はじめての構造主義 (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 私には難しくて、なかなか理解できませんでした泣
    また読みたいと思います!

  • 大学2年の頃に、ミシェル・フーコーの講義録をゼミで読んでから、ぼくはフーコーファンなのだけど、彼はどうやら「ポスト構造主義」の人らしい、ということをその後知りました。構造主義?建物の骨組みの話か?しかも、あたまにポストまでついてる。ということで、構造主義とやらを探るべく買って読み、ずっと棚にしまってあった本です。先日読んだ本でレヴィ=ストロースが取り上げられていて、復習にちょうどいいと思って再び手に取りました。

    構造主義とは何か。それまでの思想は、西欧的な考え方や歴史的な見方が根底にあり、人間の理性が前提になっていたのに対し、構造主義においてはそれらを排除した人類の根本的な諸原理(=構造)を明らかにすることを試みました。

    といってもよくわからないので、構造主義の第一人者であるレヴィ=ストロースの実際の研究を見ていきましょう。レヴィ=ストロースは人類学者なのですが、ブラジル奥地の「未開」の民族における婚姻関係について調べます。いろんな民族に共通していたのは、「近親相姦のタブー」でした。これは、現代社会でもありますね。日本の法律でも禁止されています。

    なぜ近親相姦は禁止されるのか。そんな、わざわざ禁止なんかしなくても親とか兄弟とはしないよ、と思うかもしれないけれど、それを題材にしたマンガとか小説なんていっぱいあるでしょう?「常識的」に考えれば「ナシ」かもしれないけれど、それは今の社会規範に囚われているだけかもしれないわけで、それを取っ払えば「アリ」になったって不思議ではない。

    機能主義的な立場においては、近親相姦は血が濃くなりすぎて遺伝的に悪い影響があるから、これを禁止することが理にかなっていると考えます。また、進化論的な解釈を加えると、禁止しなかった種族は滅び、禁止した種族だけが生き残るわけですから、これで説明ができたような気がします。他方、レヴィ=ストロースはどう考えたかというと、親族は女性を交換するためにあり、家と家の間で女性を交換するためには、同じ家のなかでの女性の(主に性的な意味での)利用価値が否定されなければならない。

    いきなり女性の交換の話をしたので、「?」となったかもしれません。M・モースが「贈与論」で取り上げた「クラ交換」という風習を紹介しましょう。これはニューギニア島の沖合で、島から島へクラという宝物を交換してまわるという儀礼であり、いくつもの部族が参加する大がかりなもので、一巡するのに何年もかかる。島から島に行くのもお手製の船で行くわけだから、途中でひっくり返ってサメに喰われるかもしれないし、大きなリスクをはらむわけだ。じゃあ、クラというのはたいそうな宝物だろうと思うかもしれないけれど、ちょっと珍しい貝殻でできたただの首飾りか何かで、たいしたものではない。となると、なんかすごく無駄なことをしてるように見えちゃうよね。

    とはいえ、彼らにとって、クラはたいへんに価値のあるものだ。それは、それ自体に利用価値があるからではなくって、交換されるから価値がある。ピンとこないかもしれないけれど、現代社会における「お金」もおんなじようなものでしょ。1万円札自体には燃やして暖をとるくらいしか利用価値はないけれど、みんなが交換するから価値がある。だから、現代人も一種のクラ交換をしているとも取れるね。クラ交換の際には、大事なクラを持ってきてくれた代わりに、お礼としてタロイモとか豚肉とかを返す。そういった具合で部族間の繋がりが維持されていた。

    さて、話を女性の交換に戻しましょう。近親相姦のタブーにより、自分の家の中では利用価値がなくなったので、交換に出せる(女性に利用価値がないとか書いたからといって怒らないでね。フェミニズム的な批判も浴びているこの理論だけど、「未開」の話をしていて、そういうもんだと思っていったん我慢して欲しい)。これによって、家と家との繋がりができるわけだけど、もうちょっと調べていくと、不思議なルールがある。自分が男性だとして、父方のイトコとの結婚はダメだけど、母方の交叉イトコとの結婚は良いというルールがあるのだ。これは、遺伝学的にはわけがわからない。だって父方だろうが母方だろうがイトコはイトコ。血の濃さは同じだ。片方だけタブーにするのはおかしい。

