ヤン・シュヴァンクマイエル「ルナシー」 [DVD]

監督 : ヤン・シュヴァンクマイエル 
出演 : パヴェル・リシュカ  ヤン・トジースカ  アンナ・ガイスレロヴァー 
  • 日本コロムビア
3.68
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感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988001905097

感想・レビュー・書評

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  • Sileni
    2005年 チェコ
    監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
    出演:パヴェル・リシュカ/アンナ・ガイスレロヴァー/ヤン・トジースカ/ヤロスラフ・ドゥシェク

    冒頭でシュヴァンクマイエル自ら登場して、これは芸術映画ではなくホラーであるとか、エドガー・アラン・ポーの「早すぎた埋葬」、およびマルキ・ド・サドの人物像・作品世界をモチーフとしていることなんかを前置き。なるほど、見ればポーもサドも納得です。

    ストーリー自体は、なんというかドグラマグラ的な怖さがあり(おもな舞台は精神病院。本当に狂っているのが誰なのかわからなくなる)、巻き込まれ型の主人公にはいたく同情。侯爵マルキスという登場人物が、その名のモチーフになったであろうマルキ・ド・サド的な快楽哲学と饗宴を繰り広げます。

    しかし個人的に見どころはそのドグラマグラ的ホラーストーリーではなく、随所にストーリーと無関係に差し込まれるシュヴァンクマイエルの本領発揮のグロテスクなアニメーション。今作ではとにかく「肉」と「舌」。気持ち悪いんだけどユーモラスで、その変な動きを見てるだけで楽しいので、人間の演技してる部分より、アニメーションの比率の多い作品のほうが、シュヴァンクマイエルは面白いのになあと個人的には思いました。
    (2011.09.14)

  • 肉のダンス\(^o^)/大好き

  • 共産主義と民主主義、両方の体制を経験したシュヴァンクマイエル監督ならではのグロテスクな風刺映画。冒頭で監督が作品の意図を全て説明してくれる親切ぶり。
    患者を精神病院に閉じ込め徹底的に管理し、「精神異常は身体が健康すぎるから」という診断のもと治療と称して心身のバランスをとるための非人道的な切断手術をする前院長(共産主義)。「人間は楽しむもの」と性的な快楽ばかり追い、患者に好き勝手させて病院を無法地帯にし、神に対する冒瀆行為を繰り返す自由を愛する伯爵(民主主義)。表現は極端だが、どちらにも問題がある。
    シャルロットの弱さを武器に人を利用し簡単にどちら側にも寝返る性質と淫乱さは、監督の女性観をあらわしているのか? 主人公にとっては絶望エンドに他ならない鬱展開だが、ストーリーのえげつなさをしのぐ映像の突飛さに目を奪われてしまう。風刺映画である本編を劇中でさらに風刺するように、肉片が幕間ごとにペチャペチャ跳ねたり踊ったりする。
    神をも恐れぬ「自由」な振る舞いをエスカレートさせ、最後は前院長に捕まり、最も重症な患者用の手術(パッケージやオープニングのイラストで分かるが、去勢手術)をほどこされる伯爵、俳優の演技が強烈で良いキャラだった。笑い声が耳から離れない。

  • エロのセンスがいい

  • 前半は最高にセンスがあった。
    キリストを侮辱して、背徳的で卑猥な、それでいてギャグっぽいシーンで幕が閉じられるところとか、しまっちゃうおじさんっぽいセンスを感じて最高だった、、が、テーマが浅すぎて前半のテンションからの降下が半端なくがっかりでしたわ。

  • いつにもましてお肉屋さんのような映画(笑)やたらと鶏と羽毛が乱れ飛んでるし、肉や内臓や特に牛タンが大活躍。

    ヤン・シュヴァンクマイエル監督にしては観やすいと思ったのはちゃんとストーリーがあるからだな。
    肉や血が苦手な人にはスプラッターホラーに近く、そうでないならサスペンスホラー?サイコホラー?かな。哲学的ホラーと銘打ってるけど。
    監督自らエドガー・A・ポーとマルキ・ド・サドへのオマージュを謳っていて、事実その通りだけど、『カリガリ博士』あたりも思い出す。好きなタイプの映画だ(『アリス』ほど他人に積極的にお勧めできないけれど。)

