満つる月の如し 仏師・定朝 (徳間文庫) [Kindle]

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  • はじめて読んだ作品、『若冲』が興味深い内容だった、澤田瞳子。

    『若冲』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B06Y5JCBTT

    他にも芸術家を題材にした作品を発表していないかと探したところ、この小説が電子書籍化されていたので、読んでみることにしました。

    舞台は今から約千年前、1000年代前半の京都です。
    藤原道長が天皇家との結びつきを強め権力を掌握した、京の都。
    その道長が建立した法成寺阿弥陀堂のシーンから、物語がはじまります。

    阿弥陀堂におさめる仏像群を製作したのは、大仏師康尚が率いる仏師集団、七条仏所。
    康尚の息子として生まれた定朝が、この作品の主人公です。

    十代半ばで登場する冒頭から、類まれな作仏の能力を発揮する、定朝。
    しかしなぜか、仏像を掘ることに集中できません。
    そして父である師匠とも衝突して・・・という始まり。

    全体としては、この時代の都・宮城で起こった出来事が物語の主軸となっています。
    そして宮城の権力者たちに力量を見込まれた定朝が、その波に翻弄される姿が描かれていきます。

    藤原道長による朝廷権力の“ひとりじめ”により、排斥された勢力の不満。
    末法思想の広まりと悪化する都の治安の中で、人々の平安を願う気持ちと仏にすがる思いの高まり。
    そのような時代と社会の中で、人の思いを受け止める、美しい仏像を掘り出す能力を持つ仏師定朝。

    高い能力を持つからこそ逆に、「自分はそんな思いに対峙する資格があるのか」と悩みながら、作仏に取り組んでいく。
    その姿を読み進めながら、仏とはどのような存在なのか、仏により人は救われるのか、貴賎によってその違いはあるのか等々、さまざまなことを考えさせてもらいました。

    定朝と言えば、平等院のご本尊、阿弥陀如来坐像の作者。
    数カ月前に現地で拝観した自分としては、このタイミングで読むことができて良かったなと感じました。
    他にも気になる作品があるので、ひとつずつ味わいながら読み進めていきたいと思います。

  • 隆範は師の天台座主・院源から内供奉に推挙されたのは24歳であった。学識に秀でているが人前に出たがらない内向的な性格を、内供奉に推挙することで荒治療することも目指していよう。藤原道長の阿弥陀堂で仏師の康尚が慌てている。運んできた阿弥陀像のうち一体の顔を損ねてしまったという。額の白毫が欠け、額にも少々傷がついてしまったという。その阿弥陀像の顔を鑿をもって直したのが康尚の息子定朝であった。その時が隆範が定朝を知った最初であった。これから二人の長い関係が始まる…。

  • 仏師定朝と内供奉隆範(りゅうはん)、
    三条天皇の第一皇子でありながら皇太子の身位を辞退せざるえなかった敦明親王と、
    父の不敬事件により没落した中関白家で育った藤原道雅。
    万寿元年(1024年)12月、
    花山法皇の皇女である上東門院女房が夜中の路上で殺され、
    翌朝に死体が野犬に食われた姿で発見されたという実際に起きた事件をもとに描かれている。
    流麗な文体が、やや鼻につく感はあるけど。。

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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

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