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- / ISBN・EAN: 4988111283238
感想・レビュー・書評
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塚本晋也監督版「野火」(2015) を京都シネマに迷い込んで鑑賞する機会を持てたのは2018年の夏のことだった。メイキング版との併映ということもあり、本作が大岡昇平の著述作を原作としていること、先行映画化版として市川崑監督による1959年版が存在することなどはその時初めて知ったように記憶している。
それから二年弱、ようやく市川版をDVD鑑賞する機会を得た。59年といえば戦後14年が過ぎた時期で今の感覚でいえば「たった」という程度の時間しか経過していないわけだが、DVDに収録されていたドナルド・リチーの言葉が象徴的で、「今の世ではそう簡単には映像化を実現することはできないわけだが、当時の日本にはそういった風潮はなくこうした過激な作品が世に出てくる土台があった」という時期であったのだそうだ。同じく含まれていた市川監督ご本人の言葉によると「会社の人は原作読んでなかったんじゃないかな。派手な戦争映画でも撮ってくれると思っていたのでしょう。」ということらしい。この辺は後年塚本監督が再映像化するにあたり、自主制作としての道を歩まなければならなかった事実ともあわせみるに、当時の日本の映画界が鮮明な戦争の記憶とともに「今撮らなければならないこと」というものを真摯に考え抜いてそれらを実行に移していたのだということを痛切に感じさせてくれる。創り手と観衆の両方の側にそれだけそれらを支える十分な生命力が確実にあったということなのだろう。
主演は船越英二。ガッツリの主演作品を鑑賞したのはこれが初めてだったように思う。大映出自の彼の出演作群をながめるに、本作に一番近い時期の既感賞作品としては「からっ風野郎」(1960)、「しとやかな獣」(1963) ぐらいとちょっと頼りない状態。ずっと後の「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975) でお会いしたときはもうテレビでみていた「熱中時代」の頃の彼の印象が強かった。
本作での印象が後年の彼と一致しなかった理由は鑑賞後にみた市川監督のインタビュー映像ではっきりした。撮影の初日にクライマックスの崖のシーンを撮影したところ、途中で倒れ込んで動かなくなってしまったというのだ。慌てて担ぎ出して医者に見せると過度の減量に起因する栄養失調が理由…、結果撮影がストップしてしまう事態にまで発展。そういった彼の俳優業に対する強い意気込みを垣間みた今となってはその他の出演作品の鑑賞機会に巡り合うまでの日数を縮めなければ…と改めて誓ってみたりもする。
ちなみに併録インタビューの中にはミッキー・カーチス氏も登場。流暢な英語で当時の撮影の様子を人懐っこい笑顔とともに語る氏をみると、彼に対する興味も俄然湧いてしまった。(芳村真理の元旦那という経歴も含め!)こちらはこちらでぼちぼちとつまみ食いしてゆこう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争は悲惨とか、そういう世界観ではない。人間としての尊厳とか、不信感、狡猾さを鋭く描き出して、長い長い絶望へと視聴者を導いてく。
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フィリピンで病気の為に隊と病院を行ったりきたりしてる兵士はさまよい飢える。
軍隊としての秩序が崩壊し、ボロボロの姿でさまよい歩く姿はまさに『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』。極限の飢えによるカニバリズムはゾンビそのもの。
淡々と進んでいくのが最近の邦画にない重さがある。 -
戦争の悲惨さみたいなテーマより、いかに敗走し、絶望するかという物語として面白かった。
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映画はいきなり理不尽な命令から始まる
死ねと言われても自ら死ぬこともできず
生きようにも生きるための食べ物がない
極限の状態で人間として何を選ぶのか……
ラストの「ただ普通の暮らしをしている人に会いたかった」というセリフは、あまりにも痛切だった -
第二次世界大戦末期のレイテ島。
病の田村一等兵は隊からも病院からも追い出され、行き場を失ってしまう。
病院近くで田村と同じような境遇の日本兵たちが野宿していたが、ある夜、攻撃を受け皆散り散りになってしまうのだった。
山野をさ迷っていた田村は日本兵が集まっているというパロンポンを目指す。
市川崑版の野火。
描写は塚本晋也版ほどでもないが、それでもモノクロじゃなければ かなりの映像になっていそう。
国を守る為に特攻隊で格好よく生命を散らせるなんて ごく一部のエリートだけで、
戦時中の殆どの日本兵たちは田村たちのような飢餓状態のような悲惨な体験をする事になったんだ。 -
[1959年日本映画、TV録画鑑賞]
11月18日(水)午後1:00〜2:45 BSプレ1959年・日本 -
期待していたほど衝撃的でもなかったですかねぇ…全体的に話の流れが淡々としているような…まあ、見ていて興味深くはあったけれども、そこまで衝撃らしい衝撃は受けなかったかなぁ…と。
ヽ(・ω・)/ズコー
原作の小説は読んでいませんけれども、活字である分、原作のが衝撃的な内容なのかもしれません…などと想像しています。
ヽ(・ω・)/ズコー
船越氏の表情が徐々にうつろなものになっていく…感じだけは印象に残りました。おしまい。
ヽ(・ω・)/ズコー -
原作を読んでいるだけに、映像化する難しさを感じる。
船越英二は熱演していると思うけど、やはり役者はイメージが選考するので、的役だったかどうかは・・・・・。
しかし、小節にほぼ忠実に仕上がっていたので、空想していた状況とほぼ映像が一致していたことも面白かった。