    特典のメイキング風景が和気あいあいと凄く楽しそうで微笑ましい。監督が可愛らしくて作るモノとのギャップがあって良いなあ。本編観てげんなりした人はこっちも観て欲しい。口直しにいいと思います。

  • もう〜今までにないぐらい狂ってるw
    ヤンさんの好きだけどさ。
    ちょっとついていけなさすぎたwww

    でも、この世界観、たまらなく好きですが。

    『オテサーネク』のお父さん出てますね!
    『オテサーネク』の時とは違って喋らないし(喋れないw)、従順な感じだったけど、こっちもこっちで大好きよwww

  • どこから現実でどこから夢か?
    混乱するー。
    何度見ても新しい発見があっておもしろい。

  • 「」


    ベルロという若い男が、精神病院で亡くなった母親の葬儀をすます。
    住む街へ帰る道中、立ち寄る宿で、精神病院の職員に無理矢理拘束服を着せられるという悪夢にうなされる。夢の中で激しく抵抗して目を覚ますと、実際に暴れまわったかのように部屋中が壊れている。その様子を目撃していた公爵が、ベルロを自分の城へと招待する。城では、SM乱交が繰り広げられていた。
    翌朝、公爵が倒れる。ベルロは公爵を墓地に埋葬するが、戻ると、そこに公爵がいた。彼は、恐怖に打ち勝つためには恐怖を実体験する必要があると考え、ベルロに精神病院へ行くよう勧める。
    ベルロはシャルロットを紹介され、嫌々ながらも病院へ行く。彼女は乱交の場にいた娘だった。彼女によれば、公爵らに操られた入院患者たちが暴動を起こし、本当の医師たちを地下室に閉じ込めたらしい。隙を見てベルロは医師たちを助け出す。医師は彼に感謝を伝え、心の病を治すには計画的に体罰を加えて肉体を弱らせていく必要がある、そのために13段階の治療法が用意されているという。
    連れ戻された公爵に、医師は13段階目の治療を施す。翌朝にシャルロットを連れて病院を出ることにするベルロ。夜、彼女は姿を消す。探しながら地下室へと下りたベルロを、治療を受けぼろぼろの姿になり独房に監禁された公爵の仲間が、お前は淫売女に利用されているとあざ笑う。
    階上へ戻ると、彼女は医師とSM行為にふけっていた。ショックのあまり部屋に閉じこもったベルロは、再び例の悪夢にうなされ物を壊し始める。
    2人の職員たちが、抵抗するベルロに拘束服を着せる。肉体が強くなりすぎていて彼は心の病に侵されている、第1段階目の治療を開始しなければとの医師の診断が聞こえてくる。

  • "ご来場の皆さん、ご覧頂く映画はホラーです。ホラーならではの落胆を皆様にお届けします。この作品に芸術性を期待されるのは間違いです。芸術は死に、自己満足で広告的な物だけが残りました。水に映るナルキッソスと同じです。本作ではエドガー・A・ポーに敬意の念を示すべく、彼のモチーフを拝借しています。また、サド侯爵の冒涜的で破壊的な思想も取り入れ、作品の随所に用いました。<豚の舌片が床を這っていく>この映画の主題は精神病院と、それを管理する者への観念的な挑戦です。彼らのやり方というのは極端にわけて2つ。1つは患者たちに完全な自由を与える方法。もう1つはご存知の通り、監視と体罰を繰り返すという保守的なやり方です。しかし、実はもう1つ方法があります。先の2つの短所を組み合わせ、膨らませた原理、それが使われる場所こそ、狂気に満ちた、この世なのです。<豚の腹が裂け、臓腑がこぼれる>ファンファーレ。"

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