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感想・レビュー・書評
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新美南吉と言えばごんぎつねですが、、、こんな小説もあったのかと。
ちょっと切なく、引き込まれる世界観だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ごん狐」で知られる新美南吉の童話。1942年発表。南吉が結核のために29歳で世を去る前年の作品である。
舞台は南吉自身の故郷でもある岩滑(やなべ)新田。
東一君という少年が友達と遊んでいて、倉で古いランプを見つける。それはおじいさんの思い出のランプだった。
おじいさんは東一君にランプの由来を語って聞かせる。
日露戦争の頃、13歳であった巳之助(=おじいさん)。天涯孤独だった彼は、人の手伝いをして日々を凌ぎながら、どうにか身を立てようとしていた。
あるとき町で出会ったのがガラス製の美しいランプだった。
それまで人々は夜は暗い中で過ごすか、少し贅沢な家でも行燈を使う程度だった。
まばゆいランプに文明開化の兆しと商機を感じ、心を躍らせた巳之助は、ランプ屋に頼み込んでランプを1つ、卸値で売ってもらう。
そこから巳之助の挑戦が始まった。
近代の訪れとともに、街にランプが灯されていく。巳之助の商売も軌道に乗る。
だがしかし、ランプがもてはやされる時代は長くは続かない。次にやってくるのは電気の時代だ。あちこちに電信柱が立ち、電線が張られるようになってくる。
せっかく商売もうまく行ったのに、と落胆もし、電気を恨みさえする巳之助だったが、時代の流れは止められない。
巳之助は1つの決心をする。
さて、巳之助の決心がすばらしいものだったのかどうか、現代では少しぴんと来ないところもあるのだが、激動の時代を、世をすねることなく渡り切った、1つの理想の形であったのかもしれない。
何にせよ、孫と語らう穏やかな日々を手に入れたのだから。
冒頭では、おじいさんが孫たちに「電信柱で遊んで来い」というシーンもあって、ちょっとした伏線になっている感じである。東一君がおじいさんの話を聞くときにする癖の描写も、実際にこんなことをする子もいるだろうとほほえましい。
南吉はお話をより読みやすく、親しみやすくしようと、いろいろ小さな工夫を重ねていたんだろうなと思い、その早逝にふと胸を突かれる。 -
いい話です。巳之助の行動力と潔さ、過ちを犯そうになった時に気づける賢明さ、そして余裕ができた時でも貪欲に学ぼうとする意欲、見習うことばかりでした。孫にこんな話ができるような生き方をしたいなーと思わされました。そしてAIで仕事がなくなると言われている現代に通ずる話です。当時は文明開化、いつの時代も仕事は移り変わります。
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この物語は読んでいて心がホッとするとても暖かい物語であった。今現代のように、文明開化が著しく起こる社会にどのように自分らも変化、進化して行くのかということを知れる一冊である。
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最後の方、ドキドキした。こんな話も書いていたんですね。
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おじいさんの家でかくれんぼをしていて見つけたランプ。
おじいさんのランプの思い出話が始まる。
癒される。心が温かくなる本。 -
<b>【一口感想】</b>
「どんなに優れたビジネスモデルもいつか終わりが来ることを初めから覚悟せよ」
<b>【3行要約】</b>
・1人の男がビジネスを立ち上げてからそれを畳むまでの人生の物語
・ビジネスを立ち上げる者はそれに固執せずいつでも損切りできる覚悟が必要
・時代の変革を受け入れられないと自分以外の誰かに怒りの矢が向くことに気をつけろ
<b>【所感】</b>
※ネタバレ注意。読了後読まれることを推奨します。
雪洞しかない時代に石油ランプが売れると気づき、はじめは小さいながらもスタートしたビジネスが
キャズムを超え、破壊的イノベーションが持ち込まれることで終焉を迎えるまでのショートストーリー。
巳之助という主人公が貧しさから抜け出し、貪欲な向上心をもってビジネスを軌道に乗せていく様や、
そのビジネスが終わるということを受け入れられずに、周りに毒をはきまくった挙句、一度は事件を
起こしかけるという心の葛藤が、現代のスピードの早いビジネスの移り変わりと見事に重複する。
当時はこのタームが数十年という単位だったが、今は数年、下手すると数ヶ月というペースになった。
この本が訴えたかったことはなんなのかイマイチ掴めずにいるが、私個人としてはこう捉えた。
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ビジネスモデルはどんなに努力したところで別のものに取って代わられる日が必ず来る。
それはどんなに勉強熱心で向上心が豊かな人であっても受け入れがたいタイミングとスピードで
ある日突然やってくる。
その時に、最後まで抵抗するか、そそくさと諦めて次に行けるかは、本人の選択次第。
新しいビジネスを立ち上げる身分にある人間は、そのビジネスが必ず終わるという自覚と
自分とその家族が路頭に迷うことがないよういつでも「損切り」できる勇気と覚悟は
持たなければならない。
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この物語の最後で、巳之助はランプのビジネスを辞めたあと本屋に転身し、商売を息子に預けている。
この本が書かれたのは1996年であり、当時は本屋は普通に繁盛していたはずだ。
しかし昨今の本屋の状況を見ると、巳之助と彼の息子はきっとまたビジネスの損切りを考える
局面に来ているはず、というのはなんとも感慨深い。 -
2018.09.25