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感想・レビュー・書評
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2011年3月、日本の主要電機メーカーのひとつだった三洋電機が消えた。本体はパナソニックに買収されたが、多くの事業が切り売りされた。新しい雇い主の元に残った人もいれば、出て行った人もいる。
本書は、かつて10万人いたと言われる元三洋電機社員たちのその後を追うと共に、会社がなくなるとはどういうことなのかを示している。
物語は会社の歴史から始まり、破綻に至るまでの経緯と経営者たちの思惑、買収側の銀行や証券会社の狙いなどを解説したあと、社員たちの姿を描く。自分に重ねるとしたらもちろん社員たちだ。
書かれているのは取材に応じてくれた人なので、必然的に新天地で頑張っている人の前向きな姿が中心になるが、当然、そうはなれなかった人も大勢いるだろう。それを想像すると気分は重くなる。
今すぐ私の勤め先が消えるとは思わないが、自分が定年を迎えるまであと十数年、確実に大丈夫という保証はない。三洋電機だって、なくなる10年前にそれを予想していた人はいないだろう。実に、一寸先は闇だ。
買収する側は「辞めさせてはいけない人材リスト」を作るというが、そのリストに挙げられるような人材になれるかどうかがポイントだろう。
会社がなくなっても人は生きていかなくてはならない。終身雇用が崩壊したといわれて久しいが、たとえ会社が終身雇用を目指しても、会社そのものが永劫の存在ではないのだ。ある日突然放り出されたらどうするか考え、覚悟しておくべきだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがきを見ると2014年の本。なのに、その後さらに電機業界は激変して、この本に書いてあることも凄く昔のことのような気がする。
この本を読んで感じるのは、三洋電機も突然業績が悪化したわけではなく、社内的にはかなり業績が悪いことを分かりながらも、誰も手を打とうとしなかったんだな、ということ。確かに創業者社長ということはあるのかもしれないけど、誰も自分の事とは考えない雰囲気が感じ取れる。
これは、JALでもシャープでも東芝でも、全てに共通するのだろう。
確かに主体的に動かない社員も悪いんだろうけど、日本の大企業という仕組みそのものに限界があると思わざる得ない。
ただ、この本を読んで凄いなと思ったのは、三洋電機を辞めた元社員の逞しさ。せっかく大企業に入ったって、東芝のようにダメな経営者のせいで突然生きる術を失うこともあるのだから、特にこれからの若者には、会社の言いなりではない、1人でも生きていける道を開拓して欲しい。 -
2014年に読んだ本の中でも最高の一冊。
自分にとっては畑違いの業界だけど、三洋という一社の辿った運命を通して家電産業のここ十年について知れて有意義だった。
一口に三洋と言っても白物家電・携帯・車載電池など色々な業種があり、そこで働いていた人達にはそれぞれの哲学と喜怒哀楽があったんだな。 -
三洋経営陣の混迷ぶりと、吸収したパナソニックのえげつなさ… 辟易する前半から、同業・異業で逞しくイズムを継承し再挑戦する元三洋マンの姿に読み応えを感じた後半。 がしかし会社が無くなるって、やはり想像以上のこと。 また、ベビー用品 西松屋社長の、PB商品開発要員に、三洋の家電開発者を登用した、その人材活用術にも驚嘆。