明日の幸せを科学する [Kindle]

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  • 著者はハーバード大学の心理学者、テーマは明日の幸せを正しく予測することです。
    なぜ予想するのか?そもそも幸せとは何か?から始まり、予測に失敗する理由(本書ではトリックと呼ぶ)を挙げ、正しく予想する方法を明らかにします。

    いろいろなトリックが挙げられてますが、そのうち2つを紹介します。
    1.焦点の絞り過ぎ
    ・自分が応援するスポーツチームが勝った数日後の自分の気持ちを実際より強く予測するのは、それ以外の悪いことを考慮し忘れるから。

    2.幸せという感情は遺伝子に支配されている
    ・子育てや富の形成などを幸せと感じない人は子孫を残すのが難しく淘汰されます。
     遺伝子が感じさせる幸せが自分の幸せと一致せず不幸になる。

    自分の予測が当てにならないのなら、どう予測すれば良いのでしょうか?
    著者はたった今同じ経験をしている人の気持ちを参考にすれば良いと言います。
    でもここにもトリックがあって、人は自分は他とは違うユニークな存在だと思いたいのでなかなか参考にできないのです。
    トリックだらけですね。

  • 人間の脳が自己の未来を想像したり、どの未来がもっとも喜ばしいかを予測したりする仕組みと精度を、科学で説明しようとする本。

    多くの思想家が熟考してきた難問を論じる本。
    ➡未来の自分の感情や思考が今の自分にはほぼ理解できない理由を明らかにする。

    <はじめに>
    人生がまだ続くものと考えているときの行動は、いきなり終わると知ったときの行動と違って当然。

    われわれは、未来の自分をわが子のごとく扱い、日々多くの時間をかけて、その子が幸せになれる明日を築こうとする。

    唯一の解決法)
    自分自身の未来の感情を予測する1つの方法。
    自分が予測している出来事を今まさに経験している人探す。
    ➡どんな気持ちか尋ねる。

    ✘ 自分の過去の経験を思い出して未来の経験をシミュレーションする。
    ◯ ほかの人に心の状態を中から眺めてもらう。

    思い出したり想像したりするのを完全にあきらめる。
    ➡ほかの人を未来の自分の代理人にしてみる。

    <第1部 人間はなぜ予想するのか?>
    「予想」
    先を見通したり、未来について考えたりする行為。

    ●人間という動物だけが未来について考える
    人間の脳の最大の業績。
    ➡現実の領域には存在しない物事や出来事を想像する能力。
    =未来を考えることができる。

    人間の脳=”先読みする装置”
    ➡”未来を作る”ことがもっとも重要な仕事。

    前頭葉の特定の場所に損傷を受ける。
    ➡不安が消えて心が平静になる場合がある。
    +計画をたてられなくなる場合もある。

    「不安」と「計画」を結びつける概念。
    =未来について考えること。

    前頭葉
    =正常な現生人類の大人が未来に自分を投影するのに、不可欠な脳の装置。

    前頭葉がない。
    ➡今にとらわれて明日を想像できない。
    ➡心配することもない。

    今日の科学者の見解)
    前頭葉が”健康な成人に、時間を越えて拡張された自己を思い浮かべる能力をもたらす”

    前頭葉に損傷を受けた人たち。
    ・”現在の刺激にしばられた”人
    ・”直近の時空に閉じ込められた”人
    ・”時間の具体性を好む傾向”がある。
    ➡「のちのち」のない世界に生きている人たち。

    1日の思考の約12%が未来に関するもの。
    ➡8時間のうち1時間ははまだ怒っていない出来事を考えている。

    人が未来を空想するときの傾向)
    ✘ 挫折した自分や失敗した自分。
    ◯ やり遂げた自分や成功した自分
    ➡可能性を想像すること事態が楽しい。

    未来について考えるのがあまりに心地よい。
    ➡現実にそこへ行きつくより、ただ考えるほうを好む。

    ある実験結果)
    志願者に片思いの相手をデートに誘う方法を想像させた場合。
    親しくなるのに手のこんだすてきな方法を空想した志願者。
    ➡その後数ヶ月は実行に移さない傾向が見られた。

    ※われわれは想像上の最高の明日と戯れたがる。

    幸せな未来を想像すると幸せな気分になれる。
    厄介な影響)
    出来事を簡単に想像できる。
    ➡その出来事が実際に起こる確率を課題に見積もる。
    =非現実的なほど未来を楽観してしまう。

