アンナと過ごした4日間 [DVD]

監督 : イエジー・スコリモフスキ 
出演 : アルトゥル・ステランコ  キンガ・プレイス  イェジ・フェドロヴィチ  バルバラ・コウォジェイスカ 
  • 紀伊國屋書店 (2010年5月28日発売)
3.27
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4523215038874

感想・レビュー・書評

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  • まったく無駄がない。極限まで贅肉を削ぎ落して一直線に核心だけを描いた結果、人間そのものを描き出すことに成功している。
    自分の中にある負の側面というか、別の世界線の自分の姿を見せられているような気持ちになってきて、主人公に幸福が訪れるように願わずにいられない。祈るような気持ちで観た。

    こんなものを作るにはさぞかし強い心と深い業が必要だろうに、一体どんな人が撮ったのだろう?と思ったら70才の監督が撮っていたのでなるほどと納得した。

    ストイックで普遍的な視点で「人間」を描いた作風はミヒャエル=ハネケ監督にも通じるところがある。
    ものごとの本質を否応なく直視させられるという意味で、僕の考える「物語」というものの理想像に非常に近かった。


    これを観て「あ、これ俺のことだ」と思える奴とは全員友達になりたい。
    逆に「心が洗われるラブストーリーですね」と言ってしまう奴とは友達になれない。
    そんな感じの映画だった。

    たしかに形態としてはラブストーリーと言えるが、本質的にはもっと一方通行で、偏っていて、個人的で、内省的なものを描いている。あくまで個人的にはだが、どちらかと言えばホラーに近いと感じた。


    地味に音楽が凝っている。
    そもそもセリフが極端に少ない映画なのだが、この映画では主人公の心を代弁する役割として音楽を使っている。
    無骨で単調な音楽を心拍数のように上げ下げすることでシーンのテンションをうまくコントロールしていた。

    途中で一部やりすぎというか、チャップリンのサイレント映画のようなコント臭がしてしまうようなところもあり、そこだけちょっと気になった。


    ラストカットはあえて説明しすぎず、若干揺らぎと含みを持たせた終わりになっているが、これは「全て彼の妄想だった」という可能性を残す監督の意図から来るものらしい。さすがだ。おそろしい。

    余談だが、本作の予告編の出来が酷すぎてびっくりした。
    全く別の映画に見える。

  • 登場人物はレイプ犯として誤認逮捕された元服役囚と被害者女性。純粋で歪んでる愛の話。

    その後主人公は病院の焼却場職員として、被害者女性は知らずにその病院の看護師として勤める。病院の隣にあるボロ屋から彼女の暮らす看護師寮を覗き見る主人公。

    なんというか仕立屋の恋を彷彿とさせる。でもそれよりも少し現実的でゆがんでいるというか…
    彼の執着の始まりも彼女がレイプされた姿を見たからだし。

    個人的には純情が変態性代わっていく感じとか、でもその始まりはレイプ姿を見たっていう劣情ともつかないようなものだったりとかっていう歪んだ感じがすごい好みで良かった。妄想と空想と純情と劣情が行き場もなく暴走していく感じ。

    でもその後の地に足がついてしまうような彼女とのやりとりは無粋というか…あんまり見たくなかったというか…。最後
    、看護師寮との間に高い壁が立ちはだかっていたという突き放し方はとても絶望的で美しくて良かった。


    全体的に見ると美しかったけれど、自分の中で変態と純情っていう一種の美学が出来上がっているので見方は厳しくなっているのかもしれないので少し物足りない所はあったかも。

  • 絶望。

    愛は愛なんだけど、ストーカーはストーカーだから、せつないにはせつないけど、でも私にはこれ理解できなくて、個人的には感情移入はできない。

    でも映画の題材としては素晴らしいし、視点も新しい、暗くて美しい映像です。

    でもなぁ、この絶望的な愛は理解できないなぁ、やはり。

  • 真面目すぎてくそ丁寧すぎて突然の事件に固まってしまう男の恋が愛へ向かって行く話。

  • 0041

  • 潜入シューティングゲームのような緊迫感がすごい。男の「いか臭さ」が画面から漂ってくる。そんな色彩処理は見事。歪んだ愛情の結末に、胸が締めつけられる。

    【ストーリー】
     ポーランドのさびれた地方都市。レオン(アルトゥール・ステランコ)は病院の火葬場で働き、年老いた祖母と2人で暮らしている。病院の看護師・アンナ(キンガ・プレイス)は、宿舎に住んでいる。レオンは夜になると、双眼鏡でアンナの部屋を覗いていた。

     数年前、レオンは川へ釣りに行った。雲行きが怪しく、そろそろ引き上げようとしたとき、川上から大きな牛の死体が流れてきた。レオンが驚いていると、猛烈な雨が降り出す。レオンは雨を避けようと、近くの廃工場に行く。すると、異様な叫び声が聞こえる。レオンが近づくと、アンナが男に乱暴されていた。レオンはその場を逃げ出し、警察に通報する。

     しかし、現場に釣りの道具を置き忘れていたため、レオンが容疑者として逮捕されてしまう。レオンは釈放されると、アンナを遠くから見守るのが習慣になる。レオンは勤め先の病院をリストラされ、祖母も亡くす。すると彼は、アンナが寝る前に飲むお茶の砂糖に睡眠薬を混ぜる。そして彼女が熟睡しているうちに、部屋に忍び込むようになる。

     1日目は、彼女の服のボタンのほつれを直す。2日目は床を拭き、アンナの足の指にペディキュアを塗る。3日目はアンナの誕生日で、正装して花束と指輪を届け、部屋の片づけをした。4日目は、壊れた鳩時計を回収する。しかし、直した時計を戻しに部屋に入ろうとしたところを警察にみつかってしまう。

     看護師の部屋を毎晩覗いていた孤独な中年男はある晩、大胆な行動に出る。さびれた地方都市を舞台に、切なく哀しい恋を詩的に描いたラブストーリー。監督は、「早春」のイェジー・スコリモフスキー。出演は、「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」のアルトゥール・ステランコ。第21回東京国際映画祭審査員特別賞受賞。

  • (2008年作品)

  • どーん、、、、
    そして絶望。

  • 製作年:2008年 製作国:ポーランド・フランス 時間:94分
    原題:CZTERY NOCE Z ANNA
    監督:イエジー・スコリモフスキ

    (2.5点)

  • ペディキュアを塗ってくれたり、とれそうなボタンをつくろってくれたり、ダイヤの指輪を置いていったり、まるで昔話に出てくる良いこびとみたいなおじさんです。それでもストーカーはストーカー、いくら「愛、愛、愛、すべては愛のために」とか言っても、ダメなものはダメでしょう。「レイプされてしまった彼女を自分が守ってあげたい」という気持ちと、「いちどレイプされた女なら俺のことも受け入れてくれるはず」という気持ちは、しばしば、ごっちゃになりやすい。ストーカーだけどレイプ犯ではなかったと彼女が認めてくれただけでも、充分にハッピーエンディングだろうと、私は思いますね。
    それにしても、あの切断された手と指輪は結局どうなったの?とか、彼女がつれてたでかい犬は番犬じゃなかったのか?とか、彼女は疑ってなかったのに、警察はなぜ彼をマークしてたんだろう? とか、いろいろと気になることが多いなあ・・・

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