メグレと火曜の朝の訪問者 (メグレ警視シリーズ)

  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • 火曜日の朝、メグレのオフィスに、デパート勤めのマルトンという男が訪ねてくる。彼は妻が自分を殺そうとしていると訴える。
    翌日今度はマルトンの妻が現れる。妻は昔はデパートで夫と同僚だったが、今では独立して彼女のほうが高い地位を得ている。そして妻の妹が離婚してマルトンの家に世話になっている。まだ何も起きていない家庭の夫婦それぞれの言い分を聞くことになるメグレ。
    毎日のように狂気じみた訴えを聞いているメグレだが、マルトンには狂気とも違うが妙な印象を覚える。
    上司に当たる局長や検事総長は、起きてもいない事件の捜査に良い顔をしない。
    しかしメグレは密かに部下たちをマルトンの家を見張らせる。
    そしてある夜ついに死者が出た。
    ===

    私がメグレシリーズを最初に読んだのが中高生だったため、高校を「リセ」と呼び、大学入学資格試験というシステムがありそれを「バカロレア」と呼ぶのを知りました。未だにフランス人が「バカロレアを取得」と聞くと、おお!っと思う(笑)

    今度の事件は家庭内で行われるので、推理や犯人探しは単純です。
    話の全体に漂うのは、一見中流で最初は平和だったはずの家庭の冷たさです。
    メグレは家で妻とのふとしたふれあいで、「こんな何気ない夫婦のふれあいがあればあの家庭もあんな風にはならなかっただろう」と考えます。

    メグレ自身は妻と二人暮しで、はっきりした愛情表現はなくてもお互いを気遣い合いわかり合っている感じが出ています。
    「メグレと殺人者たち」では、メグレの家に事件関係者が来ることになったので妻に外出してもらうために散歩を勧めます。その時の会話が「奥さん、その辺をちょっと一回りしておいでよ。急がないで。緑の羽根のついた帽子をかぶって行くといい」「どうして緑の羽根のついた帽子がいいの?」「もうすぐ春だからさ」(P226)というもの。家から出したいだけなのですが、ちょっとした夫婦の可愛らしさが見えます。
    また「火曜の朝の訪問者」では、メグレの親しい友人であるパルドン医師のところに、メグレとメグレ夫人は「秘密にしてくれ」といって診察に行きます。夫婦でお互いに相手に心配をかけたくなかったのです。奥さんの様子を見ながらメグレはどこまで聞くか?聞かないと不自然か?などと考えます。
    夫が忙しく子供のいない壮年夫婦ですが、お互いに必要で大事に思っている様子がふと現れているのもメグレシリーズの特徴です。

  • 299.初、並、元ビニ、黄ばみ、帯付。
    2011.10.26.鈴鹿ベルシティBF。

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著者プロフィール

1903年、ベルギー、リエージュ生まれ。中学中退後、転職を繰り返し、『リエージュ新聞』の記者となる。1921年に処女作“Au Pont des Arches” を発表。パリへ移住後、幾つものペンネームを使い分けながら数多くの小説を執筆。メグレ警視シリーズは絶大な人気を
誇り、長編だけでも70作以上書かれている。66年、アメリカ探偵作家クラブ巨匠賞を受賞。1989年死去。

「2024年 『ロニョン刑事とネズミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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