    脳がシミュレーションする悪い未来。
    ・煩わしいこと
    ・不快なこと
    ・そら恐ろしいこと
    など。

    好ましくない出来事を想像しておく。
    ➡受ける衝撃を最小限に抑えられる。

    間違った行いには嫌な結果が待っている。
    ➡正しい行いをする気を起こさせる。
    =特定の未来を防ぐ。

    恐れ読み
    ➡慎重で予防的な行動をとらせるのに効果的な場合がある。

    ●予想とコントロール
    そもそもなぜ未来をコントロールしたいのか。
    ➡「今、ここ」と「かつて、あそこ」だけで満足できないのか。

    意外な正答)
    人にとってコントロールすることが心地よいから。
    ✘ コントロールすることによって手に入る未来。
    ◯ コントロールすること自体が心地よい。
    ・変化させる
    ・影響をおよぼす
    ・ことを引き起こす。
    など。
    ➡人間の脳に生まれつき備わった基本的な欲求の1つ

    コントロールする能力を失う。
    ・惨めな気分になる。
    ・途方にくれる。
    ・絶望する。
    ・陰うつになる。
    ➡死んでしまうことさえある。

    コントロールへの欲求はとても強い。
    コントロールしていると感じることでおおいに報われる。

    コントロールが及ばないものまでコントロールできるかのように振る舞う。
    例)
    宝くじの場合)
    自分がくじの数字を選べるほうが当たる気がする。
    サイコロの場合)
    自分がサイコロを振れるほうが勝てる気がする。

    うつ病の人たち。
    自分のコントロールがおよぶ程度をほとんどの場面で正確に予測する傾向がある。

    <第2部 そもそも、幸せとは何か?>
    「主観性」
    経験は本人以外のだれにも観察できないということ。

    ●幸せの分類
    「感情の幸せ」
    「道徳の幸せ」
    「判断の幸せ」

    私は幸せだ➡感情の幸せ
    =もっとも基本的な幸せ。
    ➡気持ち、経験、主観的な心理状態の表現。

    〇〇だから幸せだ➡道徳の幸せ
    「幸せ」は、経験を示すのに一般的に使われる単語であって、それをもたらす行為のことではない。

    幸せは気持ちを指す。
    ➡徳は行動を指す。

    徳のある行動は幸せな気持ちをもたらす。
    ➡いつももたらすとはかぎらない。
    ➡これだけがもたらすというわけでもない。

    〇〇については幸せだ➡判断の幸せ
    〇〇が喜びのもとになるかもしれない。
    ・喜びのもとになったと述べているだけ。
    ・喜びのもとであるはずなのに現時点ではどうしてもそう思えないと述べているだけ。
    ➡喜びやそれに似た感情を経験していると言う表明ではない。

    幸せは主観的な経験。
    ➡自分自身にも他人にも説明するのは難しい。
    =他人の主張する幸せを評価するのはおそろしく困難な仕事。

    「Happiness is a warm gun.」
    (幸せは撃ち終えたばかりの熱い銃)
    英語の歌詞や文学作品などで使われるフレーズで、元々はジョン・レノンとポール・マッカートニーによるビートルズの歌詞
    ➡幸せや喜びが人々にとって異なるものであるということを示唆している。
    =幸せの感覚や充実感は、個人にとって異なるものであり、人々が異なるものに喜びや満足を感じることがあるという考えを表現している。

    <第3部 感覚のトリック>
    ~実在論に気をつけろ
    「実在論」
    物事は心に現れるままの姿で現実に存在するという考え。

    「もし〇〇だったらどんな気持ちだろう」
    =想像
    ✘ 浮ついた空想
    ◯ 人間にできる非常に首尾一貫した心的行為。
    ➡人は毎日やっている。

    例)
    ・だれと結婚するか?
    ・どこで働くか?
    ・いつ子どもをもうけるか?
    ・どこで老後をすごすか?
    など。
    もし「こっち」の出来事が起こって「あっち」が起こらなかったら?
    ➡どんな気持ちかと想像し、重きをおいて決定をくだす。

