んだ挙句に懐は無一文。
    怒った楼主伝兵衛は佐平次を行燈部屋に追払った。ところがこの男黙って居残りをする代物ではない。
    いつの間にやら玄関へ飛び出して番頭みたいな仕事を始めたが、その要領のよいこと。売れっ妓こはるの部屋に入浸って勘定がたまる一方の攘夷の志士高杉晋作たちから、そのカタをとって来たり、親子して同じこはるに通い続けたのがばれての親子喧嘩もうまく納めるといった具合。
    しかもその度に御祝儀を頂戴して懐を温める抜け目のない佐平次であった。
    この図々しい居残りが数日続くうちに、仕立物まで上手にする彼の器用さは、女郎こはるとおそめをいかれさせてしまった。かくて佐平次は二人の女からロ説かれる仕儀となった。
    ところが佐平次はこんな二人に目もくれずに大奮闘。女中おひさにほれた相模屋の太陽息子徳三郎は、おひさとの仲の橋渡しを佐平次に頼んだ。佐平次はこれを手数料十両で引受けた。
    あくまでちゃっかりしている佐平次は、こはるの部屋の高杉らに着目。彼らが御殿山英国公使館の焼打ちを謀っていることを知ると、御殿山工事場に出入りしている大工に異人館の地図を作らせ、これを高杉らに渡してまたまた儲けた。
    その上焼打ちの舟に、徳三郎とおひさを便乗させることも忘れなかった。その夜、御殿山に火が上った。
    この事件のすきに、ここらが引上げ時としこたま儲けた佐平次は旅支度。そこへこはるの客杢兵衛大尽が、こはるがいないと大騒ぎ。
    佐平次は、こはるは急死したと誤魔化してその場を繕い、翌朝早く旅支度して表に出ると、こはいかに杢兵衛が待ち構えていてこはるの墓に案内しろという。
    これも居残り稼業最後の稼ぎと、彼は杢兵衛から祝儀をもらうと、近くの墓地でいいかげんの石塔をこはるの墓と教えた。
    杢兵衛一心に拝んでいたが、ふと顔をあげるとこれが子供の戒名。
    欺されたと真赤になって怒る大尽を尻目に、佐平次は振分けかついで東海道の松並木を韋駄天走りに駈け去って行った。
    日活100周年を記念し、川島雄三監督の傑作コメディ時代劇『幕末太陽傳』を最新技術によりデジタル修復。
    フランキー堺主演。
    古典落語の「居残り佐平次」「品川心中」などを元に、居残りするはめになっても遊郭の遊女たちの用事を足したり客を上手くあしらったり図太く抜け目なく生き抜く佐平次を演じるフランキー堺の自由奔放の生きざまが、スマートでパワフルでスカッとします。
    「てめえ1人の才覚で生き抜くからにゃ、首が飛んでも動いてみせらぁ」 ​

  • いやー、面白いね。
    昔見てむちゃくちゃ面白いと思って、アマプラに入っていたので再度見た。

    演技がうまいし、テンポが良いし、台詞がいちいち格好良くて歯切れがよいし、脚本も画面展開もカメラもいい。これぞ映画だって感じがする。
    日本映画と言って想像するもっさり感や暗さや貧乏臭さや説明臭さが全然ない。

  • イントロとラストがめちゃくちゃ気に入った。

    現在(といっても'57年)の相模ホテルから文久の相模屋に移行するあたりが秀逸。
    同じくコミカルな音楽に合わせて当時まだ国内に居留していたGHQさんがお姉さん達と相模ホテルに入ってく演出も考えたもんやなーって感じ。
    (冒頭では宿の前を馬に乗って素通りしていたのにね)

    品川の女郎屋に生きる人間達をちょっぴりおかしく見せたものだけど彼らの苦悩も程よく混ぜ込まれており、珍しくノンストップで観ることができた。
    役者の方は裕ちゃんを始めとして売れっ子さんが多いけどこちらも珍しく皆キャラが合っていて、しかも面白いときている。

    裕ちゃんの高杉晋作は高良健吾君のよりもずっと良い笑
    日活映画ではやたら甘いマスクでオーラが周りと馴染めていなかった岡田眞澄君も妙に若衆役が板についている。笑
    そして小林旭があんな端役で出ていたとは…

    フランキー堺さんが非常に芸達者。
    ひょいひょいと座敷の廊下を駆けて身軽に女郎屋社会を生きる様はそりゃ女達にも惚れられる。
    日活の看板俳優よりもコメディアンを主役に据えたのもまた凄い挑戦。

  • 名作の誉れ高い本作をようやく鑑賞。「今夜も落語で眠りたい」(中野翠著)を読んで、「居残り佐平次」ベースの本作を観たくなった次第。フランキー堺の軽妙な語り口と飄々とした演技はまさに真骨頂。映画も落語の世界を観ているようでとても面白かった。金子信雄や織田政雄、西村晃、小沢昭一、山岡久乃らの名優たちも輝いている。特に釘付けになったのは役柄も手伝っての芦川いづみの可憐な表情。白黒画像でもそのキレイさが際立つ。

