ぼくんち 下 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
4.18
  • (4)
  • (6)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 34
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (1ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 弱くて、優しくて、背負えない苦労を背負おうとして首が回らなくなる。貧乏クジを引き続ける。それでも、泣いて、笑って、運が良けりゃ生きている。
    あたたかい人達なだけに、より痛々しくて、切なくて、見てられない。かの子の求める幸せは、子供の手ですくえるほどに小さい。しかし、男達は一回きりの大きな幸せを彼女にあげようと命をはる。結果はともかく、その後は消える。身勝手で迷惑な話だ。小さな幸せを、できるだけ長くあげろよとは思う。しかし、憎めない。彼らは良いやつだ。だからこそダメな奴だ。

    子供や大人の人間的な醜さを隠さず、書いているのもいい。子供は天使ではないし、大人も神ではない。どちらも弱くて、醜いところがある。弱者を踏みつけ、食い物にして生きていく。そのドロドロした関係の中で、キラッと輝く瞬間が稀にあり、人間にも綺麗なとこがあるんだなとびっくりしたりする。西原さんは、泣き言しか言わない悲観主義を軽蔑する。綺麗事しか言わない理想主義にキレる。「現実を見ろ」と脅迫的に迫ってくる。何が彼女を現実至上主義にしてしまったのか。むしろ現実を見ることを徹底して他人に求めることで、自分にも「現実を見ろ」と言い聞かしている節がある。現実を見なかった結果、産まれてしまった不幸と、これから産まれるであろう不幸を恐れているのだろうか。とにかく、なにかを恐れて振り返るのが怖くて、無理矢理前を向く、攻撃に回すという、「窮鼠猫を噛む」の鼠役をずっとやっている、そして自分にも他人にもそうあらねばならないと言い聞かせ続け、それ以外の甘っちょろい考えにはキレ続けている、常時鉄砲玉みたいな人が西原さんだと勝手に思っている。この作品の中で言うと、かの子のようになることを心底恐れていて、彼女を叱り飛ばすことでそうなるまいと自分を鼓舞するだろう。

  • -

  • 幸せっていったいなんだろうね。

  • いやー最後は衝撃でした。
    でも、そういわれればそうかもなーと頷いたり。
    いや、でも……と首を振ったり。
    どうしようもないんですけどね。

    日本でさえ未だにああいう生活をしている人がいると思う。駅のホームレスとかいるよね。でも、圧倒的少数派みたいな感覚になっちゃっている。本当はそこかしこにいるのかもしれないのに。でも、何もできないんですよね、やっぱり。誰が悪いわけでもないから。
    上海はうじゃうじゃいました。足なかったり、手がなかったり、赤ちゃん抱えてたり。みんなそれぞれの事情があるみたいでした。マクドナルドに入ってきて物乞いしてる強者には驚いたなあ。日本じゃまずありえないもの! で、足を止めてるのは中国人じゃない。日本人っぽいんですよね。そういうところで現実をきちんと見てきたか別れてるのかも。

    貧乏は他人がどうこう出来ないと思っています。
    北野武さんのお母さんは、「勉強ができないと将来ぜったいに損する」とかなんとかで息子さん2人を大学に入れました。今や世界的な映画監督兼いろいろ&どっかの教授です。
    反面、あしながおじさんによって浮上した人って見たことも聞いたこともない気がします。
    歯を食いしばって上ってきた人はきっと強い。わたしなんか、最初っから生まれた所のおかげでモラトリアムを得た。それってなんだか怖いんですよね。何もわかってない気がする。
    このまま無知でいたら、「貧乏」を知るのかもしれない。そうならないために、わたしはわたしなりに歯を食いしばって笑顔で生きていきたいと思います。

  • ねえちゃんと魚を食いながら、
    おれは毎日少しの魚と本を読む
    布団一枚分くらいの場があれば、
    行きていけるんじゃないかと思った。
    ねえちゃんに話すと、
    「それはいい、大変いい」
    と、笑ってくれた。

    欲を少なくすれば満足度が上がる。きっと。
    でも、人間の欲は限りがないものでもっともっと欲しくなる。
    こういちくんには幸せになってほしいなあ。
    彼らのこれからを想像させてくれるような終わり方が
    見事やなあとおもった。
    救いがないと辛いから。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

高知生まれ。漫画家。’88年『ちくろ幼稚園』で本格デビュー。’97年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞を受賞。’05年『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「2021年 『猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 コロナ後の幸福論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西原理恵子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×