    未来に目を向ける。
    ➡まだ存在しない世界をシミュレーションする。

    選択肢が与えてくれる未来を想像する。
    ➡それぞれの未来でどんな気持ちがするか想像する。

    現在を誤って知覚させたりする欠点。
    =未来を誤って想像させる欠点。

    出来事のあとで得た情報が出来事の記憶を改変する。
    ①記憶行為には、保存されなかった細部の「穴埋め」が必要である。
    ②穴埋めは苦もなく瞬時に行われる。
    ➡人はたいてい、穴埋め作業に気づかない。

    ※穴埋め現象はとても強力で阻止できない。

    例)
    ベッド 起きる いびき
    休憩 いねむり 昼寝
    目覚め 毛布 平安
    疲れ うたた寝 あくび
    夢 まどろみ 睡魔

    引っかけ)
    リストにないのはどれか?
    ベッド、うたた寝、寝る、ガソリン。
    正解)
    「ガソリン」
    「眠る」

    たいていは「ガソリン」がないことはわかる。
    ➡「眠る」はあったと誤って記憶している。

    リストの単語がどれも密接に関連している。
    ➡脳は、読んだ単語を1つ1つ保存する変わりに要点だけを保存した。
    (要点=眠りに関する単語の集まりだな)

    ※要点が暗に示しているけれど実際にはリストにない単語を、誤って織り込んでしまった。

    単語を使った実験結果)
    ①人々は要約語を見たとぼんやり思い出すわけでも、たぶn見ただろうと推測しているわけでもなく、要約語を見たことを鮮明に記憶していて、間違いなくあったと確信を持っている。
    ②この現象は、事前に注意をうながしても起こる。

    過去の思い出の空白を満たそうとする強力で感知できない穴埋め。
    ➡現在の知覚にも同じように勢力をふるう。

    聴覚での実験結果)
    「eel(うなぎ)」という単語の直前に咳を録音した音を使った場合。
    (*=咳)
    「The *eel was on the orange」
    (オレンジに*eelがついていた)
    ➡「*eel」を「peel」(皮)」と聞き取った。
    「The *eel was on the shoe」
    (靴に*eelがついていた)
    ➡「*eel」を「heel(かかと)」と聞き取った。

    2つの文のちがいは最後の単語だけ。
    ➡文末まで待たないと「*eel」に欠けている情報を補えない。
    =脳は瞬時に補った。

    ※被験者には欠けている情報が正しい位置で発音されるのが確かに聞こえていた。

    2つの物事に相関関係があるかどうか?
    ふつうは”起きた”ことについて調べる。
    ➡”起きなかった”ことについては、アレコレ考えない。

    哲学者であり科学者、サー・フランシス・ベーコンの指摘)
    「欠如を考慮しないことがもっとも深刻だ」
    ➡熟考の対象は見えるものにかぎられ、見えないものにはほとんど、注意が払われない。

    未来を想像するとき)
    欠けているものがたくさんある。
    ➡欠けているものこそが重要になる。

    注目の焦点をしぼらないようにするのは難しい。
    =自分が考慮していない事柄はいったいなんだろうと考慮するのは難しい。
    ➡未来の出来事に対する自分の気持を誤って予測してしまう理由の1つ。

    ✘ 想像力が欠けている。
    ◯ 想像力をうのみにしてしまう。

    人が想像する未来)
    脳がでっちあげた細部がある。
    ➡脳が無視した細部が欠けている。

    ※人は脳がつくり出した穴埋めや放置に気づかない。

    脳がつくり出したものをそのまま受け取る。
    ➡脳の想像した細部どおりに未来が展開すると思う。
    ➡想像しなかった細部は起こらないと考えてしまう。

    想像の欠点)
    脳が断りもなしに勝手なことをする点。

    <第4部 時間のトリック>
    ~現在主義に気をつけろ
    「現在主義」
    過去や未来を見る観点が、現在の経験に影響される傾向。

    過去を誤って思い出す。
    ➡今の考えや行動や発言を、かつての考えや行動や発言として思い返す。

    過去の記憶の穴を現在の材料で埋める。
    ➡感情を思い出す場合にとくに強くなる。

    想像の中で出来事をシミュレーションする。
    ➡自分がそれにどう感情反応するかを確かめて予想する。

    想像は、目の前にない物体を「あらかじめ見る」
    (プレビュー)
    ➡未来の出来事に「あらかじめ感応(予感応)する」
    (プレフィール)


