大モンゴルの世界 陸と海の巨大帝国 (角川ソフィア文庫) [Kindle]

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  • 源義経が頼朝に追われて海をわたりテムジンとなった。モンゴルに憧憬を抱くようになったのは幼い日、そんな説話を知ったからだろうか。

    本書に通底しているのは古い学説や根拠に乏しい風説に対抗しようという強い意志で、ヨーロッパ中心主義というものに疑問が呈され始めたことを受け、大航海時代には先駆けとなる世界国家の存在を抜きには語れないという。

    世界帝国とは即ちモンゴル帝国、大元ウルスの勃興前夜から始まり、消滅までを描いている。
    南宋攻略の一環に過ぎなかったという元寇の事情、ほとんど瞬時に覇を成すことができた遊牧社会の特徴、それを支えた能力主義による登用、多民族、多宗教への受容性を語る。
    タタールの平和がもたらした東西の交流が世界に与えた刺激は、世界史において無視できるものではない。西欧中心主義はそれを無視してきた。

    本書は1992年刊行、学問は漸次更新されるもので、30年前の書籍ともなれば現在では古くなってしまった知見もあろう。それを更新できる機会が楽しみである。

  • 本書を読もうとしたのはとあるゲームが発端。
    ゴーストオブツシマというオープンワールドゲームで、
    元寇があった日本が舞台である。
    その時に日本に来襲した軍団がフビライ・ハーンの軍団だった。
    元軍というと野蛮な蛮族という印象が日本では根強い。
    日本の土地、對馬に渡って来た時に殺戮の限りを尽くしたと言われている。
    教科書ではそう書かれていた。
    だが動画のコメントでは、そうではない、とあった。
    それが気になった本書を手に取ってみた。
    読んでみて大正解であった。大変面白かった。
    蛮族というのは失礼かと思うくらいの完成度の高い民族であった。
    戦争する際も基本的には戦わずして勝つを基本にしている。
    戦術、戦略、謀略を駆使して最小限のちからで、攻略する。
    征服した地を治めるのもよくある圧政や暴政ではなく、
    税金さえ納めればあとは放置みたいな変わった形態。
    世界帝国になってからはモングル軍団を基礎とする軍事力と
    イスラム商人を中心とする行商経済力。
    これら2つの柱で大国家を運営していく。
    特に興味深かったのはかなりの重商主義だったことだ。
    騎馬軍団を基礎とするモングル国家がイスラム商人と仲良く重商社会を築く。
    軍事力を背景にユーラシア大陸、左は東欧に右は日本、中東方面も。
    ほぼ世界を席巻した世界貿易網を駆使してお金儲け。
    そして中心にいるのはモンゴル人とイスラム人だけでなく、
    キリスト教系、漢人系もいた模様。
    まさに多人種国家と言っていい構成。
    他の諸国には恐ろしい恐怖政治を敷いた軍事国家と言われているようだが、
    モンゴル帝国が無くなったあとの世界のほうが衰退して見える。
    まだまだ分かっていない歴史がたくさんあるようで。
    それらが判明した時には、是非とも書籍化して欲しい。

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著者プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授
1952年 静岡県生まれ。
1979年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、
    京都大学人文科学研究所助手。
1992年 京都女子大学専任講師を経て同助教授。
1996年 京都大学文学部助教授・同教授を経て現職。
主な著訳書
『大モンゴルの世界――陸と海の巨大帝国』(角川書店、1992年)
『クビライの挑戦――モンゴル海上帝国への道』(朝日新聞社、1995年)
『モンゴル帝国の興亡』上・下(講談社、1996年)
『遊牧民から見た世界史――民族も国境もこえて』(日本経済新聞社、1997年、日経ビジネス人文庫、2003年)など。

「2004年 『モンゴル帝国と大元ウルス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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