ミュンヘン スペシャル・エディション [DVD]

監督 : スティーブン・スピルバーグ 
出演 : エリック・バナ  ダニエル・クレイグ  キアラン・ハインズ  マチュー・カソヴィッツ  ハンス・ジシュラー  ジェフリー・ラッシュ 
  • 角川エンタテインメント
3.29
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本棚登録 : 481
感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4582194840601

感想・レビュー・書評

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  • 怖かった。人を消していくたびに少しずつ主人公のアヴナーの顔がやつれ表情がなくなっていくとことか。でも人としての心は失わない。だから苦しむ。
    スピルバーグがユダヤ人であるということを考えると、この映画がいっそう意味のある作品に思えてくる。生まれた時から他民族を恨むように運命づけられてるなんておかしいと。国を持たないということがどういうことなのかわたしには想像しづらいけど、自分の生まれたところが故郷で、愛する人のいるところが帰るべき場所なんだということが言いたかったんじゃないかと思う。そういうことからも料理とか食事とかセックスのシーンは意味を持つんじゃないのかな。
    女性を殺したあとのとくに苦しい描写も、女性というものはは殺すものではなくて愛するものだという、裸のままか服を着せるかという小さなこだわりが象徴しているのかも。
    こういう映画を作ってもなお第一線で活躍できるって、やっぱりなんだかんだ言ってもアメリカって自由で寛容な国なんだな。

  • 1972年のミュンヘンオリンピック事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(モサド)による黒い九月に対する報復作戦。
    原作はジョージ・ジョナスのノンフィクション小説・『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』。

    私は恥ずかしながらミュンヘンオリンピック事件のことは知らなかったし、パレスチナ問題がほとんどわかっていないので、史実を知ることができたということだけでも鑑賞した価値があったと思う。

    正直、宗教とか民族とかに関しての意識が低い私にしたら到底理解できない領域だったけど、
    それでもそれぞれに家族がいたり、守りたい人、守りたいもの・教義があって、その生き方はすごくシンプルなものなのかもしれないなと思った。
    主人公が産まれたばかりの赤ちゃんと電話しているシーン、暗殺ターゲットの娘への配慮、随所にちりばめられる人間の根源的な感情を垣間見るにつけ、この終わりなき復讐劇(復讐が復讐を呼ぶ悪循環)が本当にどうにかならないかねぇと苦しくなった。


    ラストCGで再現され挿入されていた世界貿易センタービル。
    このシーンが物議を醸したそうだけど(同時テロとイスラエルを混同してるってことで)、結局この負の連鎖の行く末にあの9・11があったわけで、そこからまた「報復」が始まってしまったのだ。
    色々な批判もあったみたいだけど、やっぱりあのシーンは監督からしたら外せなかったんだろうな。

  • この映画をどうしても観たかったのには理由が有る、この映画の元になったミュンヘンオリンピックのイスラエル選手団虐殺事件をうっすらと覚えているからだ。

    
正確に言えばその事件を報じたNEWSを記憶している、「本日夜、ミュンヘンのオリンピック村よりテロリストにより拉致されたイスラエル選手団は全員殺害されました。」 
多分そんな内容だったと思う「ミュンヘン」「オリンピック村」「イスラエル選手団」「全員殺害」その4つの単語だけははっきりと覚えている。 

    無表情な声で読み上げられる凶報と不鮮明な映像が幼心に不安感を与え意味も分からず怖かった、この事件で覚えているのは偶然観たそのNEWSの一回限りだ。 


    
この映画はパレスチナゲリラ「ブラック・セプテンバー(黒い9月)」によって引き起こされたイスラエル選手団殺害事件とその報復として行われたイスラエルによパレスチナ要人の暗殺計画「神の怒り」作戦を題材にしている。 


    私はこういうテーマの映画では暴力を美化せずに描くべきだと思うが、その辺は非常にきっちりと双方のテロによる殺害のグロテスクな様子、主人公達が最初は任務に戸惑いながら徐々に報復の名の元に無関係な人間迄手にかける非情さを身に付けていく様子があざとい程リアルに描き込まれている。
    