    予感応はときに、論理的思考より的確に感情を予測する。

    現実の物体と想像上の物体を同時に見るよう脳に求めた場合)
    ➡前半を叶え、後半は却下する。
    =脳は現実の知覚が最優先の義務だと考えている。

    脳に現実第一主義を貫く方針がないとしたら?
    例)
    青信号のことを考える。
    ➡本物の赤信号を無視して突っ切ってしまう。

    嫌悪感を抱いている時。
    ➡欲望を想像しにくくなる。
    怒りを感じている時。
    ➡愛情を想像しにくくなる。
    満腹の時。
    ➡空腹を想像しにくくなる。

    未来の出来事が脳の感情の領域を使用する許可を求める。
    ➡現在の出来事が通行優先権を握っている。


    2つのことを同時に見たり感じたりすることはできない。
    ➡脳は厳密な優先順位をつけている。
    =想像からの要求はよく退けられる。

    感覚系が想像からの要求を却下したときは気づく。
    ➡感情系が却下しても気づかない。

    視覚経験の場合)
    外界からの情報の流れによって起きる視覚経験。
    =「視覚」
    記憶からの情報の流れによって起きる視覚経験。
    =「心のイメージ、心像」

    資格経験の特徴)
    現実と想像のどちらから生じた経験かをほぼ間違いなく区別できること。

    感情経験の場合)
    外界からの情報の流れによって起きる感情経験。
    =「感情」
    記憶からの情報の流れによって起きる感情経験。
    =「予感応」
    ➡2つがごちゃまぜになるのは、当たり前に起きている。

    ※想像はそう簡単に現在という境界を超越できない。

    未来を想像している瞬間の感情。
    ➡未来にたどりついたとき抱く感情だと思い込む。
    ➡現在起こっていることへの感情反応である場合が少なくない。

    知覚と想像が同じ基盤を時間差で使っている。
    ➡現在主義につながる原因の1つ。

    人間の脳は刺激の絶対量はそれほど敏感ではない。
    ➡違いや変化=刺激の相対量におそろしく敏感。
    例)
    ある晩は大音量でテレビをつけたまま眠り込んでしまった。
    ➡ある晩は小さな足音1つで目が覚めてしまった。

    絶対量より相対量に敏感に反応する。
    ➡重さ、明るさ、音量など、物理的な特性。
    +有用さや価値感など、主観的な特性にも同じ事が言える。

    事実が未来を想像する能力とどう関係するのか?
    ①価格は、ある物事とべつの物事との比較によって決まる。
    ②どんな場合も、複数の観点で比較ができる。
    ③ある観点で比較したときと、べつの観点で比較したときで、物事の価値が違う場合がある。

    未来をどう感じるかを予測する。
    ✘ 現在たまたまやっている比較。
    ◯ 未来でするだろう比較について考える。

    ※異なる時には異なる比較をする。

    <第5部 意味のトリック>
    ~合理化に気をつけろ
    「合理化」
    物事を納得いくようにしたり、そう見えるようにしたりする行為。

    ※人間は刺激そのものではなく、刺激の意味に反応する。

    ”ありうる”経験が”ほんとうの”経験になったとたん。
    =自分にとって経験のよい面が重要な関心事になったとたん。
    ➡脳は、その経験を歓迎しやすくなる見方を探し出す。

    例)
    ・消費者は買ったあとのほうが商品を気に入る。
    ・仕事を探している人は採用されたあとのほうがその仕事を気に入る。
    ・高校生は合格してからのほうがその大学を気に入る。
    など。
    ➡自分の商品、自分の会社、自分の大学になったとたん、とびきりけっこうになる。