    これ、女性の交換の観点でみると説明がつくのです。男系の家系の視点に立つと、息子を母方のイトコと結婚させることは、母方の家から娘をもらうことを意味します。母方の交叉イトコとの結婚を続ければ、交換が続いていくが、ここで急に父方の交叉イトコと結婚させると、一度もらった女性の娘を戻すことになり(受け取ったものを突き返す)、交換の循環が成立しなくなるからタブーとされたのです。(ここ、ちょっと分かりにくいので、家系図を書いて確認してみてください)

    こんな感じで、発展した西欧の視点で見ると、「未開」社会はわけがわからないルールもあるし、野蛮で劣っている、と考えてしまいがちですが、そういう視点を取っ払ってじっくり見ていくと、「女性の交換」という原理(=構造)が浮き上がってきたわけですね。視点の差異が無視されることで、対象の構造が見えるようになる。レヴィ=ストロースは、主体の思考(ひとりひとりが責任をもつ、理性的で自覚的な思考)の手の届かない彼方に、それを包む、集合的な思考(大勢の人びとをとらえる無自覚な思考)の領域が存在することを示したのでした。

  • インタビューデータの質的分析は主観的にならざるを得ない.インフォーマントの語りも事実を語っているわけではなく主観に引きずられている.そのようなデータをどう分析すれば良いかと言う点で構造主義が関係してくる.というわけで,構造主義の超入門書を読んでいるが『はじめての構造主義』がとてもわかりやすい.

    この本は数学や物理学と結びつけて「構造」を語っているのだが,客観的に存在する物体を見ている主観的な私(主体)との関係で世の中が見えていることを示していて,私(主体)の視点が異なれば客観的な世の中の見え方も変わること,その中で不変なのが構造であると言っている.ユークリッド幾何学で記述できる我々の世界と,脳に投影されている射影幾何学の空間は数学的な変換で関連付けることができる.変換によっても不変なのが「構造」である.こういう説明を読んでなるほどと思った.

  • プハーッ。聞き慣れない単語と話でお腹いっぱいになりました。世の中には自分が全く考えたこともない事をマリアナ海溝より深く掘り下げて考える人達がいてるし、マリアナ海溝まで潜って行って一緒にあーだこーだと議論する人たちがいる、という見識を得ただけでもこの本を読んだ甲斐があった。
      自分が考えた事は、実は自分が一から生み出した物ではなくてその背後に隠れている社会的な構造が大きく影響してるって考え方が面白くって構造主義に興味が湧いて読み出したんだけど、考えたらほんまそうやなぁと思う所は沢山ある。
     関西人がみんな面白いことばかり言うっていうのとかは吉本とか松竹の社会的構造が関係してるのではと思うし、関西の各家庭に必ず一台はたこ焼き機あるって言うのもまたしかりやろう。え、違う?しらんけど。

  • はじめてのレヴィ=ストロースという感じでした。
    詳細について正確さを判断するほどの知識がないものの、時代背景や変遷などを含めた構造主義が出てきた素地についての考察が多かった気がしています。

  • 変換を繰り返しても変わらない、不変のものこそが「構造」である。そして、なぜそんな「構造」をしているのかといっても、そこには差異しかないのだ。

  • 構造主義の入門書は「寝ながら学べる構造主義」に続き2冊目。途中までふむふむと面白く読み進むも、数学のいろいろがでてきたあたりから、はあ?となった。わたしの理解力の問題か?

  • 数学と関係が深いのか。どうりでブルバキが出てきた。

  • 価値があるから交換するのではなく、交換するから価値がある

    こういう逆転の転換がすごい!

    自由であると思いつつ、実は目に見えない構造に支配されている
    発展しているようで、構造の中でのバリエーションがあるだけ

    優劣じゃない考え方を持つだけで、物事の見る目が変わる気がします
    心に留めておきたい思想です

  • 中学生のとき読んだのが、寝ながらわかる構造主義だとわかった。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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