しかしこの映画はドキュメンタリーではない、大旨原案となった「標的は11人」に沿って描かれるが、敢えて描いていないのではないかと思わせる部分も多いのだ。
    
その辺が「あくまでもユダヤ人の視点」という批判がでる一因ではないかと思うが、スピルバーグは事件のあらましでは無く現代の寓話として事件を描きたかったのでは無いかと思う。 


    この映画は「家」を守ろうとする男達の物語だ、アブナーもフランス人の情報屋「パパ」もパレスチナ人達もそれぞれの家を守る為に戦っている、しかしその家が巨大な「国家」である時、人はその名の下ににどこまで非情になれるのか、そして互いの「報復の連鎖」が生み出す虚しさ。 



    全体は3部に分かれた構成だが暗殺の現場がめまぐるしく変わり、復讐の原点となる「ミュンヘン事件」そのものも主人公の回想シーンの中にフラッシュバックのように断片的に挿入されるので、この事件の予備知識が無く見る人には少々不親切な脚本だと思う。

    

俳優陣では穏やかな青年から冷徹なテロリストへそして再び個人としての人間性を取り戻して行くアブナーを演じるエリック・バナの表情豊かな演技、アブナー達に屈折した感情を見せながら協力するフランス人情報屋ルイのマチュー・アマルリックが良かった。 
映画を観て何らかのカタルシスを期待する人はこの映画を観ると肩透かしを食らったように感じるのではないか、何と言うか見る人に宿題を出しているような感じなのだ。 


    この映画をこれから観る人はラストにカメラが映し出すものは何かに注目して欲しい。 
多分それがスピルバーグがこの映画を撮った理由だと思うから。

  • ミュンヘンオリンピックでのイスラエル選手団人質殺害事件に対する報復として関わりのあるパレスチナ人などを暗殺していくモサドのチーム。
    主人公らの自らした行いがやがて心の内に疑心を生み、自らを苛んでゆく。
    イスラエルという国、パレスチナ問題を考える上で示唆に富む作品。

  • 歴史の予習なしに観たので、ストーリーを追うのがキツかった。
    ユダヤ人寄りの描き方でないのを個人的には最も評価するが、やはりユダヤ人社会からは物議を醸したようで、巷で注目されないのもそういう経緯があるのかな。

    予習をした上で何度も観直せば緻密に作られた良作であることも実感出来る気がするが、残念ながら今の私にはそれだけの余裕がない。

  • 秀作。
    観るのが辛い。ユダヤ人は悲しい民族。
    ゴッドファーザーを思い出す妙な信頼関係と裏切り。
    ラストシーンに、ニューヨークのツインタワーが見えるのが暗示しているようで。

  • 長編映画だったけど、あっという間に終わっちゃっておもしろかったです。
    「軽くフィクション」じゃなく、事実をもとにした映画ってことでドラマチックな展開はそう期待していなかったんだけど、「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもんだね、いい映画に仕上がってると思いました。

    同時に、自分たち日本人は恵まれてるし平和だな、と。
    生まれた時代や生まれた場所、肌の色がたまたま違っただけで、こんなにも差が出てしまうのっておかしいけどこれが世界の真実で、勝ち組の人たちが自分たちの権利を軽々と手放すことはないってことを考えるとこの差はこの先消すことができないのかもしれない。
    そんな中で、自分はそういう民族紛争と無縁でも生きていける国に生まれ育って、今までリアルにそういうことを考えたことってなかったけど、多分これ書いてる今も「祖国のために」ってやってる奴らもいるんだよなって思う。
    トリノオリンピックとは別のとこで「それどころじゃねぇ」って必死で。
    そーいうことを少し考えてみてもいいかなって思いました。

    奇しくも今年はミュンヘンオリンピックの行われたドイツでW杯がある。
    優勝がどこの国になるか予想するのも楽しいし、たくさんのスーパープレーが拝めるのも楽しみにしてっけど、いろんな国を知るいい機会だなとも思うんでちっちゃくて弱い国にも興味持ってみようと思います。
    サッカーやってなかったら俺こんなに世界中の国のこと知るようになれなかったしね。