    何かがいったん自分のものになる。
    ➡それを肯定的に見る方法を見つける。

    現実と幻想の微妙なバランスを保つ。
    ➡経験の明るい見方を探す。

    経験の明るい面を採用する。
    ➡その見方が信頼できると思ったときだけ。

    科学者の言うことを信じる。
    ➡事実を集め、分析して結論にいたったと知っているから。

    科学者が信頼にたる。
    ➡観察結果から結論を導き出すから。

    希望や願望や空想にもとづいていない。
    ➡信頼できると感じる。

    人が何かを信じる場合。
    目で見た事実に裏づけされているか?
    ➡事実と明らかに矛盾しないものか?
    =信頼できる見方しか受け入れられない。

    人は事実を料理する。
    事実を集め、解釈し、分析する手法は多種多様。
    ➡異なる手法を使うと異なる結論が出る場合もある。

    正しい科学者の場合)
    厄介な問題への対処として、もっとも適切だと考える手法を使う。
    ➡得られた結論はどんなものであっても受け入れる。

    狡い科学者の場合)
    厄介な問題に乗じて、自分の好む結論が得られそうな手法を選ぶ。
    ➡裏づけになりそうな事実から好ましい結論を導き出す。

    ※人は記憶からも都合のいい事実ばかりを選ぶ。

    脳は目が見たものを信じる。
    ➡目は脳が望むものを探す。

    情報を選り好みする。
    ➡情報提供者を選り好みする。

    説明は、経験から感情の衝撃を奪ってしまう。
    経験をさもありがちなことに見せる。
    ➡それ以上考えるのやめさせる。

    説明には感情の衝撃を奪う効果がある。
    ➡説明しているかのように見えるだけで十分。


    新しい情報のない内容のない文。
    ➡相手は出来事に説明がついたように感じる。

    ※不確実さは幸せを保存して長引かせることができる。

    不確実さよりも確実さを選ぶ。
    謎より明快さを選ぶ。
    ➡どちらも幸せを減少させる。

    中途半端な知識で満足しておくことができない。
    ➡起こったすべてのことに説明をつけたいという願望。
    =楽しみが損なわれてしまう。

    <第6部 正しい予想をする方法>
    「矯正可能性」
    直したり、矯正したり、改善したりすることが可能であること。

    練習と指導はほとんどすべての知識を学ぶ1番の手段。

    知識の種類)
    ・自分で得る知識
    ➡直接経験する。
    ・人から得る知識
    ➡直接経験した人の話を聞く。

    心に浮かびやすい物事。
    ≠よく触れている物事。
    例)
    Q)
    Kで始まる4文字熟語とKが3番目にくる四文字熟語ではどちらが多いか?
    A)
    3番目にくる四文字熟語の方が多い。
    ➡思い浮かびやすいのはKではじまるほう。

    最初にくるものや中間にくるものより、最後にくるもののほうがはるかによく思い出せるという強い傾向がある。

    全体を振り返ったときの印象。
    ➡最後にくるものに強く影響される。

    快楽や苦痛の経験を振り返ったときの印象。
    ➡最後にくるものに強く影響される。

    「限界効用逓減(ていげん)」
    空腹、寒さ、病気、疲労、恐怖の状態にあるのはつらいが、その苦しみから抜け出しさえすれば、それ以上のお金は増えるだけで意味のない紙の山でしかない、ということ。

    実情)
    ✘自分が使い切れるだけのお金を稼いだら、後は仕事をやめて楽しむだけ。
    ◯長時間真面目に働いて、これ以上お金が増えても喜びを絞り出せないという限界以上に稼ごうとする。

    現代経済学の父、アダム・スミスの見解)
    「食べ物への欲求は、人間の胃袋の容積が小さいせいで、どの人でもかぎられている。しかし、住宅、衣服、馬車、家具などの便利な品や装飾品への欲求は、なんの限界も、はっきりした境界もないようだ」

    食べ物もお金も、いったん十分になるとそれ以上の喜びを与えてくれなくなる。
    ➡腹に詰めこむのはやめる。
    ➡ポケットには際限なく詰めこみ続ける。

    だれも金持ちになりたがらない。
    ➡重大な経済問題を抱えることになる。

    経済を繁栄させる。
    ➡人びとが互いに商品やサービスを調達して消費し続ける必要がある。

    ※市場経済のためには、人びとが飽くことのない物欲を持っていなければならない。

    だれもが自分の持っているもので満足してしまう。
    ➡経済はゆっくりと停止する。

    ◯ 重大な経済問題。
    ✘ 重大な個人の問題。
    ➡ほとんどの人は、目覚めたときから自分の望みをかなえるぞと心に決めている。

    活気あふれる経済の根本的な要求。
    ≠幸せな個人の根本的な要求。

    富の生産が自分を幸せにすると信じ込ませる。
    ➡経済の反映と成長が望める。

    人が偽の思想を抱く。
    ➡経済を支えるのに十分な生産、調達、消費を行う。

    富の生産は必ずしも個人を幸せにするとはかぎらないが、経済の必要を満たしている。
    ➡経済は安定した社会の必要を満たし、その安定した社会は幸せと富についての欺瞞的な思想を広めるネットワークとして働く。

