自省録 (1982年) (岩波クラシックス〈7〉)

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  • 宇宙の原因は一つの奔流である。…すごい広大無辺の境地で格言の宝庫だ。我々は自然の一部であり宇宙の一分子であり、常に変化しつつある存在であるとの視座に立てばどれほどの問題も些細なことに思える。物事の起こりと自然の本質に還り、小事を捨て大事に生きる思想に思考を馳せる重要な賢人の処世術。その教えは原理原則に徹頭徹尾従って生きる非常に示唆に富んだ一冊になった。しかしエーテルがどうとか解釈の難解さに哲学は私にとって苦手とする理数系の分野であることを思い知らされた。古代ギリシアの賢人の言葉が現在の人間の心にも響き、日々の生活に有益な考え方として生かすことができるということは人間の普遍の真理を説いた名著だからだと思う。賢人ってこういうものの考え方をするのだな、私とは全然違う思考経路をたどる様が読んでいて改めて「頭いい人ってすごいな~」と感心した。指導理性、宇宙や自然と融合する思想…広大無辺な境地だ。ストア哲学は三部門に分かれている。物理学、論理学、倫理学である。論理学とは思念を統御し、客観的事物をあるがままの姿においてのみ認識することを教え、あらゆる施策に必要な道具。また物理学は宇宙とその中における我々の位置を理解する上に必要な事柄を教える。
    自然にかなった生活、というのがストア哲学の基調であり、個の自然とは宇宙を支配する理性ないし理法を指す。しかし物理学も論理学も倫理学に対して従属的な位置に置かれ、道徳的な生き方を導き出す基礎として必要なかぎりにおいてのみ意義を認められた。マルクスは天体現象を研究したり、三段論法を分析したりすることに時を費やさなかったのを感謝している。「我らの生活内容を豊富にし、われらの生活肯定力を充実しまたは旺盛にする」そう言う力の源泉となるには全人格の重心のありかを根底から覆し、おきかえるような景気を与える必要がある。それはストア哲学にはない。しかしこのストア哲学も一度マルクスの魂に乗り移ると魅力と生命力を帯びる。それはかれが皇帝としてなまなましい現実との対決に火花を散らす身であったからこその思想の力と躍動が生まれたからかもしれない。」(あとがき)、

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