  • スピルバーグ作品を連チャンで。ユダヤ人であるスピルバーグが映画化したことに意味がある。負の連鎖の何と恐ろしいことか。

  • イスラエルの青年が、ミュンヘンオリンピックで起きたテロ事件の報復として11人のパレスチナ人を暗殺するミッションを受ける。
    昔、単にエンタメとして見た作品の再視聴。

    今回はイスラエル×パレスチナの知識を取り入れる付録として見た。四方田犬彦はこの映画を評して大変ハリウッド的であり、ユダヤ系アメリカ人スピルバーグの立ち限界を示しているというような評を『パレスチナ・ナウ』という本のなかで書いていた。
    いわく、パレスチナ人がほとんど人間として描かれていない。ミュンヘンの事件が起こるまでのいきさつが描かれておらず、パレスチナ人は悪、ユダヤ人は被害者という構図になっている……。

    パレスチナ人側の事情や人物像の描き方が不十分といえばまったくそうなのだけど、この作品はあくまでも
    「ユダヤ人によるユダヤ人のための、ユダヤ人の過去と現在と未来についての内省」
    ととらえるといいと思う。

    ・パレスチナ人を故郷から追い出したイスラエル建国は正しいのか
    ・ヨーロッパ人に迫害されたから、ユダヤ人はアラブ人を迫害する権利があるという理屈はとおるのか
    ・アラブ人のテロや暗殺にテロや暗殺や軍事行動で答える泥沼に未来はあるのか。それはユダヤ人の良さと誇りを損ねることではないのか
    このような問いは「アラブ人も同じ人間なんだから仲良くしよう」などという優等生的な呼びかけよりも、よほど深く訴えるものがあると思うのです。
    スピルバーグの制作意図などは読んでないのでわかりませんが、シオニスト肯定の映画ではないと私は受け取りました。

    個人的には、唯一顔の見えるパレスチナ側の人物として描かれたPLOのアリという青年の叫びがささった。バスクの過激派ETAを偽る主人公に語る。
    ――あんたたちヨーロッパの赤軍は帰るところがないってことがわかってない。ETA、ANC、IRA……あんたらは何も持ってないというが、帰る国があるじゃないか。だから俺たちは世界革命に同調するふりをするが、本当はどうでもいい。俺たちは国が欲しい。自分たちの故郷だけが、俺たちには大切なんだ。(意訳です)
    ここで、PLOと共闘して世界革命を目指していたのは日本赤軍だけじゃなかった、ということを知りました。
    そしてPFLP(PLOの極左組織)と協力して派手なテロ活動を行った日本赤軍はやはり軽薄だと思われていたんだとうなずけた。立場を越えて軽々しく連帯するなんてことは無理なのだと。

    当時派手だった世界の極左運動は次々に解散を宣言しているけど、イスラエル×パレスチナの闘いは終わらない。
    現在は強国としてのイスラエルが国内とウエストバンク・ガザに残るパレスチナ人を法を利用してじわじわと殲滅しかかっている。ユダヤ人だけを守る法を盾にした迫害はアパルトヘイトになぞらえられ、地味なだけに陰湿で世界の関心をひきにくい。だけど、死ぬか出て行くかしてほしいといわんばかりのひどいものです。

    今後、
    誇りをもって兵役についたユダヤ人の若者が、アラブ人を虐待する日々の業務に衝撃をうけ葛藤する みたいな映画が作られるといいな。願わくばハリウッドで。

  •  ミュンヘン五輪で選手殺害テロの実行犯へ報復するモサド暗殺チームの実話を描く。

     モサドとつながりのない人に行わせる為に、全然スパイでない人達が急ごしらえでチームとなる。半分素人による報復テロは一歩間違えばコメディになりそうなくらい奇っ怪な話だ。ボンドになる前のダニエル・クレイグが出てたのは笑った。
     なかなか重くていい映画なんだけど、この内容で2時間半越えはいくらなんでも長過ぎる。

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