反教育論 猿の思考から超猿の思考へ (講談社現代新書) [Kindle]

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  • 抑圧された自己を解き放ち、内なる野生を取り戻すこと。自分の人生を振り返ると、いかに狭い価値観の中に押し込まれ、もがき苦しんでいたかが分かる。特に心に染み渡るのは野生、という言葉。これまでの均一的な価値観ではこれからは生きて行けない。自分の心の中にある、こうありたい、という気持ちを第一に考え行動しなければならない。

  • 自分は、親であり、教える立場でもあるので、共感するところ、学びが多々あった。
    ・現代社会が、「流動性能力」を測定する試験ばかりを重要視していることに違和感を感じる。現に自分も受験勉強で詰め込み暗記をしてきたが、ほとんど記憶に残っていない。
    ・言うことをよく聞く服従する子に育てることが危険をはらんでいるとが分かった。
    ・幼い子供の発する「なぜ?」「どうして?」という貴重な好奇心の萌芽にはきちんと向き合いたい。
    ・料理のレシピ本をよく利用するが、たしかにプロセスしか書いてなく、基本原理を知り、応用できるようにすることが大事だと思う。
    ・小学校の給食の時間に最後まで食べるまで取り残されていた児童がいた。好き嫌いが許されない風潮だった。一人一人の個性をもぎ取っていた。
    ・自分自身もこれまで「大学に入るため」「将来に役に立つから」「高収入が得られるチャンスがあるから」という他動的な理由から学んできたのが自分の身になっていない理由だと実感した。
    ・善意の押し付け、ありがた迷惑の話から、被災地に贈られる千羽鶴が思い浮かんだ。
    ・20年ほど前の愛知県は、学力レベルの低い学校ほど校則が厳しい風潮だった。やはり性悪説からくるのかな。
    ・日本の小学校の朝礼ではまっすぐに並ぶのが当たり前とされているが、外国人から兵隊みたいと言われたことがある。
    ・体育会系運動部の上下関係は、恐ろしいと思う。転校経験があるが、学校によって随分差があった。なくしたい因習の1つ。
    ・オリンピックにしろ、音楽コンクールにしろ、その後の生き甲斐を失わないように、常日頃から内なる心ときちんと向き合う必要がある。
    ・私の娘たちも太陽を黄色で描く。アメリカでは多い。赤で描くのが普通という固定観念から抜け出すためには、慣れた環境から一歩離れて客観的にみることかと思う。
    ・学ぶことは、教えてもらうのではなく、見習う事。主体性が大切ですね。

  • 考えさせられる良書。大切なのは教育ではなく、学習、すなわち受動的なものではなく、能動的なものである。もっともな主張。学校教育って、元々国にとって御しやすい都合の良い人間を作るために受けさせるものというと、やや左がかって聞こえるが、こう言われると納得。確かに無理に教え込んでも、それはサルの調教に似て、猿芝居を無理やりやらせているに過ぎない。
    ただ、実は能動的に学習できる人は、ある程度できる人に限られる。ちょうど著者のように東北大学の医学部に入学できるくらい頭の良い人に。自分の息子を見ていると、残念ながら能動的に学習するのは、百年河清を待つようなものにも思える。
    しつけは、社会のルールを教えることであり、人格や良心の問題ではなく、知っておくべき処世術としてドライに伝授すべきというのも面白い考え方。そのように考えれば、言うことを聞かない子供にヒートアップすることもなくなるかも。ただ、ドライに言って聞いてくれなくても、無視して痛い目に会うのは本人の問題とドライに割り切るということかな。
    ただ、ところどころ論理が飛躍しているところがあり、お~い、どこへ行くんだ~という箇所がある。例えば、道徳が悪を生むという逆説という話の中で、善があるから悪がある、道徳が悪を生むという話の流れで、速度制限なしのアウトバーンでは暴走行為など存在しないって、それは言いすぎ。どこの国でも腕を省みず暴走する奴はいます。速度違反は存在しないというならある意味正しいんだけど、制限されてる区間もあったりする。

  • おおよその主題に関しては頷ける部分も多かった。
    カウンセリングの現場の話やピアノの話は説得力があったが、科学やしつけ・教育の話はあまり知らずに、体験せずに語っている感がぬぐえない。
    なんだか所々自己矛盾が感じられる。

  • 反教育、という風に題されてはいるが、もちろん闇雲に現行の教育制度および環境に異を唱えているわけではない。著者が本文中、また後書きでふれているように、正反合の合、いわゆるジンテーゼを目指しているとのことだ。
    かなり乱暴に要約すると、野性的、懐疑的精神により、真なる思考力を身につけるべき、といったところか。
    優れた思考は反抗の中で生まれる、という主張のもと、懐疑的精神を持つことの意味。想定外の事態に対応する即興性こそが重要、などということ述べている。この二つの単語(懐疑的精神・即興性)は特に重要視されている。
    ほかのすべての事柄にも言えることだが、もちろん、この本の言うことを鵜呑みにしてはいけない(もちろんこの文章自体もだ)。
    当書籍を否定しているわけではない、盲信はするなということである。

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著者プロフィール

泉谷 閑示(いずみや・かんじ)
精神科医、思想家、作曲家、演出家。
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。パリ・エコールノルマル音楽院留学。同時にパリ日本人学校教育相談員を務めた。現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京/広尾)院長。
大学・企業・学会・地方自治体・カルチャーセンター等での講義、講演のほか、国内外のTV・ラジオやインターネットメディアにも多数出演。また、舞台演出や作曲家としての活動も行ない、CD「忘れられし歌 Ariettes Oubliées」(KING RECORDS)、横手市民歌等の作品がある。
著著としては、『「普通」がいいという病』『反教育論 ~猿の思考から超猿の思考へ』(講談社現代新書)、『あなたの人生が変わる対話術』(講談社+α文庫)、『仕事なんか生きがいにするな ~生きる意味を再び考える』『「うつ」の効用 ~生まれ直しの哲学』(幻冬舎新書)、『「私」を生きるための言葉 ~日本語と個人主義』(研究社)、『「心=身体」の声を聴く』(青灯社)、『思考力を磨くための音楽学』(yamaha music media)などがある。

「2022年 『なぜ生きる意味が感じられないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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