    個人が努力する。
    ➡経済は繁栄する。

    個人は自己の幸せのためにしか努力しない。
    ➡生産と消費が個人の幸福への道だと誤って信じ込むことが不可欠。

    唯一の解決法)
    自分自身の未来の感情を予測する1つの方法。
    自分が予測している出来事を今まさに経験している人探す。
    ➡どんな気持ちか尋ねる。

    ✘ 自分の過去の経験を思い出して未来の経験をシミュレーションする。
    ◯ ほかの人に心の状態を中から眺めてもらう。

    思い出したり想像したりするのを完全にあきらめる。
    ➡ほかの人を未来の自分の代理人にしてみる。

    想像には3つの欠点がある。
    ①脳は穴うめや放置をしがちだということ。
    ②現在を未来に投影しがちなこと。
    ③物事がいったん起こると、思っていたのと違って見えるようになるのに、前もってそれに気づかないこと。

    人は自分を特別な人間だと考える。
    3つの理由)
    ①自身が特別でないとしても、自分を知っている方法が特別だということ。
    ➡「わたし」は世界でただひとり、私が内側から知っている人間。

    自分の思考や感情を経験する。
    ➡他人については、思考や感情を経験しているだろうと推論するしかない。

    自分自身を知る方法と他者を知る方法が違う。
    ➡集まる情報の種類と量も大きな違いがでる。

    自分が自分を知る。
    =つねに頭をよぎる考えや感情の流れをモニターしている。

    他人についてはその言動をモニターするしかない。
    ➡その人がそばにいるときにかぎられる。

    自分を特別だと思う。
    ➡特別な方法で自分自身のことを知っているから。

    ②自分を特別だと考えることの楽しさ。
    人は大抵、仲間に溶け込みたいと思っている。
    ➡溶け込みすぎることは望まない。
    =だれもが自己の独自性を重んじる。

    研究結果)
    自分が他人に似すぎていると感じると不機嫌になる。
    ➡さまざまな方法で距離を置いたり自分を目立たせようとする。

    ③人はあらゆる人の独自性を過大に見積もる傾向を持っている。
    ➡個人による違いが実際より大きいと考えがち、ということ。

    さまざまな状況で人がいかに幸せかを観察するのは意味がある。
    人は自分を独自の存在、ほかの人とは違う精神の持ち主と考えている。
    ➡ほかの人の経験が教えてくれるはずの教訓を却下してしまう。

    <おわりに>
    ほとんどの人は、生涯で少なくとも3つ、重要な決断をする。
    ・どこに住むか
    ➡町や地域を選ぶ。
    ・何をするか
    ➡仕事や趣味を選ぶ。
    ・誰とするか
    ➡連れあいや友人を選ぶ。

    未来の自分と未来の状況をシミュレーションする能力は、完璧からは程遠い。
    =先見はもろい能力。

    幸せを見つける簡単な公式はない。

    脳はちょっと先にあるように見える幸せに、必ずしも導いてはくれない。
    ➡少なくともなぜたどり着けないのかを教えてくれる。

  • ①不足している情報の影響力を無視してしまう
    ②現在の状態に大きな影響を受ける
    ③立場が変われば見方が変わることに気づかない

    という3つの生来的バイアスの存在を根拠に、未来における経験の予測は困難であるという主張を為す本。

    このバイアスを乗り越えるためには他者の現在経験を参照することが有用であることも述べられるが、その有用な手法もまた自分のことを特別だと思うバイアスによって適用が困難であることが提示される。

    行動経済学系の書籍を1冊でも読んだことがあるならば馴染みのある研究達を論拠としているが、論の方向性が時間軸上の幸福の変遷というテーマに統一されており初めての場合にもたいへん読みやすいだろう。

    「研究によれば~」という表現が頻出するが、引用元の表記や詳細な研究モデルの提示はない。(この一般向け書籍にそういった情報を付与することは普及作としての価値を損ねてしまうだろう。)

