白鯨(上) [Kindle]

  • グーテンベルク21
3.50
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 14
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (426ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 文豪メルヴィルの「白鯨」は、19世紀アメリカが舞台。主人公のイシュメールは、捕鯨船ピクォード号に乗って、白い巨大な鯨モビー・ディックを追う船長エイハブと出会います。エイハブはモビー・ディックに足を食いちぎられた過去があって、白鯨を仕留めようと復讐心に燃えています。とはいえモビー・ディックはそう簡単には捕まらない鯨で、イシュメールを始めとする船員たちは、エイハブ船長の復習劇というドキドキの冒険に巻き込まれることになります。本書「白鯨」の上巻では、イシュメールの乗船やエイハブの登場、モビー・ディックの噂までが描かれています。

    この本のテーマとおすすめポイントを一つ挙げると、それは「人間と自然の闘い」。人間の文明と自然の狂気が対象的に描かれています。本書のモビー・ディックはただの鯨ではなく、人間の理性や道徳を超えた存在でもあるのです。そんなモビー・ディックに対して、エイハブ船長は、憎しみや執着だけではなく、畏敬の念も抱いているところが、物語に深みを与えているのだと私は感じました。

    この本を読んで、私はまず文体に感動しました。詩的でリズミカル、時にユーモラスで哲学的で、読んでいて全く飽きがきません。また、イシュメールは冒険好きで好奇心旺盛な青年、エイハブはモビー・ディックに執念と狂気を持った船長。他にもポリネシア人のクイーククエグやエイハブの部下スターバックやスタッブなど、個性的なキャラクター達も物語を彩ります。

    本書は、白鯨モビーディックに対するエイハブ船長の復習とも尊敬ともとれる並々ならぬ思いを通して、人間の本質や自然の神秘に迫る物語。読むのに時間や労力はかかるけど、読む人によって色々な解釈が生まれる不思議な読後感があります。冒険小説が好きな人、人間と自然の関係に興味がある人や、深いテーマに挑戦したい人、美しい文体に酔いしれたい人に特におすすめです。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーマン・メルヴィルの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×