雪国(新潮文庫) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
3.41
  • (17)
  • (35)
  • (37)
  • (11)
  • (7)
本棚登録 : 614
感想 : 51
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (143ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 初読でした。
    率直に言えば難解で読みにくく、残念ながら私には魅力が伝わらない作品でした。
    島村と駒子、葉子の三者三様の生き方、苦しみが描かれています。島村の目線でストーリーが展開しており、そこでこの作者独特の手法ですが、当事者でありながら傍観者のような描写のため、それぞれの心情が分かりにくい。

    最後は唐突に終わりを迎えてしまうので、ストーリーというよりは自然描写の美しさ、雪国での人々の暮らしに思いを巡らせていました。

  • この小説は私にこのようなことを空想させた。
    島村にとって、トンネルを越えた向こうの世界は、異界、こちら側は浮世である。列車の窓に映る窓の向こう側の灯りと、こちら側の女、葉子の顔が重なって、それがまた、別の何かに見える。それは妖しく美しい。異界へは、気に入った女、駒子に会いに行く。島村は駒子からは好かれ、島村も駒子を好いている。駒子は、その気分で、島村の所にやってきて、気 ままに過ごし、帰っていく。そのことや、駒子の気遣いは、島村にとってとても心地よい。この異界は島村にとってのおとぎの国、浮世から逃避する空想が作り出した島村の頭の中 にだけにしかない世界ではないのか。駒子は葉子がやがて気が違うという。繭蔵の火事でそこにいた葉子は気を失って蔵から落ちる。駒子は葉子を抱き上げ、また、葉子が気が違うと言う。繭蔵にいた葉子は蚕に重なる。そして、気が違うとは、成虫になること、つまり、島村と好き好かれの仲になることではないか。とすると、駒子は既に、気が違っていることになる。島村のおとぎの国は、一段階エスカレートして、続いていくことになる。

  • 初めて川端作品を読みました。お風呂に持ち込んだ時に表紙がお湯浸しになって新品の本が一気に老けましたが笑

    なんかもう、さすが新感覚派というか。
    電車にうつる女性と外の景色(山々)の映像的融合から見い出す美について考えるだけでご飯三杯行けます!(by川端)てくらい詳細で繊細で文学的で奥ゆかしくて綺麗でそれでいてどこか冷めている、(と私は感じたのですが)とにかく全体的に、研ぎ澄まされた第三者的な視点を感じました

    駒子という芸者の気持ちが分かる気がして切なくなる!情熱的なのにそれを隠そうとしているのが逆に味わい深かった

    終わり方、何を期待していたわけでもないけれど、突然終わってしまったような…。ストーリーよりも表現を楽しませてもらいました

    一番好きなのは最後の方の天の川の描写が畳み掛けるように続くところ。わからないけれど、別れの暗示が読み取れる気がして、美!

    こういう感覚に特化した作品って、そうそう現代にはないよな~。少なくとも私はこんな本初めて読んだので…・ω・
    そして真似出来そうにない種類の書き方だと思う雪

    一年前に手に入れたのに本棚でおほとのごもり中の伊豆の踊り子も、いずれ読もう。

  • 景色の描写が際立って美しい。
    雪山のしんとした感じを、香りや視覚と共に思い出させられる感じ。絵を見ているようだった。

    雪山に行きたくなった。

    この話は湯沢が舞台らしいけれど、もっと晴天なイメージになった。

    海外から読んだときに郷愁にかられる、とあとがきにあり、当時戦争に行った人が読んだらそりゃあ帰りたくなるわなぁと頷いてしまった。

    最初と最後が違う時期に書かれたというのも納得。作風が変わったような感じがしてしまった。白→赤。

    評価されていた理由が知りたいのでいろいろ読みに行こうと思う

  • 寒い雪国の情景は良く伝わってくる。ただ自分には登場人物の心の移り変わりに感情移入出来なかった。もう少し駒子の芸者としての振る舞いや心の移ろいを感じてみたかった。

  • だいぶ前に,紙の本で読んだ気がするのだが,ここbooklogに記録がないので記録を始める前なのだろう。道理で記憶も朧気だ。ちょうどNHKで高橋一生と奈緒共演のドラマが放送されていたのを観たので再読してみた。高橋一生さんがあさイチのプレミアムトークでこのドラマのことを色々話していて,あまり原作の会話に手を入れていないでセリフにしているということだったが,細かいことを気にしなければ,たしかにその通りで,ドラマを見た直後だったこともあり,ドラマの情景を思い浮かべながら読んだ。奈緒さんが好きなのでより一層駒子に肩入れするような感じで読んでしまった。
    ドラマも原作と同じ場面で終わるのだが,この後二人はどうなるのだろう。今風の言葉で言うと不倫関係と言えるのだろうが,それではあまりに無粋になってしまう。
    とは言え,島村は東京の家族か駒子かどちらかを選ぶしかないわけで,読み手には東京の家族の情報がほとんど与えられないので,自然駒子に同情するような心持ちになる。ただなかなかに波乱万丈で報われない来し方にあって,世を儚んだり悲しみに暮れて生きているわけではない駒子には救いを感じる。駒子はまだ若いし,島村よりもっとふさわしい男がやがて現れて幸せにしてくれるのではないか。

  • 情景描写が美しくて、読後、1時間も散歩をしてしまった年末。

  • トンネルを抜けるとそこは、で有名な「雪国」を読んだ。正直いいます。しんどかった。読み続けるのが。文章が古いので読みづらいだけでなく、時間の流れの切れ目がよくわからず混乱することが多かった。しかし、驚いたのは情景の描写のボリューム感。このあたりの美しさ(?)がノーベル賞の評価者の琴線に触れたのだろうか。いずれにせよ、現代の分かりやすいエンタメに触れすぎている私には芸術性が高すぎたよう。

  • 友人と、冬をテーマに読もうという企画で選んだ本。初の川端康成。初のノーベル文学賞作家。
    冒頭が有名なことしか知らなかったが、まさか東京の妻子持ちの男が雪国の若い芸者に通う話だったとは。登場人物の誰にも共感できず、どこが面白いとも言えないのだが、意外とサクサク最後まで読み切った。唐突に終わりが訪れるところは見どころの一つかもしれない。最初から最後まで、冬の冷たい張り詰めたような空気が流れていた。文章は古いためか馴染めるものではなかった。
    170224読了。

  • 金持ちボンボン、遊び半分、常に第三者的な島村と、一途で純粋な駒子
    相変わらず、風景描写・言葉遣いは秀逸の一言

著者プロフィール

一八九九(明治三十二)年、大阪生まれ。幼くして父母を失い、十五歳で祖父も失って孤児となり、叔父に引き取られる。東京帝国大学国文学科卒業。東大在学中に同人誌「新思潮」の第六次を発刊し、菊池寛らの好評を得て文壇に登場する。一九二六(大正十五・昭和元)年に発表した『伊豆の踊子』以来、昭和文壇の第一人者として『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』などを発表。六八(昭和四十三)年、日本人初のノーベル文学賞を受賞。七二(昭和四十七)年四月、自殺。

「2022年 『川端康成異相短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川端康成の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×