十二夜 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 諧謔と哄笑が渦巻く、一夜限りの祝宴。ここで展開されるのは、日常を忘れた賑やかな馬鹿騒ぎであり、そして日常に戻る前の儚い非現実的なひとときでもある。のちの四大悲劇の布石とも読める、シェイクスピア喜劇の傑作。

  • 登場人物の思惑が複雑に交錯するので、話の筋を追うのにちょっと苦労した。
    主筋のヴァイオラ → オーシーノ → オリヴィアの三角関係にくわえて、副筋としてマルヴォリオ → オリヴィア ←アンドルー の関係もあるので、恋愛感情にまつわる情報処理量がとても多い。

    またかれら登場人物は、自分が幻想で思い描いただけの架空の相手に恋をしたり(オリヴィア→男装したヴァイオラ等)、また自分自身も生身の自分とはかけ離れた虚構の人物を演じたり(伯爵になったと夢想するマルヴォリオ等)するので、その二重の人物像がさらに理解を複雑にさせているのだと思う。
    (このへんは解説で語られていて、なるほどと思った)

    そして序盤に少ししか登場しないセバスチャンとアントニオが存在を忘れかけた終盤に再び登場するので「誰だっけこの人たち?」と冒頭のページを読み直す必要があった。
    嵐で船が沈没して兄妹ともに海に投げ出され、互いに消息がつかめなくなったという話は、ヴァイオラの台詞で語られるだけで、実際に嵐に遭遇する場面が描かれるわけではないので忘れやすい。
    兄妹の出会いもかなり唐突に感じた。

    ヴァイオラとアンドルーの決闘からはじまるアントニオ、サー・トービー、セバスチャンのドタバタ劇は、なんでそんな展開になるの? と置いてけぼり感。

    またオリヴィアはあくまでセザーリオに恋をしていて、セバスチャンが好きだったわけではない。
    だが真相がわかった後で『兄を演じた妹→兄そのもの』というセバスチャンの理屈で結婚してしまうところはどうなんだ?
    オリヴィアも本当にそれで良いのか? とはなはだ疑問。

    ハッピーエンドの裏側で、ひとり屈辱をなめさせられたマルヴォリオはたまらない。ある人の幸福は、ある人に辛酸を舐めさせた上で成り立つという示唆に感じ、後味がわるい。
    『ヴェニスの商人』でシャイロックが裁判でやり込められても、この本ほどには同情せずに済む勧善懲悪のすっきりした感があったのとは大きな違いだ。

    マルヴォリオはシャイロックほど富への渇望はダイナミックではない。
    召使いの自分という現実を常に脱したいと思っているわけではなく、マライアやトービーにそそのかされて、はじめて「俺は高貴で教養のある伯爵になれるかも」と野望を抱く。
    『カラマーゾフの兄弟』のイワンや『悪霊』のスタヴローギンでおなじみの「そののかし」による犠牲者である。

    ひそかに女主人オリヴィアを自分の所有物としてしたがえてみたいと欲望を抱きつつも、きょうのところは行動せずに妄想するだけ、という姿が卑小にうつる。
    この卑小さこそ、デフォルメされたシャイロックと比べると生身の人間に近い。
    すなわち、生身の人間たる読者はマルヴォリオの中に自分自身を見ることになる。
    後味のわるさは、そのあたりにあるのではないだろうか。

    また、マルヴォリオの「寝ましょう? ええ、寝ましょう!」など勘違いから来るお笑い会話が連発される場面はアンジャッシュのコントを思い出す。
    彼らのコントのルーツは遡ればシェイクスピアにあったのかもしれない。

    この『十二夜』を転機としてシェイクスピアは悲劇を連作していくそうで、カラッとした喜劇ではないのも納得がいく。

    最後の場面、人生はいつも雨と風、という悲哀をうたう道化フェステの歌は印象深い。

    のちにシェイクスピアが描く『マクベス』の独白「life's but a walking shadow, a poor player.(人生は歩き回る影法師、哀れな役者だ)」を思い出した。

  • 「十二夜」という言葉の意味については調べてみたがよくわからなかった。たぶんそんなに難しくはないと思うが、なじみがない。
    主人公はヴァイオラという女性。船が難破して双子の兄セバスチャンと生き別れる。お互いに、兄妹が死んだと嘆くが、実は両方とも生き延びている。
    そんなことは知らずに、ヴァイオラはとにかく陸に戻り、男装して、オーシーノ伯爵に仕える。伯爵はオリヴィアという女性に恋しているのだが、色よい回答をもらえない。そこで、男装したヴァイオラを伝令に出す。
    オリヴィアは伯爵には興味がないのだが、伝令にきたヴァイオラに出会い、相手が女性だと気づかずに恋をしてしまう。オリヴィアに言い寄られて困惑するヴァイオラは、オーシーノ伯爵に恋をしていたのだった。
    そこにオリヴィアの叔父であるサー・トビーや、オリヴィアの求婚者であるアンドルーといった人々のドタバタもあり、全体的ににぎやかな喜劇になっている。
    シェイクスピアの作品を読んでいると男性的というか、女性の地位の低さを感じさせる描写が多いのだが、本作はそういったところがなく、むしろ女性が中心になっている印象を受けた。
    後半、かなり過激な暴力があるのだが、解説によると、このあたりから、シェイクスピアが悲劇を描くようになる前兆も見て取れるという。
    自分はそこまでシェイクスピアに詳しくないので、作品の流れを踏まえてのレビューはできないのだが、ドタバタの恋愛劇として楽しめるのではないか。

  • 中学の頃読んだ

    シェイクスピアはテンポよく読める
    時間もかからない
    なにより面白い!

    マルヴォーリオwww
    いいね、マルヴォーリオーwww
    演じるんだったら彼だな
    ボクちゃんアンドルーもいいな
    阿呆のフェステでもいいっ
    脇で騒がしくしてる役だったらなんでもw

    いつか、原語で読みたい……
    古英語 orz

  • うーん。なんか最後のいきなりハッピー、みんなハッピーという展開についていけなかった。が、解説を読んでそういうことね、と。個人的にはシェイクスピア作品は悲劇の方が好みかもしれない。

  • ・いろいろと超展開の話。おもろい
    ・最後にデウスエクスマキナが出てくる。

  • なんか最後のハッピーエンド感が納得いかないなぁ。百歩譲ってきょうだいの魂さえ同一ゆえ、まではまぁまぁまぁ好きじゃないけど許せても、オーシーノ、いいのかそれで。筋が通らないではないか。

  • シェイクスピアの喜劇を読むのはこれが初めて…だと思うのだけど、すごく面白かった。単にウィットが利いていて息遣いの聞こえるようなやりとりが面白いだけでなく、その元ネタとなる物語を辿ったりそこに隠されたメッセージを推察したりすることが面白い。単なるドタバタ劇→大団円と見せかけて、裏に隠されているものをあれこれ考えるのもまた楽しい。解説読んでなるほどな、そうまとめるのか、と思った。そして翻訳者さんの仕事ってすごいなー!と感激いたしました。

  • 十二番目の夜というタイトル。ハレとケの往復。ニセモノを愛してしまっているという行動など、深く考えたいテーマが多い。

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著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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