文化大革命 (講談社現代新書) [Kindle]

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  •  文化大革命の時期はおおよそ1967年から76年までの10年間とされる。本書はその内容と経緯についてまとめたものだが、文革終了の13年後に当たる1989年10月に出版されている。まだ多くの人にとって文革の記憶が生々しく残っていたであろう。

     文革は一言で言えば狂信的な共産主義者の暴走だが、反対者が悪と断じて糾弾される様子はディストピア小説のようで恐ろしい。毛沢東への個人崇拝があったからこそ実現したのだろうが、一歩間違えばポルポト派のカンボジアのような悲劇になっていたかもしれない。いや、犠牲者の数としては実際そのレベルだ。

     本書の文革の内容に関する記述は比較的あっさりしており、むしろそれを巡る政治家たちの権力闘争が中心になっている。毛沢東と江青ら四人組、林彪、劉少奇、周恩来が何をしてどうなったかがドラマチックに描かれている。中国人の権力闘争というのは日本人のそれとはレベルが違い、比喩抜きで殺すか殺されるかという戦いだが、それが文化というものなのだろうか。

     それから指導者は何代か変わり、国民の生活もだいぶ豊になってきているが、現在の指導者である習近平は毛沢東並みの権力集中を図っているとも噂される。文革と全く同じことは起きないとしても、何かのきっかけで似たような暴走が起こることはありえなくもないと思う。

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著者プロフィール

1938年生。東京大学経済学部卒。東洋経済新報社記者、アジア経済研究所研究員、横浜市立大学教授を経て同大学名誉教授。朝河貫一博士顕彰協会代表理事、21世紀中国総研ディレクター。『朝河貫一とその時代』(2007年)、『日本の発見――朝河貫一と歴史学』、『尖閣問題の核心』、『敗戦・沖縄・天皇』、『南シナ海領土紛争と日本』(2016年)、『沖縄のナワを解く』(2017年)、『習近平の夢』(2017年)、『中国の夢』(2018年)、『コロナ後の世界は中国一強か』(2020年)など著書多数。

「2021年 『天皇制と日本史 朝河貫一から学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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