  • 古典落語の居残り佐平次、品川心中、三枚起請、明烏などを下敷きに書かれた脚本。今村昌平が参加している。
    フランキー堺、石原裕次郎、左幸子、南田洋子、山岡久乃、金子信雄、岡田真澄、二谷英明、芦川いづみ、小沢昭一、殿山泰司、菅井きん、中島俊幸など豪華なキャストてでしかも素晴らしい演技。居残り佐平次のイメージはこれで固まってしまってるぐらいの名演。
    何度見てもあきないなあ。こういう人に私はなりたい(笑)遊郭の構造を余すことなく生かした素晴らしいカメラワーク。名人の落語を聞いているかのような心地よいリズム、所作のディテールのこぎみよさに映画の快楽を味わえる。川島雄三ってやはり天才だと思う。冒頭、昭和三十年代の北品川、品川宿の様子が出てこるのだが、今は小綺麗な商店街です。

  • 北品川あたりの地域で幕末にどんな人が集い、暮らしていたのかが垣間見える1本。去年はあのあたりを歩いてみたりしていたので、今の雰囲気と比べたりしながら観てました。広くいくつかの業界や組織をまたいで仕事ができることと、それぞれを人並み以上でこなせること。この2つが揃うと、お金を稼ぐということはそんなに大変なことではなくなっていくよなとか改めて。あとは自分がどこに注力をしたいか、誰の力になりたいかを考えて動けばいいのかなと。並行して発生する出来事を横につなげて自分の価値をつくっていくことって、ある意味1つのデザインだよなとか感じた1本でした。

  • 「プレミアムシネマ」にて。幕末の遊郭を舞台にしたグランドホテル形式というのが奮ってる! フランキー堺が狂言回しになって、さまざまなトラブルに嘴を突っ込むという設定は面白いのですが、セリフが聞き取りづらくて、ストーリーの把握が難しいのが難。

    高杉晋作役で若き石原裕次郎が出てきたりしますが、もっと歴史上の人物が出てくれば良かったのにと思わなくもないです。

  • <ストーリー>
    舞台は幕末、文久二年の品川宿。佐平次は仲間を連れて遊郭旅籠の相模屋で豪遊する。しかし無一文でお金を払えない。散々遊んだ挙句に仲間を帰して金が無い事を店の者に打ち明ける佐平次。支払いが出来ない代わりに居残りと称して相模屋に住込みで働き始める。そこから佐平次は女郎同士の喧嘩、客のクレーム、おまけに攘夷派の長州藩士高杉などと交わるなど、相模屋のいざこざを手際よく解決していく。いつしか佐平次はお店にとって無くてはならない存在になり、みんなからも信頼されるようになった。しかし時折変な咳をする佐平次。お金も貯まってきたしそろそろ潮時だと店を出ようとする。そんな矢先にまた客の対応を頼まれる。

    <感想>
     ストーリーは大雑把にしか書いていないが、この中にはたくさんの出来事が入っている。それもそのはず、この映画は落語の「居残り佐平次」という噺から主人公をとっている。他にも「品川心中」、「三枚起請」、「お見立て」などの落語がこの映画には登場する。それらの噺と幕末の混沌とした世界観を織り交ぜつつ、我が道を生きていく佐平次を面白おかしく仕上げている。この世界観がたまらない。見れば見るほど味のある映画です。ちなみにキャストで石原裕次郎なども出ている事が注目を集めますが、脚本には当時31歳の今村昌平も参加しています。面白いわけですね。

  • 上から下へ、左から右へ。
    まさに河が流れるかのようなスピード感。
    どこをみても飽きない!
    しみったれてなくて、なんてかっこよく素敵な時代劇。

  • ときは幕末夜明け前。
    北の吉原、南の品川と称された品川遊郭を舞台に、
    一癖も二癖もあるスルメみたいな連中が起す騒動を一手に引き受け、口八丁手八丁ですいすいっと泳ぎきる佐平次の活躍を描いた痛快傑作喜劇。

    主人公佐平次にジャズドラマーのフランキー堺。脇を固める町人、庶民には、
    小沢昭一、菅井きん、金子信雄に熊倉一雄…いづれ劣らぬ立て板に水の口達者、芸達者。これでつまらぬ訳が無い。
    また血気盛んな攘夷志士には、やはり血気盛んな後の日活看板スター等が勢ぞろいで華を添える。演技の巧い下手はともかく石原裕次郎はやはり華のある人なんだと再認識。

    全体の味付けは、粋で洒落っ気たっぷりな、テンポの良さとシニカルな笑い。
    特にフランキー堺の身のこなし、センスの良さ、宙に舞う羽織をふぅわりと羽織る粋の良さには舌を巻く。

    最後の杢兵衛大尽は、佐平次のそして川島監督のもう一人の内なる自分の代弁者ではなかろうか。若しくは父親や故郷かもしれない。
    得意の口上が通じないのも自分自身だから誤魔化しが効かないのではないだろか。
    「このふらふらもんが」「人間一度はおっ死ぬもんでねぇか」「嘘べぇこいてるとぉ地獄さ落ちねばなんねぇど」と杢兵衛に詰問される。これは自問自答かもしれない。
    しかし佐平次は「え~ぃ。地獄も極楽もあるもんけぇ。俺はまだまだ生きるんでぇぃ」と言い放ち全力疾走でその場を逃げ去り幕となる。
    この川島監督の所信表明とも取れる意地っ張りに、私はただひたすら憧れるしかない。
    お薦めの一本です。

    中高生の頃、ヤンジャン「栄光なき天才たち」で本作に出遭いました。感謝!
    〔080518鑑賞〕

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