    幸せとは何かについて考える上で、なるべく早期にこの本から影響を受ける時間を設けることは割のいい投資であろう。

  • 量も多く、文章も読みやすいわけでもないので、決して面白いわけでもない(funという意味で)が、人間の行動パターンにおける重要な部分について学ぶことができ、非常に示唆に富んでいる。

    人間が未来の幸せのために予想したり行動するときに陥りがちな過ちを脳の機能などから解説。これぞ行動経済学という感じの内容。
    引用している実験の文献の詳細な記載がないため、「らしい」の域は出ないが、主張は腑に落ちる。
    知っていると知らないでは、未来への考え方に大きな差が出そう。

  • 原書名 Stumbling on happiness。原書のタイトルに惹かれて読んだ。

    未来を予見するとき、どうしても現在の状況に引っ張られてしまい、現在と大きく違った未来を想像できないであるとか、幸せから得られる効用は徐々に減ってしまうので時間(間を置く)か変化(内容を変化させる)のいずれかによって慣れを避けるのが大事とか。

    当たらないのに未来を予見したがるのはコントロールすることが心地いいからで、コントロールによって手に入る未来自体が心地いいからではないとか。


    前半は特に面白いと思える箇所が多くて好きだった。
    後半は若干失速気味に感じたというか読んでいて飽きを感じたけど、幸せについて考えるにはいい書籍だと思う。

    幸せかどうかは、次の方法で測ることである程度判断できる、というのも押さえておけると良さそう。
    ・何らか決めた方法で不完全でもいいから定点的に測る
    ・時間が経過してからではなくその場その場ですぐに測る
    ・何度も何度も測る

  • 誤った未来を選んでしまう脳の仕組みや、どのようにしたら正しい選択ができるのかについての本

    行動経済学の本を読んだことがあったので、知っている話もちらほらあった

    他人の経験を元に選択する、という解決策を選べない理由で、良くも悪くも自分は独特であり他人とは違うと考えている、というのはなるほどな、と思った

    例え話や著者のジョークが多く読みやすかった

  • 何故、人間は未来の幸せを読み間違えるのか、そしてどうすれば読み間違いを減らせるのか?という本。
    本書で紹介しているのは、代理体験(経験者の感想を聞く)だ。ただし、経験人間の記憶は正確でないため経験してから間が空いている人は正しい感想を伝えることができないので、今現在それを経験している人に感想を聞く必要があるそうだ。
    人は聞きたいことしか聞かないので、他人の感想も聞きたいようにしか聞かないんだと思うんだけど、それでも自分で未来を想像するよりはマシだそうだ。
    他人の感想と私の感想は異なるのじゃないか?と思ったけどそれも、思い込みらしいw

    独特な言い回しで言いたいことがぼやけているように思えたのが少し残念。

  • 幸福について心理学、脳科学など他面的に解説してくれる本。幸せになるための本ではなく、あくまで科学している本です。

  • 行動経済学の本。「明日の幸せ」と書いているが、幸せになるための方法が書いてある本ではない。人がどのようにして記憶を作り出し、歪んだ未来を想像するかについて書かれた本である。成功するための方法ではなく、失敗する理由を知りたい人向けだ。

    行動経済学関連の本をいくつか読んでいると、書いてある内容はそれほど目新しいものではない。一つ学びとなったのは、未来を自分の想像で予測するよりも、実際に体験したばかりの人に話を聞いた方が正確ということ。人は自分が想定していないことを考慮することはできないし、今の感覚で考えてしまうので。

    この本の問題点として、脚注が皆無なところが挙げられる。根拠として様々な研究が紹介されるが、「ある研究によると〜」で済まされ、原典を探すことができない。最低限、研究者名と年は記載すべきだ。これで星1つマイナス。

  • 行動経済学のようなテーマだが、人間の脳の不合理性とでも言うようなところを最新の社会科学の実験結果を踏まえて解説している。

    人間の脳とは何と都合よくできているのだろうか。
    嫌なことは忘れるようにできているし、大きな得よりも小さな損失を気にする。
    過去にあったことは気にするが、なかったことは気にしない(しなかった。ということに対してはかなり無自覚ということ)

    残念なことに、これは人間の脳が本来備えている特性と言ってもよく、気にしても変えられることではないようだ。
    が、知っているのと知らないのとでは少しだけ行動に気をつけるようになる(と思われる)。

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